『マニジュ』(2017年)から1年も満たずに発表のアルバムは、『月と専制君主』(2011年)につづくセルフカヴァー集。おなじみのホーボー・キング・バンドとさまざまなスタイルに取り組んだ共演盤で、タイトル曲や「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」をはじめとする懐かしい作品群が生まれ変わる。
タイトルは“厄除けのまじないの珠”を意味するという。ザ・コヨーテバンド名義による2年ぶり4作目のスタジオ・アルバム。フォークやソウル・ミュージックの要素も取り入れながら、語り掛けるようなヴォーカルをたっぷりと届ける。鋭い感性がほとばしる歌詞をじっくり読みながら聴きたい。
圧倒的なスケールを感じさせる佐野元春の2枚組のライヴ盤。2016年3月22日に開催された東京国際フォーラム35周年アニバーサリー公演から厳選された楽曲は、「私の太陽」「サムディ」といった人気曲が収録されたオール・タイム・ヒッツといった内容。アレンジも豊かで現在進行形の佐野の姿勢がよくわかる。
99年にリリースされた通算12作目となる本作は、ゲストに降谷建志が参加するなど同時代の先鋭的なサウンドを果敢に取り入れた野心作だ。ヒップホップに挑んだ曲では、奇しくも詩人としての姿をあらためて認識。一方、彼ならではの疾走感あふれる美メロ曲も健在だ。隠れた好盤との評価もうなずける。
ハートランド解散後、佐野元春が米音楽界の大物プロデューサーであるジョン・サイモンやザ・バンドのガース・ハドソン、ジョン・セバスチャンらとウッドストックで録音した97年の8枚目。70年代米ロックへのオマージュ的な匂いもあるアレンジも印象的で、ホーボー・キング・バンドのデビュー作でもある重要作。
96年に発表された10作目のBSCD2仕様によるリイシュー版。各曲とも2〜3分のポップ・ソングで構成、その収録数は17曲におよぶ。インターナショナル・ホーボー・キング・バンドをバックに起用したこととあいまって、多様性に富んだリフレッシュ感が爽快な好盤。
93年にリリースされた通算9作目。長年一緒に活動してきたTHE HEARTLANDとの最後のスタジオ・レコーディング作品となった。自らの心情をストレートに吐露するような作品が多く、重厚なバンド・サウンドも魅力のひとつだろうか。イギリスの渋いベテラン・キーボーディストのジョージー・フェイムが参加。★
佐野元春が92年にリリースした通算8作目を高音質CD化。ハートランドと組んだピークの作品のひとつだ。良く頭で考えられ、練り上げられた詩表現はさすがに凄い。タイトル曲はチャック・ベリーで有名なタイトルではあるが、中身はバディ・ホリー的ロックンロールというあたりも洒落ている。★
同じくコリン・フェアリーを共同プロデュースに迎えながら、前作とは一転して自分のバンドであるThe Heartlandと練り上げたバンド・サウンドが中心となった90年発表の7枚目のアルバム。とは言え、サウンドうんぬんではなく結局は彼ならではのヴォーカルや楽曲自体の魅力に酔わされてしまうのはいつも通り。
佐野元春がデビュー35周年の節目に放つアルバム。キャリアを重ねてきた彼ゆえの憂い、決意が随所に滲み、聴こえてくる歌とアンサンブルは柔和で力強い。愛とか自由とか人生とか世相とか……テーマは壮大なのに、わかりやすくて胸にこたえる曲ばかり。キリッとした心を取り戻せる。すばらしい。★
佐野元春のオリジナル4枚目として84年に発表されたアルバムの30周年記念ボックス。ポップ・ソングを単なる流行歌として消化するだけではないという彼の信念は、本作を再訪することで触れられるのかもしれない。別テイクやライヴ、映像、写真集などの多角的な視野から、当時の野心も垣間見れそうだ。
佐野元春が“フジヤマ・ママ”の雪村いづみとコラボしたCD+DVDの話題作。考えてみたら、2014年は雪村いづみ+キャラメルママのコラボから40周年という区切り。佐野元春の頭の中にはそれもあったんだろう。古き良き40's風のスウィングに乗せた二人の歌声はウキウキ、ワクワクしている。★
83年にリリースされた佐野元春の最初のベスト・アルバム『ノー・ダメージ』が最新リマスターに加え、当時の中野サンプラザでのライヴと映像作品『フィルム・ノー・ダメージ』の新たなプロダクツを加えてリイシュー。伊藤銀次在籍時最終期のハートランドの油の乗り切ったライヴは貴重。
80年代初期のJ-POPを代表する傑作が高音質CD化。名曲「サムデイ」をはじめ、アメリカン・ポップスへの憧れを感じさせるナンバーの数々がこれまで以上に細かいディテールまで楽しめて嬉しい限り。また、彼独特の歌唱法だからこそ、洋楽的なメロディに日本語がうまく乗るんだなあとあらためて実感。
30周年記念のセルフ・カヴァー作。80〜90年代の楽曲を、アコースティック主体のどっしりとしたアーシーなサウンドでアレンジしており、ラテン・タッチに生まれ変わった「ヤングブラッズ」など、オリジナル以上に深い味わいを生んでいる。今の彼のスタンスが明確に示された傑作。
走り続けてきた30年を詰め込んだ、佐野自ら選曲したベスト・アルバムながら、“心の叫び”“渇き”などをテーマにしたコンセプト・アルバムのようにも聴こえる。80年代の作品が多く収録されているが、衝撃のデビュー時から現在までサウンドと歌詞の妥協のない攻防が続いている。
佐野元春が89年に発表したアルバムに、デモやアウト・テイクなどを収録したレア・トラック集と、89年8月の横浜ライヴのDVD、96ページのブックレットを加えた限定ボックス。彼の幾度目かのピークを記録した名作であることがあらためて確認できる内容だ。
86年発表のアルバム『カフェ・ボヘミア』にレアな楽曲などを追加したスペシャル盤。名曲「虹を追いかけて」の再録、“東京マンスリー”ライヴやTVK『ライブトマト』の映像を収めたDVDなど、今なお生き続ける佐野の“魂”が堪能できる。
再び動き始めた佐野元春のシングル。ホーボー・キング・バンドではなく、元GREAT3の高桑圭、片寄明人、元プレイグスの深沼元昭、ノーナ・リーヴスの小松シゲルらと奏でるワイルドなロックンロール。才気あふれる若手(?)とのコラボは好感触!
深沼元昭の手によるグルーヴィなサウンド・トラックにのせてゆらりと漂う、佐野元春の気持ちよさそうなヴォーカルが印象的だ。深沼のソングライティングも絶妙で、自身の色を残しながら、佐野の新曲と言っても通用する普遍的なグッド・メロディを聴かせてくれる。
佐野元春のエピック最後のリリースとなってしまったシングル。彼自身が作り続けていくべき音楽が明確になったことが感じられる名曲だ。それでもなお、長年のパートナーシップを解消せざるを得ない音楽表現をとりまく状況は、本当にマズいのではないか。
DISC-1の(9)〜(11)は12インチ・シングルからの初CD化、DISC-2はボーナスDVDとオマケたっぷりの2枚組。20年を経てなおかつ、これだけの迫力と説得力を持っているとは驚きの一言。“日本語のロック”を大きく飛躍させたアルバムであることを再確認。
2004年発売の先行シングルとして登場。旋律上の吟遊詩人、佐野元春らしいブルー・アイド・ソウルなロックンロール・ビートの上で、昂るメッセージを唄い吐き出してゆく。そのビートに浸りながら一時のロマネスクなムードを味わう……まさにこれぞ元春節と呼べる極上ポップ作。
2002年10月のライヴからの、2曲入りシングル。自らのGO4レコーズからのライヴ音源アーカイヴ・シリーズとしての発売であり、一般のレコード・ショップでの販売はされず、彼自身のサイトを通じての通販のみ。DVDとは別ミックスとなっている。
いや、これはいい仕事だ。日本ポップス史上に輝く文句なしの名盤『サムデイ』のデジタル・リマスタリング盤にその関連楽曲を収めたボーナス・ディスクをカップリングしたスペシャル盤。書けば書くほど野暮になる。ポップス好きならだまって聴くべし! ★
2001年9月21と22日、鎌倉芸術館で行なわれた井上鑑グループとのライヴを収録。ジャズというよりワールド・ミュージック的アプローチの演奏をバックに、佐野は“スポークンワーズ活動”と呼ぶ、詩を語り歌うという新たな表現実験を試みている。
グルーヴァーズ、プレイグス、グレイト3、ハル・フロム・アポロ69、nanaco、ヒート・ウェイヴなどによる佐野元春のトリビュート。彼の楽曲を愛とアイデアを持ってそれぞれの視点から解釈して名曲が甦ってます。各人による手書きの歌詞カードもナイス。
豊潤な音楽性に裏打ちされた歌と演奏の説得力の強さ。デビュー20周年記念となったこのベスト盤には、佐野元春の、というよりも、日本のロックの魅力が詰め込まれている。日本のロックの変わり目には必ず佐野がいる、ということを確認できる決定版だ。別ミックス多数。
佐野元春の偉大さのひとつは、いつまでたっても彼の音楽が水気をたっぷり含んだものであり続けているところ。この新曲もみずみずしさを満面にたたえた会心のポップ・ソング。打ち込みの(2)が、結果として佐野の精神性を浮き彫りにしている点も興味深い。
デビュー20周年を迎え、新しい軌道へと向けた冒険と知恵に満ちている。ウッドストックへの巡礼があったり、ロックと関わりの確認を経たからだろう。ヒップホップ感覚を含めたこの人なりの再解釈が新しい光が降り注ぐ場所への見事な着地をもたらした。
(1)はミディアムでポップ。穏やかな曲調だが、歌われていることはポジティヴで、希望を感じさせる。(2)は多少ラップ風の作品。(1)同様ポジティヴだが、表現法はずっと鋭角的。このポップな部分とトンガリが同居するのが、彼の世界だろう。★
手塚治虫生誕70周年に捧げるトリビュート作品。ちょっと異色の作品で、これはラップというよりポエトリー・リーディングに近い。歌詞の中の“君”は、多分鉄腕アトムのことだろう。ジャケットを見ても、それは想像に難くない。とても佐野元春らしい作品。
日本屈指の辣腕メンツを集結させた新バンド“インターナショナル・ホーボー・キング”を率いての本作は全17曲54分、ほとんどが3分台のR&Rナンバーってスピード感からしてリリース当時(96年)の彼の心境を物語ってる気がする。個人的にはプレイグスとの共演(9)が好き。
彼のスローソングを集め、そのうえ(3)(8)(9)はオーケストラ・テイクになっている豪華盤。小川洋子と山本容子それぞれのイメージによる文章とグラフィックもアルバムにひとつの素敵なストーリー性を持たせている。長い間愛せるアルバムがまたひとつ増える。
意味性から気分へと時代が転換した中で、ロックの幻想=意味を主張してきた佐野元春は戸惑っているようだ。さりげなく(9)や(11)のような軽妙さを持った曲で、時代の気分の深さを測ってもいる。戸惑いと抑制とがうまい具合にバランスをとってもいる。
名プロデューサー、ジョン・サイモンと佐野元春&ホーボーキング・バンドのコラボレーションによる力作。ニューヨーク郊外のアーチスト村、ウッドストックで録音された。優れた才能を持つアーチスト達の高い水準での仕事ぶりが堪能できる。直球のロックだ。★
新プロジェクトを率いての再始動第3弾に当たるシングル。街へのこだわり、魂=ソウルへの深い愛情と憧憬。言葉の選択もサウンド構築もあくまでフラット。だけど明確な未来観に裏打ちされた元春節の原点を見るような力強いロックン・ソウルです。
ハートランドとの円満別離から早や第2弾シングル。「いい時を過ごそういい時をみんなで/勇気を出したら伝えられるだろう/いつも君といられるだけでうれしい3」という真実がひたすら軽快に歌われる。シンプルなだけに彼が歌うことに意味がある1曲。
“ハートランド”後の佐野、注目の第1弾作品。アップ・テンポのリズムに、軽快に世相を斬る歌詞を乗せた(1)、野茂CMでおなじみのスロー・ナンバー(2)と、タイプのまったく違う曲を並べている。若手ミュージシャンとのセッションが生んだ新作がこれに続く。
14年間の歴史に幕を下ろした佐野元春とハートランドの記念碑的ライヴ盤。収録曲各曲の解説、メンバーのプロフィール、貴重な写真、チラシからポスター、目を閉じれば聴こえてくるのはダディ柴田のサックスや西本明のキーボード。このハートランド・ヴァージョンが耳に焼き付いて離れない人には涙もののメモリアル盤だ。
彼にとっての幾度目かのエポックとなったアルバムから、タイトルチューンを含む5曲をリミックス収録。とりわけ、よりヘヴィーなビートをバックに「本当の真実ももうないのさ」と唄われる『The Circle』の重さが、彼の意志の力を伝えてくれる。
R&Rのプリミティヴなパワーに満ちあふれ、最高傑作といわれた前作『SWEET16』に続いた本作。全体的にR&Bをベースにした楽曲が目立つが、泥臭くなりすぎず、ポップさや攻撃性を忘れずにいるところが彼らしい。
『ヴィジターズ』(84年)から『スウィート16』(92年)までのアルバムからのベスト・セレクション。(13)と(2)が一緒に並んでしまうあたりに時の流れを感じる。でも彼の作風の顕著な変化に聴き耳を立てるよりも、ただただ楽しみたい感じたいアルバムだ。
ドリーミー/パワフル/常に進行形/熟している/純粋/そして心のR&R…。佐野元春の持ち得るロックンロール・ミュージックの“素敵”が遺憾なく発揮された最高傑作!! (11)はショーン&ヨーコ・オノが、(12)は矢野顕子が参加。素晴らしい歌を君に。
英国パブ・ロック勢の豊穣な演奏のバック・アップを得て、この頃少々硬直ぎみだった“オピニオン・ロックンローラー”が心ゆくまでスイング。これだけノリのよい“ロック”、聞き手の耳に届けるだけでも、当時の日本では一大事業だった。快作。
87年9月15日、横浜スタジアムでのライヴを中心に構成されたライヴ盤。佐野ほど“未完のロッカー”と呼ぶにふさわしい存在もいない。そんなことを改めて感じさせる作品だ。1曲の中に彼の過去と現在、そして未来が見え隠れしているのが興味深い。
ソウル・ミュージックのイディオムが十二分に発揮された一作で、彼のキャリアの中でも最も多くの音楽的情報を詰め込んだアルバムのひとつ。前作『ヴィジターズ』のような緊張感はないが、ヴァラエティーに富んだ構成で楽しませてくれる。
81年2月発表のセカンド・アルバム。「ガラスのジェネレーション」「ナイト・ライフ」などの伊藤銀次とのコンビによる曲で、ロックンローラー佐野ライオン元春の本領が発揮されはじめている。都会に生きる若者の孤独感を歌う佐野は輝いている。
80年4月発表の佐野元春のデビュー・アルバム。やっとロックンロールをやれる時代になったと、ラジオ・ディレクターからミュージシャンにカムバックした佐野元春の、強い意図を持ったアルバム。初期の佐野を代表する「アンジェリーナ」を収録。
ロックン・ローラー佐野元春が1年のニューヨーク生活から生み出したアルバム。歯切れのよい歌詞がビートをきざみ、いかにもニューヨーク録音といえる音とノリ、その間で佐野のヴォーカルがドライブしている。さすが佐野!。