ミニ・レビュー
日本のポップ・フィールドを代表する女性シンガーによる9枚目のアルバム。タイトルも意味深げでさまざまに思いを巡らせるが、力強い歌声と重厚なサウンドがその印象をさらに強める。ダークな空気感を昇華させた作風が自身の存在感をさらに際立たせている。
ガイドコメント
デビュー10周年を迎える2008年の元旦に発表となる、通算9枚目のアルバム。「glitter」「fated」「talkin' 2 myself」などのヒット曲を中心に、時にタイトに、時に伸びやかな歌声を届けてくれる。
収録曲
01Mirror
リズミカルなドラムと鉄琴の音が怪しげに響くクール・ロック。掴みきれない自身の心に戸惑い、いら立ち迷う様子が、焦燥感をかき立てるメロディと激しい歌声に込められている。ノスタルジックなダークネスに彩られた2分間の歌物語。
02 (don't)Leave me alone
重低音を響かせるトランス風のサウンドと鋭く煌く電子音が危ういクール・ロック・チューン。プログラミングを駆使した攻撃的な音と儚さと強さを秘めた歌声が、耳に突き刺さる。彼女が自身を追い詰めていく辛い詞が印象的だ。
03talkin' 2 myself
04decision
05GUILTY
彼女が“自分に対して付けたタイトル”と語るロック・ナンバー。教会の鐘のような音に始まり、ループするピアノ音、霊妙なバスの音が切なく響いてくる。曲がまとうメランコリーには“生きていかなきゃ”という彼女の思いがこもっている。
06fated
07Together When...
静かなピアノの演奏がしっとりと美しい、叙情的なバラード。恋人たちが互いに傷つくことを恐れ、相手の存在を少しずつ遠ざけていく様子を描いている。ストリングスの流麗な音色と甘く透明感のある歌声が、心地よく溶け合っている。
08Marionette-prelude-
低いオルゴールの音色が響くインストゥルメンタル。ねじを巻くギリギリという音や、振り子時計が時を告げる音が随所に差し込まれ、幻想的な不気味さを作り出している。古い城に迷い込んだような、不思議な恐怖感が漂うナンバー。
09Marionette
しなやかなストリングスの音と攻撃的なギターの音で、ジワジワと聴き手を締め付けるミディアム・ロック。“仮面を剥ぎ取るんだ”という激しい詞に、彼女の固い決意が見える。背後に流れる甘いオルゴールの音が美しくも恐ろしい。
10The Judgement Day
元電気グルーヴのメンバー、CMJK作曲のテクノ風ナンバー。浜崎の甘く朗らかなスキャットと徐々にスピード感を増していくテクノ・サウンドが気持ちいい。暗闇から明るい一筋の光りを見つけ、進んでいく様子を表わしているそう。
11glitter
12MY ALL
明るく温かい雰囲気のこのポップ・ソングは、彼女がリスナーやファンに向けて書いたもの。90年代のB'zを思わせるようなギター・リフも、どこか懐かしく胸に響いてくる。自分のことよりも相手の幸せを願う詞に、心が温まる。
13reBiRTH
ヴァイオリンの美麗な音色とプログラミングによって生まれる柔らかな音の流れが、神秘的なインストゥルメンタル。浮遊感に満ちた演奏が、心地良い音の風景を作っている。希望や勇気を音に変えたメロディに、明るく綺麗なムードが漂う。
14untitled〜for her〜
荘厳なストリングスの音で幕を開ける、雄大な音世界を抱くミディアム・バラード。“些細な事で別れを選んだあの日、願いが叶うなら君に会いたい”と綴る詞が、悲しくも不思議と温かい。彼女の心がこもった詞が胸に染み入るよう。