ガイドコメント
欧米各国でヒットを記録した「チャーチ・ヒーゼン」など、ハードコアなダンスホール・レゲエを集めた7thフル・アルバム。シズラやナターシャ、ボイスメール、AKONなど多彩なレゲエ・ミュージシャンが参加した一枚。
収録曲
01キャント・ホールド・ミー
レゲエ・スターでありポップ・スターでもあるシャギーらしい曲。リアーナの出世作「ポン・デ・リプレイ」で顕在化し、ビッグ・トレンドになっている西インド諸島サウンドが駆け抜ける。速いテンポで2ビートを刻むリズムがフロアを熱くするはず。
02ボナファイド・ガール (feat.リック・ロック&トニー・ゴールド)
デスモンド・デッカーのレゲエ・クラシック「007」からいただいているシンプルな裏刻みが心地いい。レゲエをダンスホールに昇華させた立役者の一人でもあるシャギーだが、彼の体内にこんな温かいレゲエ・サウンドが流れていると思うとうれしくなる。
03イントキシケーション
泥臭さを一切廃したキレのいいR&Bのトラックとフラットでやぼったいシャギーのライムが、絶妙のバランスを生み出している。酔った勢いで彼女の親友としてしまったことを悔やみ、“もう二度と飲まない”と何度も宣言する間抜けな内容にも説得力がある?!
04悲しき天使
1968年にポール・マッカートニーがプロデュースしたメリー・ホプキンのデビュー・ヒットのカヴァー・ヴァージョン。意外なところからの引用は驚きとともに楽しみを運んでくれる。歌謡曲っぽいメロディがダンスホール・レゲエにしっくりはまっている。
05モア・ウーマン
多彩なリズム・アクセントが楽しい8ビート・レゲエ。少しパンクっぽくもあるリズムだが、どんな符割りでもレゲエにしてしまうシャギーの底力に感服してしまう。恋に悩んでいる面々にはこの底抜けに明るい“女の子賛歌”をオススメしたい。
06ウーマン・スコーン
女性コーラスがセクシーに絡むダビーなミディアム・レゲエだ。浮遊するシンセ・フレーズなどすっきりしたアレンジにありきたり感が漂っているが、シャギーの淀んだ声が見事にぶち壊してくれる。無骨なシャギーの歌もハイセンス・サウンドと対照的で良い。
07マッド・マッド・ワールド (feat.シズラ&カリ・バッズ)
ピアノの8分音符刻みとキレのいいシンプルなドラミングのブレンドが最高だ。異なる声を持つシズラとカリ・バッズという2名のヴォーカル客演はとてもパワフル。エンディングのハイハットなぞりのシャギーのライムが、ひたすらかっこいい。
08アウト・オブ・コントロール (feat.レイヴォン)
ジャマイカで生まれ、18歳でNYに渡って腕を磨いたシャギーならではのハイセンス・チューン。ニューヨーク・スタイルのトラックにレゲトン・ライムが溶けていく。艶やかなサビのお膳立ては、シャギーの無機質なフロウしか考えられない。
09チャーチ・ヒーゼン
ギリシャ正教の教会から聴こえてきそうな、厳かなメロディが流れるダンスホール・レゲエ。宗教寄りになっても安易にゴスペル・ミュージックにならないところに拍手を送りたい。エニグマが近づこうとしたあの世界を、シャギーが気にならない程度に茶化している。
10ウエアー・ディ・クラウン (feat.ミスチーブ)
フィーチャリングのミスチーブがシャギーを超絶な歌声で挑発する演劇曲。2人の掛け合いを前面に出す企図からか、サウンドはひたすらシンプルなダンスホール・レゲエだ。ミスチーブがシャギーのジャマイカなまりを真似て歌う部分で、ニヤッとしてしまう。
11クライテリア
メジャー・キーとマイナー・キーが行き交うオリエンタル・トラックはとてもキャッチーな出来だ。タイミングよく入る女性コーラスの合いの手が耳をくすぐる。延々とシャギーの理想の女性像が語られる内容も図々しくなく、適度なゆるさが良い。
12ボデイ・ア・シェイク
冒頭から“体を振って”と繰り返されるが、これはモンゴロイドには少し難解なアフリカン・ビートか。遅くてスクウェアなビートにリズム・ヒットが多彩に絡んでくる、どっしりとしたサウンド。上手に踊れる日本人がいたら、是非お目にかかりたい。
13ホワッツ・ラブ (feat.エイコン)
ベース・サウンドがうねりながらシンプルなリズムに絡んでいくヒップホップ・サウンド。フィーチャリングのエイコンがいつものツボをおさえた絡みで曲を盛り上げている。長くなりがちなお別れソングだが、3分でさらっと終わるところが洒脱だ。
14ホラ・アット・ユー
さまざまな楽器が重ねられている派手なヒップホップ・サウンドだが、派手な4つ打ちリズムにダンスホール魂も垣間見える。シャギーのラップが存分に聴ける本曲は、速いフロウだってできるぜ! と言わんばかりの気合の入ったパフォーマンスが心地いい。
15オール・アバウト・ラブ
ピアノの裏刻みが胸を打つ正統派レゲエ。明らかにボブ・マーリィの影が見えるパフォーマンスに、シャギーのファンならずとも手を挙げて踊ってしまうだろう。無機質なシャギーが珍しく情感たっぷりに歌っているところにも、さらなるレゲエ愛を感じる。
16ロング・ムーブ
貧困や暴力などをテーマにしたメッセージ・ソング。アンニュイなリズムにのって、“ロング・ムーヴ!(=そうじゃないだろ!)”と繰り返しながら若者を啓蒙する内容に、音楽の多彩さだけでなく、シャギーのリリックの多彩さにも感服してしまう。
17レゲエ・ヴァイブズ
レゲエを賛美する内容だけあって、古き良きシンプルなレゲエが流れている。レゲエに陽が当たっていなかった80年代にがんばっていたアスワドやUB40を思い出すサウンドだ。ゆるいことは奥深い、と思い知らされる曲。