ガイドコメント
CMソングに使用されリバイバル・ヒットした「うわさの男」、マライア・キャリーなど多くのアーティストに歌い継がれる名曲「ウィズアウト・ユー」などで知られる、ニルソンのベスト・コレクション。
収録曲
011941
ニルソンがまだ銀行に勤めていた頃に書いた最初期の1曲。自伝的な要素もある物語風の歌詞が楽しめるユーモラスなポップ・ソング。ホーン・セクションをフィーチャーしたサウンドをバックに、十八番のヨーデルなども披露しながら陽気に歌っている。
02CUDDLY TOY
1967年の秋、ニルソンのデビュー直前にモンキーズがカヴァーし、作者を一躍有名にした曲。ビートルズを思わせるボードヴィル調のバラードで、ホーン・セクションを効果的にフィーチャー。オーラル・トランペットも披露するニルソンのヴォーカルが素晴らしい。
03WITHOUT HER
ニルソンがまだ銀行に勤めていた頃に書いた最初期の1曲。失恋を歌った美しいバラードだが、ベースのみをバックに歌い始め、チェロとフルートが順番に入ってくる編曲が面白い。グレン・キャンベル、ハーブ・アルパート、BS&Tなど、カヴァーも多い名曲。
04ONE
電話の待機音にヒントを得たピアノをバックに歌われるバラード。ストリングス、フルート、ハープシコードなども好サポート。1968年のシングル発表当初は不発だったが、翌年にはスリー・ドッグ・ナイトによるカヴァーがヒットし、ニルソンも脚光を浴びた。
05EVERYBODY'S TALKIN'
流れるようなアコースティック・サウンド、ロマンティックな佇まいのこの曲は、映画『真夜中のカウボーイ』テーマ曲。スローでありながら情熱的な“うわさの男”ニルソンの大ヒット・ナンバー。
06OPEN YOUR WINDOW
恋愛中の高揚状態を歌ったラブ・バラード。アコギやストリングスをバックに、スキャットやファルセットを多用した素晴らしいヴォーカルを披露している。「僕らが貯めるお金について考えよう」という一節が、デビュー前には銀行に勤めていたニルソンらしい。
07MOURNIN' GLORY STORY
ビートルズの「フォー・ノー・ワン」に触発されて書いたというポップ・ソング。ストリングスをフィーチャーしたクラシカルなサウンドをバックに、風変わりな歌詞を生真面目に淡々と歌うところがいかにも彼らしい。アル・クーパーによるカヴァーもよく知られている。
08MAYBE
別れ際の恋人に「行かないで欲しい」と語りかけるバラード。ピアノやストリングスをバックに、やたらと“maybe”と“baby”と韻を踏みまくりながらも、最後のヴァースでは“maybe”を使っていないなどの技巧はニルソンならでは。
09I GUESS THE LORD MUST BE IN NEW YORK CITY
映画『真夜中のカーボーイ』のためにニルソンが書いた曲。映画には使われなかったが、「うわさの男」と同じ傾向のカントリー調の曲で、全米34位のヒットを記録。カヴァーも多く、98年の映画『ユー・ガット・メール』では挿入歌としても起用された有名曲。
10I'LL BE HOME
盟友ランディ・ニューマンの名曲のカヴァー。日本風に意訳すれば、単身赴任の夫と自宅を守る妻の歌。作者ニューマンのピアノやゴスペル・クワイアをバックに、ニルソンが想い入れたっぷりの歌声を披露している。作者も上手いが、歌手も上手い。
11ME AND MY ARROW
音楽とナレーションを担当したTVアニメ映画『オブリオの不思議な旅』(1971年)の挿入歌。ビートルズ風のポップ・ソングだが、ニルソンらしいジェントルな仕上がり。デイヴィー・ジョーンズ、ダイアナ・ロス、ヘレン・レディらのカヴァーでも知られる。
12WITHOUT YOU
バッドフィンガーの1970年のヒット曲をカヴァー。キャッチーなメロディの原曲をポール・バックマスターの編曲でドラマティックなバラッドに改良し、1972年に4週連続で全米No.1ヒットを記録。「うわさの男」に続いて、2度目のグラミー最優秀男性ヴォーカル賞を獲得。
13THE MOONBEAM SONG
“月の光”を主題にした風変わりなバラード。アコギやフルートやクラリネット、自身の多重録音コーラスなどをバックに、“月の光”がいかに神出鬼没の存在であるかが歌われている。映画『吸血鬼ドラキュラ二世』(1974年)のサントラでも使われている曲のひとつ。
14COCONUT
多重録音でニルソンの七色の歌声をフィーチャーしたコミカルなノヴェルティ・ソング。シンガー/パフォーマーとしての芸達者ぶりを見せつけ、全米8位のヒットを記録。ディズニー映画『リトル・マーメイド』のカニのセバスチャンのカヴァーで知られる曲。
15JUMP INTO THE FIRE
ニルソンにしては珍しくハード・ロッキンな曲。ヒステリックなまでに狂騒的なサウンドに乗って、フリーキーなシャウトを披露している。全米27位のヒットを記録。のちにニルソンが主演を務めた映画『吸血鬼ドラキュラ二世』(1974年)のサントラにも使われている。
16SPACEMAN
宇宙飛行士の悩みをコミカルに歌ったニルソン流ノヴェルティ・ソング。リンゴ・スターやピーター・フランプトンらが演奏に参加し、ポール・バックマスター編曲による過剰なまでに壮大なオーケストレーションがフィーチャーされている。
17DAYBREAK (FROM SON OF DRACULA)
制作者でもあったリンゴ・スターと共演した主演映画『吸血鬼ドラキュラ二世』(1974年)挿入歌。リンゴやジョージも演奏に参加したカリプソ調の陽気なサウンドをバックに、吸血鬼らしく「陽の光は僕を悲しませる」などと歌っている。
18DON'T FORGET ME
別れた妻に「僕を忘れないで」と訴える自虐的なバラード。ニルソン自身のピアノとオーケストラをバックに、酒焼けした声でエモーショナルに歌い上げている。「失った慰謝料も恋しい」とかいうジョークも哀しく響くのは彼がもうこの世にいないからだろう。
19ALL I THINK ABOUT IS YOU
レナード・コーエンからの影響も感じさせるモノローグのような失恋ソング。少年合唱団の聖歌隊コーラスと流麗なストリングスをバックに、低音ヴォイスを生かしたシブい歌声を聴かせる。米国では不発だったが、全英チャートでは43位の小ヒットを記録。
20REMEMBER
ピアノとストリングスをバックに美しく歌い上げるバラードの名曲。“life is just a memory”の一節が泣かせる。のちに映画『ユー・ガット・メール』(1998年)の挿入歌となり、映画のロマンティックな世界をさらに盛り上げた。