ミニ・レビュー
2年7ヵ月ぶりのアルバムは機微と機智を抱えたポップ曲がそろい、半数近くの曲は映画やTV番組やCFと関連している。東京とLAで録音されていて、LA録音ではリー・スクラーら大御所スタジオ奏者がずらり参加。贅沢なゆとりレコーディング方策が曲を香り立たせる。
ガイドコメント
前作『Road Show』以来約2年7ヵ月ぶりとなる、2013年11月20日リリースの通算37枚目のアルバム。ブリティッシュ・ロックやフレンチ・ポップスをベースにポップで彩られた、“ユーミンワールド”全開の意欲作となっている。
収録曲
01Babies are popstars
2年7ヵ月ぶりとなる37枚目のアルバムの冒頭曲。アルバムのCMソングとしてもオンエアされていた、明るく弾むようなメロディと伸びやかな歌声が心地よいポップ・チューンだ。フルートやハープ、ストリングスなど、オーケストラの演奏が上品で美しい。
02Laughter
ユーミン真骨頂の、切ない別れを綴ったポップ・ソング。マイナー調のストレートなメロディに恋の終わりを告げる歌詞とくれば悲しさや淋しさが募るが、後味は爽快。不思議と手に持ったものを手放したときに似た開放感がある。
03愛と遠い日の未来へ (Album Version)
凛としたピアノの伴奏でスタートするミディアム・ソング。青空や雲、虹など、美しい自然の風景描写と会えなくなってしまった愛しい人との想い出をブレンドした切ない歌詞が沁みる。映画『虹色ほたる〜永遠の夏休み〜』主題歌。
04今だけを きみだけを
優しいメロディとベース・ラインが効いたバンド・サウンドが印象的なロック・ナンバー。現実の厳しさを知っているからこそ“今”を大事にする、というメッセージが込められている。日本テレビ系ドラマ『ダンダリン・労働基準監督官』主題歌。
05雨に願いを
松任谷由実が作詞作曲を手がけた芦田愛菜の3thシングルのセルフ・カヴァー。ハープとフルートを基にした静かで可憐な伴奏にうっとり。シンプルかつ揺ぎないメッセージを訴えるヴォーカルが、伸びやかに切なく響く。
06Your Eyes Are Magic〜終止符をおしえて
哀愁漂うマイナー調のメロディに乗せて綴られる歌詞は、昔好きだった人を偶然みかけてしまった女性の切ない気持ち。ギターやベースを基軸にしたロック・サウンドのなかに入るストリングスが、ドラマティックなサウンドを演出している。
07Hey girl!近くても
捻りの効いたユニークなメロディとアッパーなホーンの音色にワクワクさせられるポップ・チューン。未知の世界に飛び込むことの楽しさを綴った歌詞が楽しく、弾むようなヴォーカルも心地よい。堀北真希出演の東京メトロCMソング。
08Discotheque- DISCOTHネQUE -
“ブギもサンバも”“スカもチークも卒業して”という歌詞どおりにそれらのジャンルをブレンド。プラス、ゴージャスなホーンの音色を加えたダンス・ナンバー。現実のすべてを忘れて踊り明かす大人たちの姿が浮かんでくる。
09Early Springtime
どこか懐かしさを感じさせるオルガンのイントロではじまる春をテーマにしたポップ・ソング。何気ない風景がかけがえのないものであることを教えてくれる、丁寧な歌詞が胸を打つ。NHKドラマ『いつか陽のあたる場所で』主題歌。
10夜明けの雲
4つ打ちのクラップとベース・ラインを効かせつつ全体にストリングスをちりばめた、壮大なメロディのミディアム・ソング。静かで悲し気なヴォーカルが印象的だ。映画『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』主題歌。
11シャンソン
ドラマティックなメロディとストリングスの流麗な響きが絶妙にマッチしたバラード・ナンバー。悲しみや苦しみをも受け入れる、すべてを悟ったような歌詞はすべてを包み込むようだ。伸びやかなヴォーカルが心地よい。
12MODELE- MODネLE -
ゆったりとしたテンポのぼんやりとした輪郭を描く演奏がドリーミーな音世界を築く、美しいポップ・チューン。歌声も楽器ととらえたかのような、前に出過ぎないヴォーカルが心地よい。NHK Eテレ『ユーミンのSUPER WOMAN』テーマ・ソング。