
レギュラー・バンドとともに吹き込んだ2013年作。オルガンや弓弾きベースの響きが切々としたヴォーカルを引き立てるタイトル曲、ジャズ・クラブで聴くような親密な雰囲気がいい「霧深き日」、バンドと弾ける「コットン・フィールド」など持ち味全開。イタリア風味の「ザッツ・アモーレ」も余裕の仕上がりだ。

デビュー15周年を記念してリリースされたベスト盤はこれまでのキャリアを一望するような内容。突然、母親から選曲者に指名されてしまった息子・綾戸イサによる、家族にしか絶対書けないような身近でかつ愛情あふれたライナーノーツが読み応えアリ。

ジャズ・シンガー綾戸智恵と、脳研究者・池谷裕二のコラボによるジャズ入門コンピ。綾戸本人はもちろん、美空ひばりやしばたはつみの歌唱も収め、全体に聴きやすく肩の凝らない内容。11ページにわたる監修者対談はかなり読みごたえがあって、もしやこちらがメインかも、と思わせたり。

通算25枚目、前作から2年ぶりのスタジオ録音盤は、99年の『life』以来、再びアメリカン・ルーツ・ミュージックに根ざした内容。ライヴの定番「アメイジング・グレース」や2ヴァージョン収録したコーエンの「ハレルヤ」に彼女自身のルーツをも感じた。

2010年9月10日、モーション・ブルー・ヨコハマで収録したライヴ作。ブルース感覚あふれるジュニア・マンスのピアノは好相性で、濃い口のヴォーカルが全開する。トリオと一体になり、次第に熱を帯びていく「サニー」、日本語混じりのスキャットで観客を煽る「スイングしなけりゃ意味ないね」など、会場を沸かせる力量はさすが。

本格デビュー前の96年、ニューヨークでレコーディングした自主制作アルバムのデジタル・リマスター盤。粘っこいヴォーカル・スタイルはこの時点で十分に個性的だ。フェイクやシャウトをふんだんに盛り込んだ「テネシー・ワルツ」が圧巻。ホーンのようなスキャットを聴かせる「ソー・ホワット」も迫力がある。「ストーミー・マンデイ」はピアノ弾き語りの新録。

コンサートで共演を重ねてきた両者が初めてスタジオで録音した2010年作。濃い口のヴォーカルにゴージャスかつスタイリッシュなビッグバンド・サウンドが見事に合う「ジャスト・イン・タイム」、管の色彩感が素晴らしい「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」ほか、前田憲男の編曲が光る。マイケル・ジャクソンの「ザ・ウェイ・ユー・メイク・ミー・フィール」、ビー・ジーズの「マサチューセッツ」など、ポップ系の曲も座りがいい。

しっとりと抑えてピアノを弾き語る「ホエン・ザ・ワールド・ターンズ・ブルー」が新機軸を感じさせる2009年録音作。オルガン入りでブルージィな「チェンジ・ザ・ワールド」、切々と歌う「ティアーズ・イン・ヘヴン」とクラプトン絡みが2曲の点にも注目。パーカッションが入るプリミティヴな雰囲気の演奏にスキャットを乗せるスパイダースの「バンバンバン」が面白い。さらりと表現する「グッド・ライフ」も味がある。

とにかく明るくパワフル。泣かせどころはきっちりと押さえつつ、最後はやはりお客さんに元気になって帰ってもらおうという姿勢は、このライヴ盤からもひしひし伝わってくる。圧巻はツアーで好評を博した100人コーラス隊が歌う「翼をください」。

綾戸智恵の音楽は、一度ライヴ・パフォーマンスに触れるとその虜になってしまうらしい。これは98年メジャー・デビュー以降の選りすぐりのライブを集めた全14曲。弾き語り、軽妙なトーク、すこぶる楽しめる作品になっている。お買い得なアルバムだ。

デビュー10周年アルバム・タイトルに自分の年齢を持ってきて、内容は全編弾き語り。で、のっけから「愛の讃歌」なわけでして、その自信と貫禄には恐れ入るばかりだが、そのぶん、ヴォーカルなしのソロ・ピアノを披露している「グリーンスリーヴス」がやけに神妙に響いてくる。

いまや“国民的歌手”にまで成長したアヤドの3年ぶりのベスト。ピアノの弾き語り、ジャズのコンボ演奏、ゴスペルなど、ソウルフルでスピリチュアルな彼女の世界に多角的に迫る。選曲もバラエティに富み、アヤド・ワールドを気軽に楽しみたい人に最適。

ジョン・ビーズリーのプロデュースと編曲によるカラフルな音が濃口のヴォーカルとよく合うデビュー7周年記念作。ファンキーに突き進む(1)、和声が新鮮な(4)、ブルージィな(7)など、ロックのカヴァーが快調。エモーショナルに歌い上げる(5)は原曲から新たな魅力を引き出す。

ハイペースで作品を発表している綾戸だが、内容が少しも薄れていないところが凄い。生粋のジャズ・シンガーでありながらジャズ・シンガーを感じさせないところが幅広い層からの支持に繋がった。その魅力が全開したこのアルバムにもまた圧倒されてしまう。

ジョン・ビーズリーのプロデュースのもと、ホーンやローズの活躍するカラフルな音をバックに歌うポップな感触の2003年作。ずっしりメロウな(2)、ボッサなリズム・アレンジが新鮮な(7)、3連のリズムに乗せて絡みつくようなヴォーカルを聴かせる(8)など、安定感抜群。

ほぼ全編、ピアノ弾き語りでスタンダードを歌い上げた通算11作目。耳馴染みのある曲のすべてが、完全な“綾戸色”に染め上げられていく様に驚く。これまでより発声はやや抑え気味で、ひとつひとつのフレーズを慈しむように弾き、歌っている。やはり見事。

公式デビュー5周年を記念して編集された豪華ブックレット・ケース入りのベスト盤。7枚のフル・アルバムと1枚のミニ・アルバムから13曲を厳選した上、3曲の新NY録音を収録。NY録音にはアミーン&ヘルナンデスの強力コンビが参加。韓国語の歌詞も登場する。

ストーンズの曲から始まり、角川映画『人間の証明』の主題歌やビートルズ曲、ボズ・スキャッグス、ジョニ・ミッチェルらのヒット曲を熱唱。オールディーズをブルース編曲で歌っているのにはびっくり。2枚目のボーナスCDは、2001年12月赤坂ブリッツのライヴ3曲。

人気沸騰の綾戸智絵の新作は、そのタイトルどおり、友人たちと好きなナンバーをリラックスして歌うという内容になっている。スタンダードから、ポリスやジョン・デンバーまで、ジャンルにとらわれず、すべて彼女独自の歌にしてしまう個性はすさまじいというほかない。

サード作。ゴスペル色濃厚なディープな歌声、独特の語り口が個性的で、ビリー・ジョエルの(1)、キャロル・キングの(5)、SMAPの(13)といった曲も自身のカラーに見事塗り替えている。スキャットも抜群、歌手として進境著しいところをみせつける自信作。★

ライヴ・シーンでは以前からズバ抜けた歌の力で知られる存在だった。口コミでその人気はどんどん高まり、今や、いつもお客は超満員。グッと胸にせまるエモーショナルな歌い方。英語の表現力も完璧。日本にもこんなシンガーがいたんだ、と眼からうろこです。

日本人とは思えないほどゴスペル/ジャズが身体の一部となった大型新人シンガーの本格的デビュー作だ。綾戸は米国音楽生活で黒人シンガーの魂を“輸血!?”した。ヴォーカル好きはぜひ一度ライヴにも足を運んでほしい。ケイコ・リーのライバル登場である。★

関西のライヴ・ハウスを中心に活動する綾戸智絵(あやど・ちえ)のデビュー作。キュート派ではなく、シャーリー・ホーンを師とする実力派。教会音楽や黒人霊歌から影響された歌唱は、見事で聴き応え十分。プロデュースはショーロ・クラブの沢田穣治が担当。