
変態的テクニックと無限の音楽志向を時代に即して変化させ、実践し続けてきたゾーンによる、ユダヤ映画のサントラ。普段の彼からは想像できない、管弦楽さながらのたおやかなアンサンブルがことさらに儚く、美しい。その背後に漂う恐怖と崩壊の悲劇も察知できる。

ネイキッド・シティのコピー・バンドである。しかもジョン・ゾーン公認。それだけでも驚きなのに、ジョンをゲストに迎えてネイキッドの未発表曲までも披露しているのだから開いた口が塞がらない。おまけに、これがちょっといい内容なものだから……。

常に演奏可能なストックが200曲はあると豪語するジョン・ゾーン、だとすりゃどこまで続くのか…のマサダ・シリーズ第7弾。5月の渋谷ラ・ママ連続公演では昨年をはるかに上回るテンションの高さで魅せてくれた彼らだが、それも納得の4月録音。圧巻です。

『コブラ』はアヴァロン・ヒル社製のボード・ゲームの名だ。つまりこの作品は音楽そのものがゲームなのだ。おのおののインプロヴィゼーションは、ゲームのセオリーに沿って進行してゆく。音楽を作るのではなく、音楽が作られてゆくハイパー・アレアトリー。

86年から90年にかけて手がけた映画音楽の仕事をまとめた編集アルバム。ロック、ジャズなど緩急自在の音楽性を持ったサウンドが分裂気味にコラージュされてる感じで飽きさせない。彼の音楽に対する多彩さ、どん欲さを味わえる。自筆のライナー付き。

ドイツの4人組のバンドとジョン・ゾーンとの共演作。一言で言うと、“ヨーロッパのアンビシャス・ラバーズ”とでもいいたくなるようなサウンドだ。ジョンも例によって飛んでいるが、この4人もただものではない。トンガリ・ファンにオススメ。

絶対に“やらかす”奴、ジョン・ゾーン。げげ、今回のジャケットはウィージーの撮った「死体とリボルバー」だ。おまけにブックレットの中の絵は丸尾末広ではないか。音のほうは、またまた飛び出す飛び出す。地球上の全音楽がオブジェ化されて連鎖する。

やっと出た!ジョン・ゾーンのオーネット・コールマン集。このサウンドを一言でいうならば“スラッシュ・ジャズ”。17曲の小品が、疾風怒涛のように駆け抜けていく。聴くほうも、パワーがないと絶対に最後まで聴けない、暴力的なサウンドがとても快感。

ジョン・ゾーンやマイク・パットンらの手によるサウンドに、デニス・クーパーとネイランド・ブレイクらが編んだブックレットが合体した作品。英文が理解できなくてもノイズなどの実験音楽とグラフィックとが結びつき、奇っ怪なイメージが頭に浮かぶ。★

もうゴタクは不要の9作目。ふつうここまで続くとどうしたって飽きが出てくるものだけど、相変わらずテンション右肩上がりで緩み弛み一切なし。豪球一振り勝負の(2)なんてジャズ的快感の極致だし、妖しく揺らめく(7)なんかもゾクゾク興奮させられる。凄すぎ。★

オーネットの肖像を高く掲げるM.R.E.の第7弾。今回は何とジョン・ゾーン、ファラオ・サンダースの巨人2名が参戦、ウルマー率いる強靭な“ハーモロディック”トリオとそれぞれ怒涛のインタープレイを展開している。いやもう何回聴いても興奮させられます。★

以前、限定特典盤として制作。入手できなかったファンからの問い合わせが殺到した“マサダ”のミニ・アルバム。ユダヤ的旋律をO.コールマンのハーモロディック理論を用いて演奏。ダイナミックな飛躍、旋律への深いアプローチ。緻密で奔放な演奏が魅力。

鬼才ジョン・ゾーンがNY前衛派の本拠地で行なったエキサイティングな名演集。貧欲なサンプリングから生みだされる音のコラージュは、フリー・ジャズというカテゴリーを大きく超越している。刺激の強すぎるサウンドに、ただただ圧倒されるばかりだ。

ニューヨークの新しい音楽発信基地ニッティング・ファクトリーでのライヴ録音。曲者3人による自由奔放なフリー・インプロヴィゼーションの世界。好きな人には面白いが、嫌いな人には死ぬほど退屈というのがフリー・ジャズ。これもまさにその類の演奏。

好調シリーズも第6集。ジョンの曲作の技も冴えに冴えている。このシリーズは各曲の作りがガッチリしているものばかりだが、プレイのテンションはいつものように非常に高い。デイヴ・ダグラスのトランペットがより伸びやかになってきている。

神出鬼没のアルト奏者ゾーンのマサダ・シリーズ第5集。その瞬間風速の高さは言うに及ばず、J.バロンとのインタープレイはいつもながらの壮絶さで、五臓六腑を隅から隅まで思う存分かき乱してくれる。ユダヤ系アメリカ人ゾーンの民族性追求の旅はまだ続く。

ウォルター・ヒル(あの娯楽作監督とは同名異人か)の映像に寄せて作られたというこのサントラ集、一体どんな絵柄に触発されたのだろう。音から想像するに、ドタバタかつ時にホラー、暗いユーモアも漂う。スプラッタ趣味は裏ジャケだけにしてね。

ジミー・スミスに続くブルーノート・オルガニスト=パットン。不遇の70年代を経たものの、ここで聴くオルガンの現代性はやはり彼の気骨を表わしている。異端児ゾーンの視野の中に、ホンモノを見せつけた力学が充満。彼こそグルーヴ・マスターと呼ぶべき。

英国の即興音楽家(p)とNYのアヴァンな奴ら〜ジョン・ゾーン&マサダの組み合わせから誰が想像する?! が、これは洗練された粋でお洒落なジャズ/ヴォーカル。とはいえ彼らならではのヒネリが突如顔出すのは当然のこと。ダレずにくつろげる憎いヤツ。

「マサダ」3部作の完結編。ジャズの奥深さとジョン・ゾーンの民族意識の力強さを伝える名作。ゾーンの作曲家としての力量もただものではなく、エネルギーは痛いほど。加速と疾走に身がひきしまりつつ、さわやかさをたんまり感じたりもするのだった。

マサダ3部作の2。アルト、トランペット、ベース、ドラムスで、オーソドックスなようで微妙なトゲトゲしさをたんまり放出しまくっている。覚悟を決めた者だけが生み出せる豊かなそれでいて鋭利なサウンド、間合いが空気をやたらと浄化するのだ。

民衆に深く根づいたユダヤ教音楽クレッツマーをジョン・ゾーン流のフリー・インプロヴィゼーションの中に具現させたマサダは、ハシディック・チューンに遡る朗々とした旋律線を織り込み紡がれる魂の歌だ。各曲のタイトルは死海写本からとられている。

ゾーン、デレク、ルイスというフリー・インプロヴィゼーションの鬼才によるトリオ、ヤンキース。OLが聴くと変態呼ばわりされ、子供なら笑ってしまうかもしれない、この実験的な音楽を前に適切なコトバが浮かばない。思惟的なあまりにも思惟的な……。

ブルーノート・ファンにとっては懐かしい名前の登場だ。ファンキー・ジャズのブームによって、ついにパットンの新作が登場した。ソウルフルなオルガン・サウンドが健在なこの作品は、ジャズの楽しさとブルージーな雰囲気を見事に表現したもの。

彼が愛する世界であろうルーセルが書いた奇想小説の題から採られた「ロクス・ソルス」とは、ジョンを核に複数のNY最先端部ミュージシャンでトリオ編成を組むその総称でもある。84年の作で、複雑に絡み合う即興性が凝縮された鮮烈な世界。ノン・ジャンル!

親日フリー系サックス奏者が数多くの逸材を使って構築する一大サウンド絵巻。作家スピレーン、ブルース、映画『狂った果実』が各曲のテーマになっていて、ゾーンは自在に自己のイマジネーションを音に移しかえている。とにかく驚くべき作/編曲家だ。

映画音楽の鬼才エンニオ・モリコーネの作品を、フリー・インプロヴァイズド・ミュージックの若き才人ジョン・ゾーンがユニークなアプローチで料理したアルバム。生楽器を多用したセッションによる極めて独創的なゾーン版モリコーネ・ミュージック。

50年代のブルーノート・サウンドをアクチュアに再生したセッション盤。ジョン・ゾーンを中心にしたトリオ編成だが、各人の多様な熱演が大編成の幻聴を誘う。軽いフットワークによる会話の開放的な楽しさは抜群だし、臨機応変の即興性はまさに痛快無比。