ミニ・レビュー
映画『暗殺者』の主題歌でもあるディランの(2)を含むアコースティック・アルバム。東京録音の5曲やリスボン録音の3曲にライヴ録音を加えた全15曲。比較的地味な名曲群を疑似アンプラグド感覚で蘇生させた変則的な裏ベスト盤。悪いわけがないじゃないの。
収録曲
01STREET FIGHTING MAN
オリジナル・ヴァージョンは『ベガーズ・バンケット』(1968年)に収録。歌詞は、当時ミックがロンドンの反戦デモに参加した経験をもとに書かれたもので、60年代後半の時代特有の雰囲気に満ちている。このライヴ・ヴァージョンでは、アコースティック・ギターをかき鳴らしながらの、余裕たっぷりの演奏を楽しむことができる。
02LIKE A ROLLING STONE
ボブ・ディランが1965年に発表した名曲。タイトルが匂わすように、当時ストーンズのリーダー格だったブライアン・ジョーンズと親交のあったディランが、ブライアンをイメージして書いた曲との噂もある。ここでは比較的ストレートにカヴァーしているのが印象的。
03NOT FADE AWAY
ストーンズのアメリカでのデビュー・アルバムの1曲目がこの曲。オリジナルはバディ・ホリーで、ボ・ディドリー風のジャングル・ビートが先導するリズミカルな曲だが、ここでは、元のヴァージョンにあった泥臭さを残しつつ、よりバディ・ホリーに近い雰囲気で仕上げている。
04SHINE A LIGHT
オリジナル・ヴァージョンは『メイン・ストリートのならず者』(1972年)に収録。70年代中盤以来、ライヴでは久々のことであり、嬉しい再演ヴァージョンといえそう。ピアノとオルガンがサウンドの要となっており、ゴスペルっぽい感じで後半に向かって熱く盛り上がる佳曲だ。
05THE SPIDER AND THE FLY
ストーンズ最大のヒット・シングルとしておなじみの「サティスファクション」(1965年)のB面に収録されたナンバーというシブい選曲だ。ジミー・リードからの影響が色濃いブルース・ナンバー。ちなみにオリジナルの録音には、フィル・スペクターもギターで参加していたとか。
06I'M FREE
1965年のシングル「一人ぼっちの世界」のB面曲のライヴ・ヴァージョン。比較的軽い感じの曲調だが、当時のリズム&ブルースやビートルズからの影響がうかがえる。全体的にリラックスした雰囲気の演奏で、こうしたストーンズもまた、非常に魅力的である。
07WILD HORSES
傑作『スティッキー・フィンガーズ』(1971年)に収録のカントリー・バラード。この曲が、カントリー・ロックのパイオニア、グラム・パーソンズとの交流がきっかけとなって生まれたことは有名。本ヴァージョンはどれを取っても文句のつけようがない仕上がり。
08LET IT BLEED
アルバム『レット・イット・ブリード』の表題曲で、ビートルズの「レット・イット・ビー」へのアンサー・ソングでもあったという。ノリのよい曲調と演奏だが、歌の内容は「血を流してもいいぜ」と過激なもの。後半部分で聴くことができるロニー・ウッドのスライドのソロが素晴らしい。
09DEAD FLOWERS
オリジナルは『スティッキー・フィンガーズ』(1971年)に収録。ドラッグについて歌われたもので、もともとはグラム・パースンズのバンド、フライング・ブリトー・ブラザーズから聞いたエピソードがもとになったようだ。こちらでも、カントリー風情漂う軽快な演奏が楽しめる。
10SLIPPING AWAY
『スティール・ホイールズ』(89年)のラストを飾っていたナンバーで、キース・リチャーズがヴォーカルを取るサザン・ソウル風バラード。オリジナルのスタジオ・ヴァージョン同様、キースの情感込めた歌い方がじんわりと胸に沁みてくるようだ。ファンの間で非常に人気が高い名曲。
11ANGIE
オリジナルは『山羊の頭のスープ』(1973年)に収録。傑作バラードだけに、どんなアレンジで演奏しようと悪くなりようがないのは当然としても、このアンプラグド風ライヴ・ヴァージョンは見事な出来栄え。こんなところからも、ストーンズの偉大さを実感。
12LOVE IS VAIN
不世出のブルース・マン、ロバート・ジョンソンが1937年に吹き込んだ曲を、アルバム『レット・イット・ブリード』(1969年)の中でカヴァーしたのが最初で、ストーンズは原曲を大胆にアレンジしている。イントロでキースが間違えてやり直している場面も、ライヴ・ヴァージョンならでは。
13SWEET VIRGINIA
アルバム『メイン・ストリートのならず者』(1972年)収録曲のアンプラグド・ヴァージョン。哀愁を誘うミックのハーモニカ・ソロで幕を開け、アメリカの広大な大地を旅する男を描いたカントリー・ソング風情だが、その実はストーンズではおなじみのドラッグ・ソングである。
14LITTLE BABY
この曲のみアルバム『STRIPPED』で初めて取り上げられたナンバー。ウィリー・ディクソンが書き、ハウリン・ウルフが1961年にチェスに吹き込んだヴァージョンで広く知られるブルース・ソングで、メンバーも若い頃に聴きまくった曲なのだろう。原曲に忠実な解釈でカヴァー。
15BLACK LIMOUSINE