ミニ・レビュー
96年にオリジナル・リリースされたベスト・アルバムの再発。75年の「時代」から、95年の「旅人のうた」まで、シングル中心の編集がされている。完全ディスコグラフィやCD収録全曲リストといった資料も充実。ファンなら買わざるを得ないでしょう。
ガイドコメント
数ある中島みゆきの作品の中から選びぬいた、珠玉の名曲集。70年代から90年代までのヒット・チャート1位を記録した曲に加え、TV番組主題歌やCM曲なども収録。
収録曲
01空と君のあいだに (シングル・ヴァージョン)
楽曲的にはマイナーとメジャーを行ったり来たりするのが特徴的だが、どんなに凝った構成であっても彼女の歌声は大地を震わせるように響きわたる。壮大なサウンドと心象風景を綴った歌詞が美しく、かつ心地よいナンバー。
02悪女
81年発表のヒット曲。この頃はまだそれほど例のコブシをきかせた歌声ではない。オリジナリティを確立する前の初々しさが、80年代前半特有の息吹とシンクロしていて興味深い。
03あした
淡々としたリズムで徐々に盛り上がっていく。こんなバラード曲を歌わせたら、この人の右に出る者はほとんど存在しないのではないか? 哀愁を多分に含んだメロディも味があり、その心地よさは日本酒のお供に最適だ。
04最後の女神
TBS系『筑紫哲也のニュース23』のエンディング・テーマとして長く使用されていたので、記憶にある人も多いだろう。社会的なテーマを歌ったナンバーだが、さまざまな心象風景を扱う手法は、あくまでも中島みゆきの世界だ。
05浅い眠り
もともとドラマティックな展開の曲を書く人だが、この曲ではより広大な世界観を示している。とはいえ、あくまで男女の恋模様を核にした作りは変わることのない魅力であり、過去に現在に、時空間を超えて歌世界は広がる。
06ルージュ
07誕生
人として生きる意味を問い、ひとりの人間が送るであろう人生模様をダイナミックに歌い上げたバラード・ナンバー。ファンからの人気が高いのもうなづける、感動的な人生賛歌だ。
08時代
中島みゆきの代表曲といえばこれ、という人も多いだろう。いくつかのヴァージョンが存在するナンバーだが、コーラス部分のリフレインには、どの時代にあってもスタンダードとなりうる普遍的なメッセージが込められている。
09わかれうた
1977年リリースの初期の中島みゆきを代表する曲だ。この頃から、マイナーな雰囲気の漂うメロディを巧みに操る作曲をしていたことがうかがえる。彼女の基本的なスタイルが確立した曲ともいえよう。
10ひとり上手
11慟哭
12狼になりたい
13旅人のうた
彼女の楽曲のなかでは比較的激しいサウンドに包まれているが、壮大で力強い彼女の世界観を表わすには、このぐらいがちょうどよいのかもしれない。聴く者の心を鼓舞するような歌詞も、これまで以上に増して勇気づけられる。
14ファイト!
ドラムスと語りに近いヴォーカルで始まるイントロに、衝撃を受けたファンも数多くいるだろう。メッセージ性が強いこの曲からは、彼女の原点であるフォーク・ソングの匂いを感じることもできる。