ミニ・レビュー
非常に古典的なシンガー・ソングライターだが、それがえらく新鮮に聴こえる。“届かぬ想い/叶わぬ恋”を真っ正面から歌う作風はこの2作目でも変わらず、その頑固さが大きな個性になっているのが面白い。ストリングスやピアノを多用した手堅いアレンジも好感度高し。
ガイドコメント
1st『オールトの雲』がロングセラーを続ける中、約1年ぶりの2ndアルバムが登場。「月光浴」「片想い」「隣の部屋」といったシングルでさらに広がりを見せた柴田淳の歌世界を実感できる。
収録曲
01夢
あせらず、しっかり一歩一歩と進んでいけそうな安定感のあるメロディが心を落ち着かせる。“今はまだ想い出にはできない”という健気な恋心が、音に乗って、くすぶっていたハートを優しくほぐしてくれる。
02隣の部屋
懐かしい香りのする旋律に、切ない恋愛模様が浮かび上がる、今にもため息が聞こえてきそうなフォーク・ソング。ひとりの世界に浸りたいときにぴったりと寄り添ってくれる音楽。
03片想い
心がきゅーっとなるような切なく、少しほろ苦い片思いを描いたバラード。片思いの辛さ、切なさ、甘い痛み、すべてを理解して包み込んでくれる優しい旋律が、温かく癒してくれるはず。
04サーカス (Piano Solo)
見知らぬ世界に迷い込んでしまい出口を模索しているような、摩訶不思議な雰囲気を醸し出した作品。おどけたピエロが曲芸で楽しませてくれながら、出口へと導いてくれる……。サウンドにはそんなファンタジックな要素も感じられる。
05拝啓、王子様☆
売れないアーティスト“王子様”へ宛てたファンレターを詞にした、ユニークなスタイルの楽曲。バラード曲が多い彼女の中では珍しいポップ・サウンドも新鮮。少し鼻にかかった隠りがちなヴォーカルもハマッている。
06月光浴
夜空に向かって口ずさみたくなるような、静かで寂しげな旋律が心にしみこむ透明感あふれるメロディ。心の奥に残るもやもやした気持ちもこの曲が洗い流してくれそうなバラード。
07美しい人
愛しい人になにかしてあげたいのにその役目は自分ではない。わかっているけれど、この思いはどうしたらいいのだろう……。そんな片想いの気持ちを男性側から綴ったナンバー。情感あふれるしっとりとしたメロディがより切なさを表現している。
08なにもない場所 (弾き語り)
ピアノ弾き語りによる美しい楽曲は、彼女にしては珍しく(!?)恋が成就する詞。“不安も孤独もなにもない場所”のフレーズに、幸せの場所=ユートピアを連想できる、聴く人の心を素直に包み込むヴォーカルが見事。
09ため息
秋風のようにもの寂しげなため息が似合う曲。ちょっぴりセンチメンタルな気分のときに、優しく心にシンクロしてくれるだろう。落ち込んだときにこそ染み入る、一人で聴きたい楽曲。
10月の窓
しっとりとしたきれいなメロディが、ジャズ・テイストのアレンジによりムーディーな雰囲気に。終わった愛を忘れられずにいる女性の心情を描いた詞には、切ないだけではなく、思い出として大事にしようというポジティヴさも感じられる。
11めじろの心 (Piano Solo)
“めじろ”とは、ある日、家の前でひとりぼっちで静かに旅立っていた鳥。その“めじろ”対する鎮魂曲ともいえる同曲は、切なさの中に、救いともいえる温かさと優しさがあふれたもの。純粋なるメロディ・ラインが美しい。