ミニ・レビュー
野崎良太の不定形プロジェクトの日本語タイトルとしては初のアルバム。スムースなハウス・ビート上を南米音楽が心地よく転がっていく後に静かな歌ものへと移行していくなど、とにかく流れは絶妙。音がデザインされていく感覚がまた美しさを呼ぶ。
ガイドコメント
アルバム『SET FREE』、ミニ・アルバム『Horizon』という2作品で、クラブ・シーンはもちろんJ−POPシーンでも注目を集める野崎良太=Jazztronikの2004年第1弾。
収録曲
01七色
フレッシュで軽やかなポップ・ナンバー。哀愁を漂わせるピアノの旋律に始まり、徐々にヴォルテージが高まっていく。弾けるハウス・ビートに乗って“生まれ変わっていかなきゃ”というポジティヴな女性ヴォーカルが聴ける、アルバム・タイトル曲。
02鳳凰-PHOENIX
ピコピコしたシンセのリフに軽快なピアノとストリングスをフィーチャーした、インストゥルメンタル・ハウス・チューン。生音とシンセ音をバランス良く組み合わせたポップ・サウンドは、“鳳凰”のように飛び立つ彼らの自由な音楽スタイルを象徴しているようだ。
03Arabesque
美しいピアノの演奏が耳を惹きつける、野崎良太の才能とテクニックを凝縮したミステリアスなラテン・ジャズ・ナンバー。曲中に現われる生楽器の扇動的なメロディが、濃厚でアーシーなラテンの味わいをいっそう創出している。
04Magic Lady (Interlude)
水面を打つ水の雫のSEがクールな癒しとなって響く、アルバム『七色』のインストゥルメンタル・インタールード。繰り返すシンプルなシンセの上を、静かで清らかな女性のハミングが泳ぐ。母性的な優しさに満ちていて、不思議な音に引き込まれるようだ。
05Don't hold in your tears
ジャジィなリズムにフルートの音色を注いだ、スムースなジャズ・ハウス・ナンバー。快楽的な熱を帯びて舞うような伸びのある女性ヴォーカルと、生楽器にキーボードが噛みあって作りだすゆらゆらとしたサウンドの配合が絶妙な、心地良い夏の音楽だ。
06Nana
多彩な楽器を駆使した音が詰まった、南国風ハウス・ラテン・ジャズ。クイーカやビリンバウなどのブラジル楽器のリズムと熱いサックス・ソロのサウンドに、セクシーな女性のコーラスが絡み合う。暑い南国の夜を高い演奏力で表現したクールなナンバー。
07Sky Fallin'
しっとりとした女性ヴォーカルを聴かせる、幻想的なバラード・ナンバー。高音が美しく起伏に満ちあふれた、弦楽器にも似た神秘的なヴォーカルが魅力的。それを引き出しているシンプルなピアノのリフレインにも注目。
08Someday (Etude For The Right)
クラシカルなピアノ・サウンドとシンプルなミニマル・サウンドを融合した、ドラマティックなテクノ・ナンバー。起伏激しい流麗なピアノとバックを波のように流れるドラムのリズムが、新たなクラシックの可能性を予感させるように、独特の世界観が展開していく。
09影
小鳥のさえずりを思わせる効果音と美しい高音のループ・サウンドが印象的なナンバー。ピアノとシンセが絡み合う展開が、近未来の音世界を形成しているようだ。突然途切れて、移り変わっていくサウンドの変化にも、高い技巧性を感じる。
10SAMURAI-侍 (Album Version)
ピアノ・ソロを前面に出したスピード感あふれるジャズ・ハウス・チューン。ファンキーなラップをちりばめ、突如現われる哀愁のピアノ旋律が感動的に煌く。アメリカやヨーロッパでもリリースされた、“七色”に変化するアルバム・ヴァージョン。
11Walk into the Memory
過ぎ去った日の思い出をゆったりと回想するような、クラシカルなピアノ・ソロと情感的なメロディが美しい。フランスの作曲家・サティを思わせる、透明感ある幻想的なサウンドが、雨のように静々と降り注いでくるようだ。