ミニ・レビュー
ライヴではぶっ飛ばす一面も見せながら、この作品は少し内省的でしっとりしている。それだけ自分の内側を伝えたいという思いが伝わってくる。ロック・アルバムでありながら『フォーク』というタイトルをつけたあたりにも、その心のひだが感じられる。
ガイドコメント
約1年半ぶりとなるフル・アルバム。先行シングル「ヒコウ」「ストライク」「テノヒラ」をはじめ、メロディアスな楽曲と深みを増した歌詞、新たな広がりを見せるサウンドなど、聴きどころ満載の一枚。
収録曲
01ストライク
スネオヘアーの直球ど真ん中、甘酸っぱいギター・ポップ・ナンバー。淡々とした語り口が、若者のさりげない心象風景を垣間見せる。「青春」など使い古された言葉も瑞々しさを増して輝く佳曲。
02テノヒラ
物事を前向きにとらえることやあきらめないこと、振り返るだけではなく前に進むことなどを強調するポジティヴな歌世界は、爽やかなギター・サウンドにふさわしい。季節や風景などの描写は控えめで、箇条書きされたメッセージが主軸のナンバー。
03LIST
一音一音が濃厚な味わいのブルージィなサウンドで、キーボードなど各パートの繊細な手さばきを生かしたふくよかな仕上がりのナンバー。戸惑いや自嘲などが交差する歌詞を、流暢な節まわしで歌い上げる。
04会話
穏やかな時の流れと恋人同士が和む様子が思い浮かぶ、ソフトなポップ・チューン。シンプルなサウンドにトロンボーンなどの濃密な音色が絡み合い、全体をカラフルに彩っている。ハイトーンを生かした歌い方も趣深い。
05夢の続きのようなもの
何気なく過ごす日常や気持ちなど、すべては「夢の続きのようなもの」とゆるやかなバラードにのせて歌う。簡素なサウンドによるのんびりとした雰囲気に、安らぎをおぼえるナンバー。
06自我像
自分自身の日常を第三者の視点で歌い、現実と思惑のズレを巧く描き出したメロウなナンバー。サビを飾るサウンドの開放感と、キーボードをはじめとするアウトロの洗練された演奏が印象深い。
07フォーク
食事で使うフォークをモチーフとしたナンバーで、お互いがうまくいく術とすれ違いのもどかしさなどが混在した世界を歌っている。最小限に抑えられた簡素なギター・サウンドは、歌世界をよりクリアに浮かびあがらせる。
08ヒコウ
ストレートなギター・サウンドと奥行きのあるキーボードなどのダイナミックな演奏、過去と訣別を誓う詞世界からは開放感があふれている。それらの爽やかなサウンドの効果により、サビでは別れの心情が明るく描き出されているのがオツだ。
09The end of dispair
感情を抑えた歌い方と楽曲の後半に濃度を高めていくエレクトロニクスの要素など、シンプルでありながら各パートのバランスが絶妙。映画のナレーションのような本質めいた歌世界からはなんともいえない哀愁が漂っている。
10くだらない言葉 はしゃぎすぎた場所
ゆるやかなギター・リフやなめらかなキーボードなどからなる、オーソドックスなバラード。街の風景をバックに思い出の様々な場面を回想する歌世界は淡々としつつも、未来への希望を示唆することで味わい深い印象が残る。
11エコー
ささやくような歌世界とゆるいタッチで塗られたエレクロニクス・サウンドが聴き手の耳を優しくくすぐるようだ。広大な夜空に例えたスケール感と人肌のぬくもりが共存する、不思議な印象を持ったナンバー。