ミニ・レビュー
パンクであり、ポップであり、アグレッシヴであり、曲によってはフォーキーなテイストもあったり、手の内が広い。がいずれの曲も素朴さが魅力か。初回生産分は映画『ZOO』の主題歌である「奇跡」の、プロモーション・ビデオ収録のDVD付き。
ガイドコメント
タイトルはコミュニケーションが欠如した現代社会を、ヘッドフォンをした若者の姿になぞらえて表現したもの。人気若手作家・乙一原作の映画『ZOO』主題歌「奇跡」ほかを収録した、充実のアルバム。
収録曲
[Disc 1]
01扉
アルバム『ヘッドフォンチルドレン』のオープニング・ナンバーで、ナイフのような鋭いリリックに冒頭からラストまでひたすらに心をえぐられる。内情の側面から歌われる絶望や苦悩のさまは、ダイレクトに胸に響くとともにリアルに感じられる。
02運命複雑骨折
タイトルからインパクト大のアッパー・チューン。悩ましげなギター・リフと鬱憤が蔓延したヴォーカルを筆頭に、絶妙の絡み合いをみせるバンド・サウンドはラストで狂気の最高点に到達。やりきれなさや疾走する感情にきっと共感できるはずだ。
03コバルトブルー
ロックンロール色の強いギター・リフが印象的な、疾走感にあふれるナンバー。くだらないこの現実世界を横目に、閃光のようにあざやかな生きざまを表明している。バックホーンにしては、キャッチーなメロディを聴かせる1曲だ。
04墓石フィーバー
「墓石」と「フィーバー」という相反する言葉を組み合わせたタイトルから、ムンムンにあふれた個性が感じられる異色作。歪んだヘヴィなベースとざらついたギターが、奇妙な暗色ムードを創出している。ヴォーカルはハイテンションで、ラストには「ええじゃないか」と狂喜乱舞するフレーズも登場する。
05夢の花
得意の激情モードから一転してクリアなヴォーカルで聴かせる、郷愁じみたミディアム・ナンバー。アコースティック・ギターを採り入れ、ゆるやかな音色で静かに熱き志を表現するなど、バンドの懐の深さが感じられる仕上がりだ。
06旅人
純粋な心をもって、孤独な奮闘をあてもなく続ける。そんな旅人の生きざまを、疾走するロック・サウンドに乗せて聴かせるポップ・ナンバー。軽やかなアルペジオ・ギターが心地よくサウンドの渦を作り、ドラマティックな楽曲に仕上げている。
07パッパラ
現代的でグルーヴィなリズムに懐古趣味の乱暴なロックが融合し、さらにサルサ的な熱きソウルの香りも加味。そんな不思議な味わいの混沌さが漂う、ジャンルレスなパワフル・チューン。80年代歌謡的な熱きリリックも異色でおもしろい。
08上海狂騒曲 (ラプソディー)
上海の世相をバックに、狂乱気味に奏でられるロック・チューン。冒頭の妖しげな王朝風のメロディをつんざき、一気に疾走モードへ。血管がはちきれそうにぶっとんだ、クレイジーなヴォーカルが魅力だ。変拍子や転調もあざやかに決まっている。
09ヘッドフォンチルドレン
アルバムのタイトル・チューンでもある意欲作。孤独感の漂う哀しげなメッセージ・ソングで、目を背けてはいけない現実やその空虚さにジワリと警鐘を鳴らしている。荘厳なコーラスも効果的で、思わずハッとさせられる。
10キズナソング
「ヘッドフォンチルドレン」と相対的なムードながら、濃密なつながりを感じさせる壮大なバラード。悲しみのどん底で見えるひとすじの光のような、かけがえのない温かさに満ちている。華やかさを際立たせるストリングスも絶品だ。
11奇跡
未来への決意表明曲。軽快に刻まれるドラムや美しいアルペジオ・ギターが印象的な冒頭から、徐々に盛り上がりサビで一気に激昂するバンド・サウンドは圧巻。しなやかでメリハリの効いた展開もさすがだ。
[Disc 2]〈DVD〉
01奇跡 (プロモーションビデオ)