ミニ・レビュー
バンド名のわりに速くはない? と思っているとガツンとやられてしまう。緩急の中で最も大きな余韻を残す疾走感、アグレッシブなサウンド、胸を打つメロディと言葉……それらが一体となって3ピースの力量を遙かに超える音世界を体現している。
ガイドコメント
元スーパーリラックスのメンバーによる3人組、音速ラインのメジャー1stフル・アルバム。彼らのテーマ・ソングともいえるインディ時代の名曲「スローライフ」をはじめ、シングル3枚を収録した本作、穏やかで心地好い空間が楽しめる。
収録曲
0139
チープさを狙った打ち込みサウンドが逆に未来的な印象を与える小品エレポップ。ヴォコーダーを通したヴォーカルでリスナーへの感謝の念をさらっと歌ってみせる。ピアノが奏でるシンプルなリフレインが美しい。
02our song
「君と僕」の「鼓動の高まり」を綴った歌詞と、どこまでも高みに上っていくようなメロディ・ラインが見事に調和する、疾走感あふれるギター・ロック。大久保剛が奏でるテクニカルなベース・ラインがサウンドのボトムをタイトに引き締める。
03冬の空
冷たく澄んだ「冬の空」の空気感をサウンドの微妙な表情の変化と藤井敬之の丁寧な歌唱によって描き出した一品。混沌としたイントロからエレクトリック・ギターの流麗なアルペジオへとなだれ込み、繊細なメロディ・ラインが歌われる。
04街風
甘酸っぱいメロディ・ラインをハイ・テンションの演奏で疾走するエモーショナルなロック・チューン。緩急を使い分けた構成によって緊張感を高め、それを突き破るかのように藤井敬之の伸びやかな歌声が響きわたる。
05流星ライン
往年の歌謡曲風なしっとりとしたメロディ・ラインと、ディスコ調のリズミカルなサウンドが絡み合うユニークな1品。メンバーの息の合った演奏によって、切ない情感が前面に押し出されている。哀愁漂うギター・ソロも絶品。
06ヒグラシ
日本ならではの情景描写を巧みに織り交ぜた歌詞によって、夏の終わりの心情風景を見事に表現。掻きむしるかのようなギター・ソロや、コーダ部分で奏でられるアコースティック・ギターなど、凝ったギター・サウンドが特徴的。
07リンカラン
ギターとピアノのアコースティックな響きが印象的なラブ・バラード。「忘れそうになった」思い出と、「忘れない」であろう今の風景を綴った、過去と未来の交差を感じさせるシンプルな歌詞が深い余韻を残す。ストリングスの重厚な響きが隠し味。
08スワロー
前に進むために、色褪せることのない恋人との思い出を振り切ろうとする、音速ライン流“別れ歌”。ブラック・ミュージックの匂いがするファンキーなイントロから王道ギター・ロックになだれ込む瞬間がスリリングだ。
09逢いたい
愛する人への抑え切れない想いをキャッチーなメロディ・ラインに乗せて歌い上げるビター・スウィートなラブ・ソング。壮大かつサイケデリックなストリングス・アレンジが楽曲をさらにドラマティックに盛り上げる。
10逢瀬川
ソングライターである藤井敬之の生まれ故郷、福島に実在する川を歌い込んだノスタルジックなナンバー。激しく掻き鳴らされるエレクトリック・ギターがロマンチックな情感をかきたて、懐かしくも美しい世界を作り上げている。
11スローライフ
1stミニ・アルバム『うたかた』の冒頭にも収録されていた、音速ラインのテーマ・ソングともいえる楽曲。誰でも持っているであろう“譲れないもの”の大切さを、切れ味鋭いギター・サウンドに乗せて藤井敬之が切々と訴えかける。
12×2×2
『風景描写』を最後まで聴いてくれたファンへのお別れの挨拶と再会の約束。ゆったりとしたリズムに乗りながら爪弾かれるアコースティック・ギターの柔らかなアルペジオと、ディレイを効かせたキーボード・サウンドが夕暮れを思わせる。