ミニ・レビュー
独創的なスタイルを持ったヴォーカリスト、一青窈の4作目。シングル「影踏み」「かざぐるま」「指切り」以外にも、アレンジャーに武部聡志、小林武史、富田泰弘、山内薫などの名手を迎えた楽曲は、バラエティに富み、で彼女の個性が際立った聴き応え満点のナンバーに仕上がっている。
ガイドコメント
3rdアルバム。先行で発売された「指切り」、また「影踏み」「かざぐるま」といったシングル曲はもちろん、生き生きとした彼女の歌、独特の響きを持つ歌詞をのせつつ、広がりのあるサウンドで楽しめる。
収録曲
[Disc 1]
01Banana millefeuille
言葉遊びのような韻を踏んだフレーズを打ち込みサウンドに乗せていく。けれど、どこか気怠さが漂っていて、これが一青窈流ともいうべき新たなヒップホップなんだろう。自分の名前も交えて、生き方を宣言している。
02ホチKiss
ホッチキスとキスという言葉を掛け合わせたラブリー・チューン。甘いキスがやめられないというベタな歌詞内容を、さらりと歌ってみせる。エレクトロチックなパーカッションが、まるでホッチキスの音のようで楽しい。
03うれしいこと。
自身出演のコンタクトレンズ洗浄液、ボシュロム「レニュー マルチプラス」CMタイアップ曲。「お願い聞いて」と始まるのは、愛されていることの幸せを確認するラブ・バラードだ。美しく響く鉄琴の音色と一青の素直な歌い方が、ムードを盛り上げる。
04かざぐるま
藤沢周平原作の映画『蝉しぐれ』のイメージ・ソングに起用された7thシングル。主人公と幼なじみが織りなす悲恋という映画そのままの純愛世界が、一青窈らしいアジアン・テイストのなかで切々と表現されていく。
05影踏み
2005年のJRAイメージ・ソング。振り返れば家族の愛に包まれていた……そんな当たり前のことを気付かせてくれる美しいスロー・バラードだ。父母をすでに亡くしている一青窈だけに、なおのこと切なくなってくる。
06指切り
一歩踏み込んだ恋愛を歌う昭和歌謡テイストのラブ・ソング。Mr.Childrenのプロデュースなどで知られる小林武史が作曲・プロデュースということで、ロック色も強い。これまでとは異なる一青窈に出会える。
07アンモナイト
恋愛をアンモナイトとシーラカンスとの関係に喩えたミディアム・チューン。「あなたを思って2億年」「一緒に化石になろう」という直接的なフレーズに、圧倒されるはず。エッジの効いたギター・サウンドも魅力的。
08Oh la la
愛する人が地球上のどこかにいることを願いつつ、自分は強くなりたい。短いフレーズのなかに生きて行こうとする思いを込めたスロー・チューンだ。アコースティック・ギターの静かな音色が、一青窈の声を盛り上げる。
09ピンクフラミンゴ
一青窈には珍しいロック調ナンバー。1本足で立つフラミンゴになぞらえて、不安定な心理状態を歌い上げてみせる。学生気分じゃいけないのか、浮ついていてはダメなのかというリアルな悩みは、多くの共感を得るはず。
10&
アルバム・タイトルにもなっているスロー・バラード。アコースティック・ギターが静かに流れるたった1分半の間、深い愛がシンプルな言葉のなかに謳われていく。“&”とはあなたと私の間にある見えない気持ちだとか。
11さよならありがと
ミサワホームのCM曲。恋愛は無断に好きになることからはじまり、皮肉にも憎んで「ありがと」と別れを結ぶ。そんな恋の辛酸を、一青窈は和のテイストの言葉を選んで綴る。静かなメロディ・ラインは癒し度満点である。
[Disc 2]〈DVD〉
01影踏み (PV)
02かざぐるま (PV)
03指切り (PV)
04ハナミズキ (京都祇園甲部歌舞練場ライブ)