ミニ・レビュー
メガネがチャーミングな女性シンガー・ソングライターのデビュー・アルバム。関東圏のヒトには“TEPCOひかり”のCMソングを、全国的にはみんなのうたの「恋つぼみ」を唄っているアーティストというとピンとくるかも。やはりその歌声に魅せられる。
ガイドコメント
「やさしい花」「魔法の人」「恋つぼみ」という3枚のシングルを含む1stアルバム。ピアノ弾き語りをはじめ、奥華子の魅力である独特のゆらぎを大切にした、アコースティック風味の仕上がり。
収録曲
01雨あがり
ありがとうという当たり前の言葉を伝えられずにいる、女心を歌った切なくもあたたかいラブ・ソング。切なさを煽る彼女の声が心に迫る。「雨上がり」というタイトルも、彼女のセンスの良さを感じさせる。
02魔法の人
切ないイントロで始まる曲。「あなたをすきになって あたしをすきになれた」という歌詞が、前向きな彼女らしさを垣間見せてくれる。ピアノと歌だけのAメロからBメロへの展開が心を揺さぶる。
03月のそばで眠りたい
「あなただけがあたしだった」。突然恋人がいなくなった悲しさと虚しさともつかない心を歌った失恋ソング。マイナー調のコード進行が、恋人がいなくなってしまった空虚感を醸し出している。彼女の切ない歌いっぷりにも注目。
04そんな風にしか言えないけど
ピアノ中心のポップなサウンドにかわいらしい女の子の声が、勇気を出して歌っている感じのするあたたかい曲。短いブリッジの中で、恋心で胸が痛くなるような気持ちを表現するさまが巧い。
05帰っておいで
一生懸命に生きる日常のなかで「帰っておいで」と優しく迎えてくれるような曲。ピアノ・サウンドの強く短い曲だが、か弱さの中にある力強さに励まされる。負けそうになったら聴いてみたい、癒し力のある曲。
06窓辺
日常の中ですこしずつ温め育てていきたい愛情を歌った曲。サビの盛り上がりが静かで巧く、2コーラス目へと導かれている。ストリングスなどを用いたアレンジも秀逸。永遠に続いてほしいと願う心が伝わるバラード。
07春風
誰にでもある若いころの春の桜咲く別れの季節を、ストーリー性高く歌ったナンバー。アコースティックなピアノとギターの前半から、ストリングスなどを加えたヴォリューム感のある展開になっている。
08恋つぼみ
イントロのフルートの切ない音色に心を掴まれる曲。ストリングスなどを用いてピアノの伴奏の切なさを増して、さよならの春に咲く「恋つぼみ」を切なく表現している。いつか会える時まで、忘れないよという言葉たちに説得力を感じる一作。
09リップクリーム
ピアノと歌だけで構成されるポップ・ソング。なんだかなんにもないような普通の日常に、物足りなさを感じながら生きている自分を見つめた曲。苦しいくらいに生きたらどうだろう、そんな疑問を歌った曲。
10きみの空
ピアノとギターと彼女のピュアな声がイントロから切なさを感じさせる。会えないさみしさを、心の中で必死に泣きながら叫ぶように歌っているのが印象的。バック陣も彼女の思いを支えている。
11鳥と雲と青
奥華子の母性を感じさせるあたたかい曲。彼への励ましを自分にも聴き手にも言い聞かせるように歌っている。「あなたはひとりじゃない」、その言葉に彼女の優しさが集約されている。
12やさしい花
相手の幸せを切に願うこと、守る人になりたいと心から祈る気持ちを教えてくれるラブ・ソング。終盤にかけて重厚なアレンジがほどこされており、涙を誘う。未来に希望を託し、今を大切に歩いていこう、という曲。