ミニ・レビュー
まさかこんなに売れるとは思わなかったサンボマスターの3作目。売れた理由はいろいろあると思うが、音楽的には、ものすごーくオシャレな楽曲を出来得る限り“ダサく”聴かせるその技法に秘密がありそう。もちろん、あのルックスあってのことなんだろうけど。★
ガイドコメント
通算3作目のフル・アルバム。ドラマ『電車男』主題歌「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を含む、全17曲70分の超大作。ロックンロールに命をかけたサンボマスターの生命の放射がここに!
収録曲
01二人ぼっちの世界
轟音ギターと山口の声にならない叫びで幕を開ける、サンボマスターの真骨頂のようなロックンロール・ナンバー。愛する人を失いたくない男の心情をえぐりとった歌詞が、同じような経験を持つ男性たちの胸を打つだろう。
02手紙〜来たるべき音楽として〜
メロディ・ラインに重点を置いた、少しフォーキーな雰囲気で始まるロック・ナンバー。サビの部分ではいつも通り叫ぶようなヴォーカルを披露し、日本語の歌詞が持つ美しさ、力強さを再認識させてくれる。
03世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
社会現象となったネット発のオタク恋愛ドラマ『電車男』の主題歌に起用されたことでお馴染みのロック・ナンバー。未来に向かって愛を叫び、もてない男のみならず現代を生きる我々の心を激しく揺さぶるアンセムとなった。
04君の声は僕の恋僕の名は君の夜
山口のぼそぼそとした語りで始まる、キャッチーなメロディ・ラインが特徴的なロック・ナンバー。ほとばしる恋人への愛情を、隠すことなくとことんストレートに歌い上げた歌詞に、共感する男性も多いはず。
05絶望と欲望と男の子と女の子
回転するようなギターの旋律がダンス・ホールを思わせる、轟音ロック・ナンバー。ともすれば説教臭いとも取られそうな歌詞だが、希望を持ちにくい現代を生きる若者たちの心へ届けよう、という力強さが感じられる。
06世界はそれでも沈んでいくんだぜ
ピアノの旋律が鼓膜を優しく刺激する、たった51秒のジャズ・ロック・ナンバー。“世界はそれでも……”という歌詞の言外に込められた寂しさや絶望が伝わってくる。感傷的な気分に浸るにはピッタリかも。
07戦争と僕
戦地へ赴くことになった若者が、恋人に向けてその複雑な想いを歌ったバラード調のロック・ナンバー。生々しくストレートな歌詞から、彼らが掲げる「愛と平和」というテーマがヒシヒシと伝わってくる。
08愛しさと心の壁
「ディスコ」という仮タイトルが付けられていたという、今までのサンボマスターのイメージとは少し異なる、柔らかいメロディの楽曲。新たな音楽性を獲得しよう、という彼らの貪欲な姿勢が感じられる。
09心音風景
絶叫のようなヴォーカルが迫力満点の、聴き手を圧倒する疾走ロックンロール。サンボマスターの世界観が強く表われた力強い日本語の歌詞が、聴き手に元気と勇気を与えてくれる。ヘッドフォンを外して大音響で聴くべし。
10ゲットバックサンボマスター
山口のボソボソとうめくような語りで幕を開ける、疾走感あふれるロックンロール・ナンバー。複雑なコード進行とめまぐるしく転調するメロディ・ラインが、彼らの音楽的素養の高さをうかがわせる。
11あの娘の水着になってみたいのだ
妄想全開のロックンロール・チューン。何ともバカバカしい歌詞だが、男子なら誰もが考えたであろう不埒な想像を、いつもと変わらぬように力強く歌う山口の男性からの好感度は、軒並みアップすることだろう。
12二つの涙
ほとばしる情熱と煩悩を美しい日本語で歌い飛ばしたロックンロール・ナンバー。魂の底から湧き上がってくるような歌詞もさることながら、キャッチーなメロディ・ラインがリスナーの耳から離れないだろう。
13離れない二人
力強いドラムの音と山口の叫びで幕を開ける、爆走ロックンロール・チューン。有り余るエネルギーを発散するかのような、怒濤のメロディと胸を掻きむしるように感情的なヴォーカルに、聴き手の心は激しく揺さぶられる。
14ベイビー優しい夜が来て
アコースティック・ギターの調べが印象的な、ゆったりとした大人のロック・バラード。曲のタイトルにもある「優しい夜」を連想させる柔らかいメロディからは、さまざまな経験を経た末の成熟が感じられる。
15全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ
3rdアルバムの先行シングルとして発表された、サンボマスターらしい疾走ロック・ナンバー。バンドのテーマである「愛と平和」を高らかに、豪快に歌い上げ、彼らのキャリアにおける代表曲の一つとなっている。
16東京の夜さようなら
哀愁たっぷりの歌詞が大人の夜を連想させる、1分ちょっとの短いジャズ・ロック・ナンバー。昭和のジャズ歌謡を思わせる、レトロな雰囲気のメロディ・ラインが面白い。ストレートなロック・ナンバーが多い彼らの懐の深さが感じられる。
17僕と君の全ては新しき歌で唄え
温かみのある歌詞とキャッチーなメロディが印象的なロック・ナンバー。デビューした頃のほとばしる熱気は確かに薄れつつあるかもしれないが、大衆性と深みを獲得して大きく前進しているバンドの成長が感じられる。
18何気なくて偉大な君
心の傷や葛藤を乗り越えようという前向きな歌詞が胸を打つロック・ナンバー。日本語ロックの旗手として名を馳せた彼らが、その位置に満足することなく歩み続け、新たな音楽性を獲得したことを証明している。