ミニ・レビュー
iPODのCMソング(2)も含む初のベスト。フランス出身のエレクトロニカ系デュオとして知られるが、実際はかなり攻撃的でアグレッシヴ、一言でいえば“ロックな”音作りをする連中であることを痛感する。下世話スレスレのダイナミズムがカッコいい。
ガイドコメント
フランスで多大な人気を誇るダンス・ロック・ユニットの、日本デビュー盤にして初のベスト盤。海外で既に発表されている4作品から厳選してコンパイル。エレクトロ・ビートにハウス、ロック、ジャズなど、あらゆるサウンドを盛り込んだ独創的な作品。
収録曲
01BITCH
エレクトロ・ビートと耳あたりの軽快なギター・リフがポップに絡むエレクトロ・ロック・ナンバー。思わずシンガロングしてしまいそうな「ビッチ!」というサビのシャウトが印象的な、カラフルでファンキーな楽曲。
02CUBICLE
iPodのCMに起用されたことで世界的に有名になったライノセラスの代表曲。珍妙な電子音が跳ねるAメロから、一気にノイジーなサビになだれ込むスピード感は爽快そのものだ。ヴォーカルのテンションの高さも相まって、ディスコ・パンクにも通じるロック・テイストに仕上がっている。
03LE ROCK SUMMER
アップ・テンポなハウス・ビートにオリエンタルなストリングスが大胆に乗せられたダンス・チューン。ところどころで掻き鳴らされるギター、間奏のヴォコーダー・ヴォイスがスパイスとなり、シンプルながらも奥行きのある構成となっている。
04MY DEMONS
ギターのカッティングとセクシーなコーラス・ワークが映えるソウルフルなAメロから、アメリカン・ポップスのような高揚感のあるサビへの流れが秀逸。ライノセラスの音楽的な振れ幅の広さがよく表われている。
05LOST LOVE
大人の夜のハウス。「You fall in love with somebody else tonight(今夜きみは他の誰かと恋に落ちる)」というリリックだけが繰り返される3分49秒。時折声を合わせて歌われる、男女のヴォーカルがセクシー。
06MES VACANCES A RIO
ゆったりとしたミディアム・テンポのボッサ調エレクトロ・ラウンジ。アコースティック・ギター、フルート、マラカスなどの生音を基調としながら、随所にエレクトリックなエフェクトがちりばめられている。気だるいチルアウト感が絶妙に表現された佳曲。
07LE TRIANGLE
上品に歪んだシンセのリフを、オーソドックスな4つ打ちが引き立てるハウス・トラック。緩急を抑えたシンプルな曲構成が、トランシーな陶酔感を誘う。紫煙漂う夜のダンスホールだけでなく、自宅をムーディに演出するBGMとしても相性が良さそうだ。
08GET READY NOW
エレクトリックなノイズが、破天荒なヴォーカルと好相性なディスコ・パンク風ナンバー。硬質なエレキ・ギターに合わせて、キレたシャウトが疾走する。スペーシーな導入からラウドなサビに駆け上がる瞬間のインパクトがスリリング。
09DEAD FLOWERS
イントロから不意に鳴らされるワウ・ギターのリフが、ファンキーな骨格を形作るハウス・チューン。「ギター+エレクトロ・ビート」はライノセラスの得意とするところ。ヴォコーダー・ヴォイスとエフェクトを効かせたサックスの音色が、ノイジーなアクセントとなっている。
10LE MOBILIER
金属音のように鋭く、しかしあくまで上品に歪んだギターの音色が、印象的なリフを演出するハウス・トラック。後半部ではテクニカルなフルートのソロを取り入れ、力強さと繊細さを兼ね備えた曲調に仕上げている。
11MUSIC KILLS ME
AC/DC風のディストーション・ギターが、大振りなリフを炸裂させるロック・チューン。「踊る」というよりは「拳を突き上げて飛び跳ねる」方が、この曲へのリアクションとしては正当だろう。The Raptureがリミックスしたことでも知られる、ライノセラスの代表曲。
12LA GUITARISTIC HOUSE ORGANISATION
クリックハウスのようにミニマルなマシン・ビートで幕を開けたかと思えば、歪んだギターと粒の太いベース・ラインがボトムを支え始めるブレイクビーツ調へと展開。曲が進むにつれてギターはより凶暴に、ビートはますますその太さを増していく。汗の似合う、フィジカルなダンス・チューン。
13MACHINE POUR LES OREILLES
ライノセラス初期のナンバー。シンセサイザーのスペーシーなエフェクトが、全編を通して効果的に用いられている。“ダビーなベース・ライン+ミドル・テンポ+ギター”の組み合わせが、さながらマッシヴ・アタックを彷彿とさせる。
14INACCEPTABLE
初期のライノセラスにはダブにインスパイアされた楽曲が多いが、これもそのひとつ。アンビエントなダウン・テンポに、スペーシーでエレクトリックなエフェクトと神秘的なギター・ノイズが映える、ダブ・チューン。
15METAL MENTAL DUB
ライノセラス流インストで、イントロでダブの王道のひとつであるピアニカのフレーズをフィーチャー。しかしながら、ギターの歪みはあくまでスタイリッシュで、マシン・ビートは常にメタリックという、“近未来型”のスペーシーなダブ・チューン。
16CUBICLE
iPodCM曲のリミックス・ヴァージョン。イレイザーヘッドによってロック要素を抑えた、テクノの濃度が高いアレンジに仕上がっている。曲の緩急を一定に、ビートを均一した、ハウシーでダンサブルなナンバーだ。