ミニ・レビュー
活動休止期間を経てリリースされた5年ぶり5作目のアルバム。再びDSLの根岸孝旨、長田進と組んで作られたサウンドからは、5年ぶん強く柔らかになった彼女の軌跡が感じられる。初回盤のみ2曲のビデオ・クリップが収録されたDVDとの2枚組仕様盤。
ガイドコメント
Coccoの5枚目のオリジナル・アルバム。シャープで力強く、それでいて柔らかい、何者にも縛られないCoccoワールドがここにある。シングル「音速パンチ」「陽の照りながら雨の降る」を収録。
収録曲
[Disc 1]
01音速パンチ
ソロ名義のオリジナルとしては、2001年リリースの「焼け野が原」以来約5年ぶりとなる12thシングル。以前の張り詰めた緊張感は消え、どこまでも伸びやかな解放感あふれる歌声がダンサンブルなロック・サウンドに乗って舞い踊る、鮮烈かつ劇的な復活作。
02暗黙情事
性的な隠喩がふんだんに盛り込まれたエロティックな歌詞が耳に残るハード・ロック・チューン。ディストーションの効いたエレクトリック・ギターとパワフルなCoccoのヴォーカルが暴れまくる曲調が、彼女の完全復活を印象付ける。
03夏色
「君の好きな花が咲いていたよ」というポジティヴなリフレインが印象的な生命賛歌。メランコリックなコード・ワークのアコースティック・ギターはもちろん、エレクトリック・ギターのフィードバック音ですらどこか柔らかで優しい印象だ。
04Beauty C
ミニマルな打ち込みサウンドに乗せて、シンプルなメロディ・ラインをCoccoが呟くように何度も繰り返すミディアム・チューン。絵本作家としても活躍する彼女の資質が反映された、簡潔かつミステリアスな英語詞も味わい深い。
05四月馬鹿
リラックスしたアコースティック・ギターのコード・ストロークを中心に組み立てられたポップ・ソング。ファルセットを交えた歌声がもたらす切なさは圧倒的。スティール・ギターの伸びやかな音色がサウンドの奥行きをさらに広げている。
06Swinging night
Cocco自身が踊るタップ・ダンスの足音に導かれて始まるオールド・タイミーなジャズ・ナンバー。場末のキャバレーで演奏されているかのような猥雑な雰囲気がなんともセクシーで、彼女の歌声もいつにも増して艶っぽい。
07野火
極太のドラム・サウンドと重厚なギター・リフが楽曲全体を引っ張っていく、ノイジーで危険なムード漂うブルース・ロック。Coccoの奔放なヴォーカルがゾクゾクするようなスリルを生み出し、サウンドの切れ味をさらに高めている。
08唄い人
アコースティック・ギターのアルペジオにジャンベというシンプルな編成で奏でられるアコースティック・バラード。果てることのない宇宙のように、Coccoの伸びやかな歌声がどこまでもどこまでも響きわたる。
09愛うらら
愛する人への抑え切れない想いを激しいオルタナティヴ・ロック・サウンドに乗せて歌い上げるラブ・ソング。盟友・根岸孝旨の編曲センスが存分に発揮された、唯一無二な往年のCocco節が堪能できる1曲だ。
10インディゴブルー
ヘヴィなリフレインを奏でるエレクトリック・ギターが前面に押し出されたパンク・ロック・チューン。狂おしいほどに荒々しい演奏と熱情ほとばしる歌詞世界が見事にマッチ。唐突に訪れるエンディングも衝撃的だ。
11陽の照りながら雨の降る
何度も何度も反復されるシンプルなメロディが圧倒的な高揚感をもたらす、感動的な沖縄風ゴスペル・ソング。シンプルだからこそCoccoの沖縄民謡風の節回しがフックとなり、聴き手の胸にさらに強く迫ってくる。
12Happy Ending
「ムラサキの雲のその先を見よう」と走り続ける……。そんな爽やかな疾走感が心地良い、明日への希望あふれるロックンロール。ロックンロールの歴史において伝統的なキャラクターである“ベイビー・ブルー”が登場することに注目。
[Disc 2]〈DVD〉
01陽の照りながら雨の降る (ビデオクリップ)
02Swinging night (ビデオクリップ)