ミニ・レビュー
ザ・ハイロウズを解散した甲本ヒロト&真島昌利が新たに結成したザ・クロマニヨンズのデビュー・アルバム。笑うしかないほど、相変わらずのヒロト&マーシー節が炸裂した最高のロックンロール・アルバムだ。歌詞は単純だが、メロディは柔らかい。良い兆候だ。★
ガイドコメント
ザ・ブルーハーツ、ザ・ハイロウズに続く、甲本ヒロトと真島昌利によるバンド、ザ・クロマニヨンズのデビュー・アルバム。このアルバムでバンドの全貌がいよいよ明らかになる。シングル曲「タリホー」も収録。
収録曲
01キラービー
メンバーによる、うめき声のようなシャウトで幕を開ける超絶ロックンロール・ナンバー。時間の経過やバンドの変遷にもいっさい動じることのない、ストレートな甲本ヒロトのヴォーカルにホッとひと安心。
02エレキギター
“エレキ・ギター讃歌”ともいえる歌詞が面白いパンク・ロック・ナンバー。心の底から湧き上がるようなコーラスが、ギターを初めて手にした時の高揚感を表現しているようだ。シンプルにループする展開が親しみやすくポップだ。
03連結器よ永遠に
真島昌利のギターがうねるストレートなロックンロール・チューン。曲名にもある“連結器”をギミックにした少々お下劣な歌詞は、ブルーハーツ時代から何があっても変わらない、彼らのスタイルの証といえる。
04グレート
抽象的ながらも胸に甘酸っぱい青春の香りがこみ上げてくるような歌詞がグッとくる、直球ロックンロール。青春時代を通り過ぎていつの間にか大人になってしまった人の心に、熱い想いが去来すること間違いなし。
05やわらかい
スピード感のあるヒロトのヴォーカルが爽快なパンク・ロック・チューン。断片的なイメージを繋ぎ合わせたような、それでいて聴き手に確実に何かを感じさせる、真島昌利の手によるポエムのような歌詞が秀逸だ。
06あさくらさんしょ
曲にアクセントをつけるパワフルなブルース・ハープや、ポップなメロディ・ラインが印象に残るロックンロール・チューン。イメージをそのまま言葉にしたような、それでいて毒を含むような歌詞が面白い。
07草原の輝き
野太いベース・ラインに乗って繰り出される、パワフルなヒロトのヴォーカルが心地よい、骨太のロックンロール・チューン。曲の中盤で差し込まれる、マーシーのうねるようなギター・ソロも聴きどころのひとつだ。
08歩くチブ
力強いドラムのビートに思わず身体が動く、疾走パンク・ロック・チューン。“身体の一部が恥部じゃない”という一節に続いて繰り広げられる、まるでダジャレのような韻の踏み方がいかにも彼ららしさをあらわしている。
09くじらなわ
ヒロトの力強いヴォーカルでイントロなしに唐突に始まる、たった1分24秒のロック・チューン。直線的でシンプルな曲調だが、聴き手を飽きさせないどころか耳に残って離れなくなる、不思議な魅力を持った曲だ。
10夢のロッケンロール・ドリーム
マーシーが奏でるメロウなギターのストリングスと優しいヒロトのヴォーカルに、ホッと心が和むパンク・ロック・バラード。青春の終わりを歌ったかのような切ない歌詞が、リスナーの胸をギュッと強く締めつけていく。
11くま
“ばばんばーん ば ばばんばーん”でスタート、“くま、くま……”と連呼するサビなど、朴とつに歌い切るロックンロール・チューン。脈絡がないように思えるが、ラストで“腕利きの散弾銃”など少々哀しげなフレーズを配するなど、ソング・ライティングの手腕には脱帽。
12タリホー
13まーまーま
真島昌利が作詞/作曲を担当した、疾走感あふれるパンク・ロック・チューン。シンプルなコード進行と意外とメロウなメロディ・ライン、そして胸に迫ってくるような抽象的な歌詞が秀逸。ヒロト/マーシーのコンビの良さがあらわれている1曲だ。
14土星にやさしく
なぜ土星なのか? わかるようでわからない歌詞が面白いロックンロール・ナンバー。シンプルなメロディの流れと少しかすれ気味のヒロトのヴォーカルが、心地よく耳に響く。バンドは変わっても、変わらないパンク・スタイルを貫く、芯の強い心意気が感じられる。