ミニ・レビュー
約3年ぶりのオリジナル・アルバム。岩崎宏美への(2)、TOKIOへの(3)、華原朋美への(4)、工藤静香への(5)といった、他の人への提供曲を自ら歌った曲、そしてデビュー曲を意識したごとき(12)など、ファン以外も楽しめる濃厚作。英訳付きのブックレットなども豪華。★
ガイドコメント
通算34枚目のオリジナル・アルバム。デビュー曲「アザミ嬢のララバイ」のコール&レスポンスを彷彿とさせるタイトル曲やユーモアに満ちた「とろ」など、原点に立ち返りつつ新たなアプローチも見せる充実作だ。
収録曲
01桜らららら
アコースティック・ギターと12弦ギターによるアルペジオが印象深い、幻想的なナンバー。サビの「桜ららら」のリフレインと少女のように初々しく軽やかな歌声が、耳から離れずクセになりそう。シンプルな構成の中で、ヴァイオリンが良いアクセントになっている。
02ただ・愛のためにだけ
シンプルな構成を基本としながらも、その中に織り込まれた遊び心に驚かされる刺激的なナンバー。Aメロ、Bメロ、サビまでだけで楽曲として成立しているにも関わらず、その後Cメロ、そして第2のサビへとテンションを上げていく構成と迫力に圧倒される。
03宙船 (そらふね)
TOKIOに提供し、日本テレビ系ドラマ『マイ☆ボス・マイ☆ヒーロー』主題歌になったパワフルな楽曲のセルフ・カヴァー。メッセージ性の強い歌詞、ギターとストリングスが絡み合うサウンド、そして歌声と、すべてが力強さに満ちている。コレを聴けば、嫌でも元気が湧いてくる!
04あのさよならにさよならを
キーボードとストリングスをメインとしたシンプルな構成ながら、見事な表現力でネガティヴさとポジティヴさを巧みに歌い分けており、決して飽きさせることのない作品になっている。間奏のいわゆる泣きのギターが印象的に曲の雰囲気を彩っている。
05Clavis-鍵-
アダルトな雰囲気と浮遊感漂うナンバー。イントロのAOR風ギター・リフ、80年代歌謡曲風のサビや演歌っぽいフレーズと、さまざまな音楽のエッセンスをちりばめながらも、個性と表現力豊かな歌声が楽曲に統一感を与えている。
06水
かけがえのない人への想いを歌った幻想的なラブ・ソング。タイトルどおり、澄みきった水のように透明感のある繊細な歌声が、心にしみるようで心地よい。ピアノを基調としたシンプルな構成により、彼女の声の魅力をたっぷり堪能できる。
07あなたでなければ
まさにフォークの王道なAメロとバンド・サウンドにのせた力強いサビとのギャップにより、1粒で2度おいしいラブ・ソング。「あなたでなければイヤなんです」と、ストレートな歌詞を開き直ったようにルーズに歌うサビは、理屈抜きで気持ち良い。
08五月の陽ざし
子守り歌のような、どことなく懐かしいメロディが印象深い幻想的なナンバー。ピアノとストリングスの繊細な調べとしっとりと歌いあげるヴォーカルが、心地よい調和を生み出している。ブレイクによる静寂が非常に効果的に使われている。
09とろ
中島みゆきとレゲエのリズムという異色の取り合わせが見事にハマッた癒し系ポップ・ソング。歌詞、歌声ともに肩の力が抜けた感じで心地よく聴けるので、中島みゆきが食わず嫌いだった人にも是非オススメ。そしてファンの人は、改めて彼女の声の多彩さに魅了されて欲しい。
10お月さまほしい
めまぐるしく変化するサウンド・アレンジが印象的な、ジャンル分け不可能の怪作。繊細さと激しさ、幼さと妖しさが入り混じった歌詞や、感情に合わせて使い分けるさまざまな歌声と圧倒的な表現力には、感心を通り越して呆れてしまう。
11重き荷を負いて
命の重さ、尊さを忘れてしまった現代人に送る、中島みゆき渾身のメッセージ・ソング。サビで繰り返される「がんばってから死にたいな」の言葉が痛いほど心に響く。シンプルかつ重厚なサウンドと力強い歌声が、素晴らしい調和を見せている。
12ララバイSINGER
情緒あふれるピアノと繊細なストリングスによるアダルトなアレンジが印象的な、シャンソン風味の子守り歌。コーラスによる「ララバイ すぐ明日になる」のリフレインがフェード・アウトしていく幻想的なエンディングが印象的だ。