ミニ・レビュー
ユニコーンという強烈な個性をもったバンドでデビューした彼が、業界生活20年を記念したベスト盤を2枚リリース。本作はソロ・デビュー作「愛のために」をはじめ漢字、ひらがな表記の曲でまとめられている。無駄に着飾ることないシンプルなロックだからこその深い味わいがある。
ガイドコメント
2枚同発となる、奥田民生初のベスト盤。“1号”では、タイトルに漢字もしくはひらがなが入った楽曲を収録。ゆるやかなサビが絶品の「さすらい」ではじまり、親世代の涙を誘った「息子」などを経て、軽快なディスコ調の「御免ライダー」で締める。
収録曲
01さすらい
まさに民生が自分自身のことを歌っているようである。人生はさすらいの日々でありユニコーンからソロになり、さすらうようにアーティスト活動を行なっている民生からの応援歌のようなナンバー。
02愛のために
記念すべきソロ・デビュー・シングルでありミリオン・ヒットにもなった民生の代表曲。ソロになり珍しくポップでとても親しみやすくなっているが、全体的に民生の世界観が独特のひねりを通して感じ取れるだろう。
03快楽ギター
ノリのいいロックンロールで、快楽のヴォルテージは上がりっぱなし。4ピースでライヴ感あふれた演奏はシンプルかつエネルギッシュで、音楽の楽しさをストレートに伝えてくれる。途中でコード進行を叫ぶところも洒落ている。
04近未来
軽快なポップ・ロック・ナンバー。21世紀という時代をテーマにした楽曲で、歯切れの良いヴォーカルと華やかなコーラスによるなめらかなサビのメロディが実にポジティヴな印象を与える。
05恋のかけら
7thシングルとしてリリースされたミディアム・ロック・ナンバー。ノスタルジーを伴った温もりのある歌詞が魅力のラブ・ソングで、奥田民生の照れのない堂々としたヴォーカルが、包容力のある男の優しさを感じさせる。
06月を超えろ
マルベル堂“プロマイド”風モノクロ・ジャケットも笑える10thシングル。咆吼を上げるギター、がっつりとしたバンド・サウンドに、車好きの奥田ならではリリックが軽快だ。さりげなく鳴っているノスタルジックなキーボードも面白い。
07手紙
スケールの大きいハード・ロック・ナンバー。初恋のような純朴で淡い恋歌を、ヘヴィなバンド・サウンドとパワフルなヴォーカルで激しい情熱のラブ・ソングに昇華。奥田民生の楽曲の中でも特に人気の高い1曲だ。
08悩んで学んで
4枚目のシングルとしてリリースされた分厚いロック・ナンバー。シンプルかつ印象的なギターで始まり、グルーヴィなAメロを経てヘヴィなサビに至る緩急のある曲構成が見事。元ジェリーフィッシュのアンディ・スターマーとのコラボ作。
09何と言う
“君に会って何と言う、嬉しいですと言う”という当たり前の感情を飾らず、感傷に浸るわけでもなく、ストレートに表現している。“それでいいだろ、言葉なんか”というフレーズに民生の男としての魅力を感じる。
10野ばら
3分に満たない短めのポップ・ロック・ナンバー。アコギを主体としたシンプルなサウンドと“おふざけ”のない比較的ストレートな歌詞が特徴的。奥田民生らしい爽やかな切なさを感じさせる1曲で、ファンからの人気も高い。
11花になる
イントロなしで歌い始める手法でもって、いきなりビートルズ的な匂いを振りまくこの曲は、具体的にどこがどうなんてレベルを超越してビートルズ色濃厚。『太陽にほえろ!』風にアレンジされた別ヴァージョンともども必聴の傑作。
12まんをじして
キンクスからサザン・ロックまで、数多の洋楽エッセンスを取り込んだサウンドは、ディープな洋楽ファンなら確実にニヤッ。「力抜け」と「力出せ」を交互に繰り返す歌詞は、もはや達観の域にさえ達した、まこと味わい深い魅力。
13息子
彼の作品ではこれがいちばん好きというファンも多いスロー・テンポな名曲。父が息子へ淡々と歌い教える、この先の人生に待ち受ける困難や事柄。そんなひとつとして、さりげなく「小豆相場」を挙げるセンスに爆笑。やはり天才。
14メリハリ鳥
タイトルとは裏腹にちょっと哲学的な空気感を醸し出すリリックだが、ギター・リフも軽快なバンド・サウンドで攻められたらもう楽しむしかない。コーラスもスパイスが効いている痛快なロック・チューン。シングル「月を超えろ」のカップリング曲。
15御免ライダー
80年代ディスコ風ポップ・ロック・ナンバー。全編がサビのようなキャッチーきわまりないメロディ全開で、軽快なグルーヴと見事に融合した歌詞の世界観が疾走するバイクの映像を想起させる。ライヴで人気の高い1曲。