ミニ・レビュー
ベスト盤『1号』のラストが「御免ライダー」で、本作が「イージュー★ライダー」、しかもアルバム・タイトルがこれ。彼らしくて思わず笑ってしまった。ゆる〜い感じを見せつつも、生み出す音楽の骨格はしっかりしていて、ひたすら我が道を突き進む彼のブランド力を再認識させる名曲が揃っている。
ガイドコメント
2枚同発となる、奥田民生初のベスト盤。“2号”では、タイトルがカタカナかローマ字からなる楽曲を収録。シンプルさが魅力の名曲「マシマロ」やアンディ・スターマーとの共作「コーヒー」、人気のポップ・ナンバー「イージュー★ライダー」などを収録する。
収録曲
01マシマロ
痛快なロックンロールと愛嬌のある歌詞が印象深いナンバー。浮遊感のある歌声に吸い込まれ、ついつい口ずさみたくなる一曲だ。しかし、歌詞に込められた背景にはあふれんばかりの愛が表現され、聴き返すほどにほのぼのとした愛の形が見えてくる。
02CUSTOM
メッセージ・ソングらしいメッセージ・ソングを歌わない彼が歌ったからこそ沁みてくる、心中吐露ロック・バラード。バックの演奏陣を含めグッと来ずにはおれない力強い名演。歌い手としての彼の力量も思い知らされる名曲。
03カヌー
ミニ・アルバム『FAILBOX』のオープニングを飾るミディアム・テンポのロック・ナンバー。独特のエロティシズムを含んだ個性的なラブ・ソングで、奥田民生らしい美しくもマッタリとしたサウンドを堪能できる。
04ギブミークッキー
クッキーやポッキーのような、そんな甘さのかけらもない、ワイルドでちょっとブラックなファンク・ロック・チューン。色気のあるヴォーカル、一流のミュージシャンによって生み出されるグルーヴ感や骨太なサウンドがかっこいい。
05コーヒー
3rdシングル曲。元ジェリーフィッシュのアンディ・スターマーとの共作ナンバーで、ポップな中に絶妙な陰りを感じさせる洋楽的コード・ワークが特徴的。松浦善博(元ツイスト)の印象的なスライド・ギターにも注目だ。
06サウンド・オブ・ミュージック
歳を経るごとにシンプルさを増してくる彼の楽曲を象徴した軽快ロックンロール・ナンバー。音楽の魅力を彼らしい言い回しでもって歌った歌詞が、手軽な違法コピーがあふれる世の中に物申しているようにも思えてくる。
07The STANDARD
メロトロンのビートリッシュな引用も秀逸なロッキン・バラード。ラヴ・ソングらしからぬ、“それはそれとして”なる言い回しが四方に放つオリジナリティと説得力。巷にあふれる内容希薄なラヴ・ソングに食傷気味なアナタに。
08スカイウォーカー
まさに空中を歩いているような、そんな浮遊感が心地好い名曲。日常のささやかな幸せがそのまま作品化されたような涼しげな趣は、猛暑はもちろんのこと、日常のストレスさえそっと取り除いてくれる。晴れた夏の日に聴きたい。
09トリッパー
木村カエラ主演で話題になった映画『カスタムメイド 10.30』(2005)のために書き下ろされたナンバー。泥臭くシブいアコギのストロークとヴォーカルだけの序盤を経て、バンド・サウンドに染まっていく民生節全開のロック・チューン。
10トロフィー
アルバム『GOLDBLEND』のラスト・ナンバー。音圧のあるギター・サウンドとポジティヴで自信に満ちた歌詞が魅力だ。不意を突くようなイントロとあまりにも速くフェイド・アウトしてしまうエンディングがユニーク。
11ドースル?
アルバム『E』のラストを飾る壮大なロック・チューン。曲の冒頭とエンディングの野太い「知らねぇ」というフレーズが最大の聴きどころであり、楽曲に深みを与えている。曲、詞ともにきわめて完成度の高い1曲。
12ヘヘヘイ
レッド・ツェッペリン・テイストをちりばめたバンド・サウンドに乗せて、「平次の投げ銭」と歌われる痛快曲。語呂合わせ連発の人を食った歌詞は、彼の持つ“赤塚不二雄イズム”が全開になった証。終始骨太なサウンドも最高。
13MANY
通算20枚目のシングルは、民生節炸裂のミディアム・チューン。「夢いっぱい」「胸いっぱい」など、いろんなMANY(いっぱい)を歌う。チャーリー・ドレイトンとの共同製作で、王道ロックンロールを披露している。
14ルート2
ファンキーなロック・ナンバー。土曜の夜に“オンボロ”の愛車を乗り回すという奥田民生らしいカー・ソング。山崎まさよしがフェイヴァリットに挙げる1曲で、2人のユニット“奥田山崎”においてもライヴなどで披露している。
15イージュー★ライダー
気持ちがすがすがしくなるような、さわやかな正統派ロック・チューン。人生いろいろあるかもしれないけれど、難しいことを考えずに自分らしく自信を持って生きていこう、という気持ちにさせてくれる。