ミニ・レビュー
椎名が作詞&作曲、斎藤が編曲&指揮で、ほとんどを制作。いわゆるロックの楽器も使われたが、オーケストラを背に椎名が歌う作品で、ゴージャスなポップス、いや歌謡曲と言いたい聴きごたえ十分の出来だ。芸風が広く、彼女のヴォーカルもベストの一枚。★
ガイドコメント
椎名林檎の約4年ぶりとなるソロ・アルバム。全篇にわたって、アーティスト・椎名林檎とアレンジ&指揮担当の斎藤ネコとのコラボレーションを展開。あらゆるサウンドを盛り込み、スケールたっぷりに聴かせている。
収録曲
01ギャンブル
シングル集『絶頂集』から、同名曲をセルフ・カヴァー。豪奢なオーケストラ・サウンドにのせて、胸をかきむしられるかのような椎名林檎の絶唱が響きわたる。浮雲がエレキ・ギター、伊澤一葉がピアノと、東京事変のメンバーも演奏に参加。
02茎
官能的なジャズ・ピアノが、はかなさを漂わせるストリングスとゆるやかに融けあう、アルバム『加爾基 精液 栗ノ花』収録曲のセルフ・カヴァー。その妖艶なまでのコントラストは、まるで陰影深いノワールのごとし。
03錯乱
映画『さくらん』のために書き下ろされたシングル「この世の限り」に収録の同名曲を、華やかなビッグバンド・ジャズ風にアレンジ。引き裂かれるような感情が歌詞の隙間からこぼれ落ちる。
04ハツコイ娼女
カヴァー、セルフ・カヴァー曲が並ぶアルバム『平成風俗』のなかで、唯一の書き下ろしとなるオリジナル・ナンバー。浮遊感のあるエレクトロニカ系打ち込みサウンドと斎藤ネコによる管弦アレンジが、浮世離れした音像を創り出している。
05パパイヤマンゴー
ローズマリー・クルーニーの歌唱曲として有名な「マンゴス」を、英語とフランス語の歌詞をミックスさせて情感たっぷりにカヴァー。ミシェル・ルグラン風の、ポップで小粋なカフェ・ミュージックに仕上がっている。
06意識
アルバム『加爾基 精液 栗ノ花』から、同名曲をセルフ・カヴァー。椎名林檎の艶やかで麗しき歌唱がそこはかとなくエロスを芳香させ、どこか昭和モダン風味なサウンドが場末のバーをも想起させる。小粋なジャズ・ナンバーだ。
07浴室
アルバム『勝訴ストリップ』から、同名曲をセルフ・カヴァー。亀田誠治が編曲した打ち込みヴァージョンと斎藤ネコが編曲したストリングス・ヴァージョンをミックスすることによって、有機的なダイナミズムがより強調されている。
08迷彩
アルバム『加爾基 精液 栗ノ花』から、同名曲をセルフ・カヴァー。ヴァイオリンが狂おしいほどに扇情的で情熱的な旋律を奏でる、高速クラブ・ジャズ・ナンバー。椎名林檎のパワフルで凛としたヴォーカルにも注目。
09ポルターガイスト
キッチュでアンニュイなワルツ・ナンバーにリアレンジした、アルバム『加爾基 精液 栗ノ花』収録曲のセルフ・カヴァー。蓄音機から流れてきたかのような懐かしさをたたえた、緻密なオーケストラ・アレンジが光る。
10カリソメ乙女
「椎名林檎×SOIL&“PIMP”SESSIONS」名義で配信限定リリースしたシングル曲をリアレンジした“溜池山王”ヴァージョン。バンドネオンの音色が世界を艶やかに染め上げるナンバーとなっている。
11花魁
東京事変のアルバム『教育』から、ギタリスト浮雲が作詞・作曲を手がけた同名曲をカヴァー。ニューウェイヴの匂いを感じさせるエレクトロなアレンジで、オリジナルよりも夢幻の魅力に満ちた作品に生まれ変わっている。
12夢のあと
東京事変のアルバム『教育』から、同名曲をセルフ・カヴァー。オリジナルよりも立体的で奥行きのあるストリングス・サウンドが、ダイナミックに響きわたる。イントロのピアノ・ソロの旋律がたとえようもなく美しく、そして切ない。
13この世の限り