ミニ・レビュー
東野翠れんとの共著『風花空心』でも話題を呼んだ女性シンガー・ソングライター。ミニ・アルバムとしては『紫陽花の庭』に続く第2弾で、クリスマスから春が目覚め始めた頃までの風景と人間と気持ちをスケッチする。静かに、繊細に主張する6曲だ。
ガイドコメント
湯川潮音のメジャー2ndミニ・アルバム。昭和期に活躍した音楽家・三木鶏郎が残したクリスマス・ソング「雪のワルツ」のカヴァー、CMソングに起用された「木漏れび」などを収録。透明感のある歌声を活かした、冬にぴったりのサウンドが魅力だ。
収録曲
01雪のワルツ
メロディ、歌詞、サウンドと、どこか懐かしいような幻想的な雰囲気に満ちている。マイナー系コードにフルートの音色や物憂げなヴォーカルと、寂しげなはずなのに、なぜか温かみを感じるという不思議な魅力を持っているナンバーだ。
02木の葉のように
昭和歌謡テイストあふれるノスタルジックなサウンドやメロディに、どことなく怪しげなヴォーカルが見事にマッチした異色のポップ・ソング。壊れたレコードのようにテンポが乱れながらフェイド・アウトしていくエンディングが、大きなインパクトを残す。
03おしゃべり婦人
バンジョーやウッド・ベースをはじめとする温かみのあるアコースティック・サウンドと親しみやすいメロディが、何とも言えず心地よい“癒し系”ポップ・ソング。ほのぼのとした中にも独特な感性がキラリと輝く詞にも注目だ。
04知らない顔
ハモンド・オルガンと12弦ギターが織りなす、美しくて幻想的なアコースティック・サウンドが印象的なミディアム・ナンバー。まるで妖精の歌声のように透明感に満ちた繊細なヴォーカルが、心の奥底まで響きわたってくる。
05木漏れび
彼女の天性の歌声と歌唱力、そして圧倒的な表現力を余すところなく堪能できるナンバー。歌唱技術をひけらかすことなく、あくまでサラっと歌い上げる才能には、感心を通り越して畏怖さえ覚える。湯川潮音の魅了がギッシリと詰まった一曲だ。
06長い冬
フルートやストリングスが織りなす幻想的でノスタルジックなサウンドに、思わず心が洗われる癒し系アコースティック・ナンバー。美しさの中に陰りや憂いを含んだ詞とメロディに感心。それらに命を吹き込む天使の歌声には感動を覚える。