ガイドコメント
Coccoの6thアルバムは、沖縄のプライベート・スタジオでレコーディングされた意欲作。降りそそぐ太陽、青く広い空、優しい月明かり。地元での生活から自然に生まれ大きく育っていくような、手作り感にあふれた一枚だ。
収録曲
01燦
「ノルウェイの森」を思わせるケルティックなギター・リフで始まる、生まれ得なかった子供への希望の光に満ちたレクイエム。“sunshine”と聴こえるコーラスの眩しさよ。新生Coccoの誕生を告げるように、晴れやかで力強い『きらきら』のオープナーだ。
02あしたのこと
少女のような歌声でつぶやくように歌われるアコースティック・ナンバー。小学校を卒業する春に作った曲だというのに、“船長”“炎上”など見事な押韻に驚かされる。Cocco自身が奏でるカリンバとピアニカの音色が、無垢で切ない。
03In the Garden
Coccoと長田進による共作曲。サラサラと流れる長田のギターと温かな歌声に包まれて、Coccoの伸びやかなヴォーカルが映える。緑豊かな庭のような、優しい愛の歌。後半で重なるストリングスが、曲の美しさをさらに引き立てている。
04甘い香り
アイリッシュ・テイストのリズム・ギターに乗って何処までも歩いて行きたくなる、胸キュンのポップ・チューン。目を閉じれば、幼い頃に見た真っ青な空がまぶたの裏に浮かんでくるよう。2007年発表の映画『遠くの空に消えた』主題歌。
05お菓子と娘
1928年に作られた楽曲(作詞・西條八十、作曲・橋本國彦)を、Coccoは“ひめゆりのおばぁたちに笑ってほしい一心”で鮮やかに蘇らせた。マンドリン、オルガン、リコーダーなど、地元・沖縄の中学校の体育館で録られた音は、切なく愛らしい。
06An apple a day
カーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」を思わせる、美しいメロディのアコースティック・ナンバー。ざっくりしたアコギとCoccoの素朴な歌声が、じんわり胸にしみる。テスト用の初回テイクとは思えない、約1分半の佳曲。
07秋雨前線
“胸を張るんだ/隠さなくていい”。いつも、Coccoの言葉は、うつむきがちな背中を押してくれる。軽やかなストリングスの衣装をまとった透明なメロディを聴いたら、走り出さずにはいられない。ロック・ディーヴァCocco健在の一曲。
08Baby、after you
一瞬ヒップホップかと思わせるリズム・ボックスのイントロで始まり、シャウトにハンドクラップ、“Cocco!”コールまで飛び出す大騒ぎのパーティ・チューン。シンプルなアコギのバッキングに舌足らずな歌声と英詞が乗った、チャーミングなナンバーだ。
09君がいれば
ウッド・ベース、アコギ、パーカッションによるシンプルなアンプラグド・ナンバー。鼻歌のような、子守唄のような、温かいミッド・チューンで、Coccoの口笛がユーモラス。椅子に座って、ゆったり揺れながら歌うCoccoの姿が目に浮かぶようだ。
10花うた
桜色の春を感じさせる、穏やかな愛に満ちたミッド・チューン。“その目に映る/正しい空の色/こんな想いで/あなたを見る”。小さな子供を見つめる愛情豊かなまなざしと曇りのない歌声が、爽やかなアコギとともに身体の中を心地よく吹き抜けていく。
11Tokyo Happy Girl
シャッフル・ドラムにオシャレなピアノ、渋いウッド・ベースが光る、クールなジャズ・ナンバー。フィドルとアコギの掛け合いを“聴かせる”一曲に仕上がっている。Coccoのモダン・ガール風ヴォーカルもセクシー。
12小さな町
1stアルバム『ブーゲンビリア』から続く、Cocco独自のヒリヒリと焼けつくような痛みにあふれたナンバー。エレキ・ギターを使わずアコギ主体のロック・チューンに仕上げることで、ヘヴィなテーマが救われている。滴のような悲しいピアノの音色が印象的。
13雨水色
優しく爪弾かれるアコギ、雨粒のようなしっとりしたピアノ、Coccoが吹くノスタルジックなピアニカ。“世界中の姉妹とパパ”を想って書かれた清らかなメロディと歌詞に、胸が締めつけられる。レコーディングは、那覇市内の高校の音楽室にて。
14ハレヒレホ
陽気なフィドルが縦横無尽に駆け回る、アップ・テンポのカントリー・チューン。母Coccoと一緒に「ハレヒレホ〜」と歌う長男のあどけない歌声がなんとも愛らしい。NHK教育テレビ『ど〜する? 地球のあした』テーマ曲。
15タイムボッカーン!
『きらきら』収録曲で唯一、ザリザリとたエレキ・ギターで始まるポップ・ロック・チューン。咳払いのような男性コーラスあり、ビートルズの「レイン」を思わせるフレーズあり、Coccoのはっちゃけたスクリームありの、遊び心がいっぱい。
1610 years
Cocco自らがアコギを手に弾き語る英詞のアンプラグド・ワルツ。“10年あれば、愛を語るには十分”という夕陽色の甘いラヴ・ソングを、長田進がギターとコーラス、ブルース・ハープのいぶし銀プレイでキリリとまとめ上げる。
17チョッチョイ子守唄
幼少期に母親が歌ってくれた子守唄を、記憶どおりに再現。原曲は“沖縄の現代音楽”で3番まであるが、本作はわずか3行のシンプルなララバイに。長田進のエレキ・ギターが奏でる沖縄音階とCoccoのウチナーグチは究極の癒し系だ。
18Never ending journey
眩しい光にあふれたアルバム『きらきら』の最後を飾るのは、地平線の向こうへと放つ壮大なミッド・チューン。キーボードのフェイド・インに重なっていくギターが印象的で、静かな足取りのリズムとともに大地を踏みしめて歩いていくCoccoの歌声は、祈りにも似ている。