ミニ・レビュー
原題なしの米ヘヴィ・ロック・バンドの8枚目のアルバム。休養中のドラマー、デイヴィッドに代わりテリー・ボジオなどがゲスト参加して制作された。やや趣が異なるとはいえ、さすがにパワフルだ。KORNならではの実験性を失わず、新生面を見せつつ前進し続けている。
ガイドコメント
アメリカのヘヴィ・ロック・バンド、コーンの通算8枚目となるアルバム。ストレートなロック・チューンからシンフォニックなナンバー、はたまたダンサブルな楽曲など、ヴァラエティに富んだ仕上がりだ。
収録曲
01INTRO
休養中のドラマー、デイヴィッドに代わりテリー・ボジオらが参加、しかも原題はなしというこれまでとやや趣が異なる8枚目のアルバム『無題』のイントロ。。新たな姿勢で制作に臨んだバンドの演奏を暗示するかのような導入部だ。
02STARTING OVER
パワフルなドラムの響きとやや抑え気味のヴォーカルなど、少し不気味なムードが漂う重量感のあるサウンドにバンドの健在ぶりが確認できる。アルバム『無題』の事実上のオープニングを飾るにふさわしいナンバーだ。
03BITCH WE GOT A PROBLEM
アルバム『無題』の「スターティング・オーヴァー」から切れ目なく続くヘヴィなナンバー。たたみかける激しいサウンドとそれに応えるような歯切れ良く力強いヴォーカルが印象的。この冒頭の2曲で、濃厚な彼ら独自の世界にどっぷりと引きずり込まれる。
04EVOLUTION
アルバム『無題』の序盤のヘヴィな2曲に続く本曲はややゆったりと思いきや、それはテンポの速さだけ。ミドル・テンポながら緩急あるヴォーカルや変化に富んだバックは、さすがに強力。キャッチーゆえにシングルになったのもうなずける仕上がりだ。
05HOLD ON
アルバム『無題』の「エヴォリューション」同様、じっくりと演奏されるナンバー。インダストリアル風だが、轟音に浸れるのが気持ちいい。聴き応えのある歌ももちろんだが、3分という長さを“もう終わり?”と思わせるほどの充実ぶりが魅力だ。
06KISS
ゆったりとした歌い始めなど全体的にスローな演奏だが、テンポに関係なく、密度は濃い。適度に聴き易い演奏がひんやりとした空間的な広がりも感じさせるアルバム『無題』に収録の、中盤で独特の雰囲気を放っているナンバー。
07DO WHAT THEY SAY
歪んだギターとピアノの単音からなるイントロで始まるスロー・ナンバー。金属的な響きがあり、リズムもそれほど強調されない実験的なサウンドだ。それがゴス風のヴォーカルなどと相まって、独自の磁場を作り出している。
08EVER BE
ジェイムズのヴォーカルをメインとしたミディアム・チューン。バックの呪術的なサウンドとヴォーカルが一体化した、どっしりとした演奏だ。終盤の渾然とした盛り上がりは、背筋がぞくぞくするほど。
09LOVE AND LUXURY
アルバム『無題』の中ではもっともキャッチーで短い曲。ギターをメインにしたわかりやすいメロディやヴォーカルを聴かせる軽快な演奏だ。明快ではあるが、彼ららしいトガった感触は失われておらず、不思議な感覚に襲われる。
10INNOCENT BYSTADER
ハード・ロック調のギター・リフにインダストリアル風味をミックスしたナンバー。矢が飛ぶようなストレートなヴォーカルにコーラスがプラスされ、そこを分厚いサウンドが大波のように行き来する。この重さは快感だ。
11KILLING
うなり気味のジェイムズのヴォーカルをフィーチャーしたパワフルなナンバー。バックのサウンドと歌が乱れることなく一体化した、今にも火が出そうなほどの熱い演奏だ。ブレイクの後にさらに迫力を増す終盤は、まさに圧巻だ。
12HUSHABYE
悲しそうなギターでスタートするミディアム・ナンバー。ヘヴィな部分もあるが、心に染みる演奏だ。こうした情緒的な表現を歌と音で聴かせることができるのが、単なるヘヴィ・ロックを越える、彼らの力量といえるだろう。
13I WILL PROTECT YOU
エキゾティックな雰囲気のイントロに耳を奪われる。轟音に混ざって木管のような音が効果的に使われておもしろい。キャッチーなメロディとダークなサウンドがうまくミックスされた、メリハリがはっきりしたエモーショナルな演奏だ。
14EVOLUTION
シングル曲のリミックス・ヴァージョン(アルバム『無題』日本盤のみボーナス・トラック)。ヘヴィながらもキャッチーで、ダンサブルに仕上がっている。原曲とは味わいが違うが、ヴォーカルやコーラス部分がうまく処理されていておもしろい。