ミニ・レビュー
筋肉少女帯、D'ERLANGERなど、80年代後半に活躍したバンドが復活した2007年だが、BUCK-TICKは活動休止することもなくデビュー20周年。毎回、つねに違う音楽的アプローチでアルバム制作する姿勢が素晴らしい。「リリィ」は彼らなりのモータウン・サウンドか。
ガイドコメント
メジャー・デビュー20周年となる2007年発表のフル・アルバム。チャートをにぎわせたシングル曲「RENDEZVOUS〜ランデヴー〜」をはじめ、強靭なサウンドが満喫できる。
収録曲
01Mr.Darkness&Mrs.Moonlight
ゴスペル調のコーラスと地の底から湧きあがるような怪しいギター音、そしてセクシーな歌声が絡むロック・ミュージカル風ナンバー。予測不可能な音の進行が複雑な技巧と高い感性をうかがわせ、全体にミステリアスでダークな空気感が流れている。
02RENDEZVOUS〜ランデヴー〜
03モンタージュ
ドラムのリズムが切迫した高揚感をかき立てるギター・ロック。サビを盛り上げる今井寿のコーラスも、曲の熱度を極限まで高めている。荒々しくも饒舌なギター・リフと、体を突き抜けていくような櫻井敦司の歌声が生々しい。
04リリィ
クリアなギター音とどっしりと揺らぎのないドラムのリズムが、絶妙なバランスを生んでいるキャッチーな楽曲。抽象的な詞をまとって、スピード感たっぷりにビートの上を駆け抜けていく曲調が潔い。初期のサウンドを思い起こさせる懐かしい仕上がりだ。
05La vie en Rose〜ラヴィアン・ローズ〜
妖艶な暗さを内包し、夜の雰囲気をまきちらすヘヴィ・ポップ。挑戦的に打ち込まれるドラムとナイーヴなギター・ソロ、そして気だるく退廃的な歌声が艶かしい。安物のコートをまとった女を抱き、“人生はバラ色”とつぶやく詞が印象的だ。
06CREAM SODA
“CREAM SODA”と“狂いそうだ”をかけた、トリッキーなロック・チューン。狂ったように愛を叫ぶ詞といびつなベースの絡みが曲を盛り上げている。力強く打ち込まれるドラムや技巧的な演奏など、聴きどころも多い。
07RAIN
熱情的なヴァイオリンの音色と憂いを含んだギターが切ないラヴ・バラード。雨の風景を歌う詞が、曲にしっとりとした潤いを与えている。叙情的なメロディの中で悲しみを綴り、“ウイスキーでもって傷口を誤魔化した”と語る詞が痛々しい。
08BEAST
鋭角的なギター・サウンドを前面に出したロック・ナンバー。勢いに満ちたバンド・サウンドを重視し、シンコペーションを多用した音が、耳に激しく突き刺さる。“獣”の激しさをそのまま音に変えた、音楽的感性に脱帽。
09絶界
歪んだエレキ・ギターとアコースティック・ギターの絡み合いが情熱的なメランコリック・ロック。どこか昭和歌謡風なメロディ・ラインも、ほろ苦く懐かしい。この世の無常をはき捨てるように歌う詞が、殺伐とした雰囲気を作っている。
10Snow white
美しく幻想的なミディアム・バラード。叙情性あふれるアコースティック・ギターの調べに、真っ白な雪世界と激しく悲しい愛の風景を歌う詞が美しい。ヴァイオリンの繊細さと荘厳さをあわせ持つ音色が、効果的に使われている。
11スパイダー
男の非情な欲望を蜘蛛の糸にたとえた、ドラマティックなロック・チューン。エフェクトをかけたギターの音が妖しくうなりをあげ、聴き手の体を貫いていく。女をサディスティックに抱くさまを描いた詞が、セクシーで刺激的だ。
12Alice in Wonder Underground
13REVOLVER
殺伐とした雰囲気のアップ・テンポ・チューン。戦争で殺された無力な命に抱く悲しみや激しい怒り、そして深い愛情を歌っている。怒りを音に置き換えたような熱いギター・カッティングと、彼ららしい音の展開がドラマティック。