ミニ・レビュー
女の子三人による本格的ロック・バンドのセカンド・アルバム。UKギター・バンド風の生々しいサウンドをバックにした、独特な歌声と思わず引きこまれてしまうヴォーカル・メロディはさらなる磨きがかかっており、彼女たちの成長を示した一枚となっている。
ガイドコメント
3ピース・ガールズ・バンド、チャットモンチーの2ndフル・アルバム。「シャングリラ」「とび魚のバタフライ」などのヒット・シングル曲をはじめ、切れ味の鋭いポップでタイトなロック・サウンドが楽しめる。
収録曲
01親知らず
“親知らずが生えてきたよ”という意外な詞で始まるギター・ポップ。親元を離れ一人で暮らす少女が、両親に対して感謝の気持ちを綴っている。温かな親子愛と厚みのあるバンド・サウンドが、純粋な感動を作り出している。
02Make Up!Make Up!
明るいドライヴ感を漂わせるアメリカン風ギター・ポップ。女の子が鏡に向かってメイクをしながら、自分の嫌な部分を独り言のようにつぶやく詞が微笑ましい。大人の女になろうと背伸びするさまが、キュートなヴォーカルにマッチしている。
03シャングリラ
ライヴ感あふれるパワフルな演奏に乗せてホンワカしたヴォーカルが、ほのぼのとした印象のラブ・ソング。“シャングリラ”という女の子を何とか幸せにしたいという男の子の、恋の空回りを描いている。CX系アニメ『働きマン』エンディング・テーマ。
04世界が終わる夜に
映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』主題歌。原作を読んで書き下ろしたという楽曲で、世界の本質まで鋭くえぐるスケール感のある詞と3ピースとは思えないヘヴィ&ディープなサウンドが、心を揺さぶってくれる。
05手のなるほうへ
弾んだリズムが軽やかな浮遊感を漂わせるポップ・チューン。ヤマバトの鳴き声をモデルにしたというコーラスも楽しい。恋に落ちた女の子が、幸せなのに寂しくて自制の効かない心を嘆く。そんな純な詞が瑞々しく甘酸っぱい。
06とび魚のバタフライ
一度聴いたら耳から離れない個性的なヴォーカルが、気持ちのよい語感とタテノリ系ビートにのって炸裂。ベンチャーズ風のギター・フレーズやハンドクラップを交えたダイナミックなサビが楽しい、会心のサマー・チューンだ。
07橙
ヴォーカル&ギターの橋本絵莉子が高校3年の時に書き下ろしたという、10代特有の不安・葛藤がヴィヴィッドに刻みこまれたナンバー。テレビ東京系アニメ『BLEACH』のエンディング・テーマに使われている。
08素直
素朴なピアノとクラリネットの演奏によるノスタルジックなアコースティック・バラード。彼女らの持ち味であるバンド・サウンドを抑え、ゆったりとしたピアノ演奏に初挑戦。一語一語を大切に歌ったヴォーカルも沁みる。
09真夜中遊園地
彼女たちいわく「ジェットコースターのようなメロディ」という疾走ポップ・チューン。切れ味の良いハイトーンのシャウトとギターの技巧的なリフに、アレンジ力の高さを感じさせる。幻想的な夜に浮かび上がる遊園地が脳裏に浮かんでくるようだ。
10女子たちに明日はない
3人の声が混ざり合ったサビの浮遊感とAメロの疾走感が特色の、コケティッシュな中にロック・スピリッツを練り込んだ彼女たちらしいナンバー。「シャングリラ」のスマッシュ・ヒット以降注目を集めるガールズ・バンドの4thシングル。
11バスロマンス
友人の結婚式に触発されて書いたという高橋(ds)のリリックに弾けるギター・リフが印象的。爽やかなコーラスがマッチしたサーフ・ロック・テイストを盛り込んだハッピー・チューン。こんなチャットモンチー見たことなかった!
12モバイルワールド
60年代風のメロディ・ラインが懐かしいギター・ポップ。電話が途切れた“ツーツー”というフレーズから始まる、個性的なアレンジもチャットモンチーらしい。携帯依存症を歌った少し皮肉的な詞とベースをユニゾンにした部分が印象的だ。
13ミカヅキ
橋本絵莉子が高2の頃に作ったというオルタナティヴ・ギター・ロック。恋愛心を歌う甘いヴォーカルの魅力を前面に出し、中盤から入り込んでくる厚いギター・サウンドが刺激的。メロディの起伏が、詞に綴られた感情の流れを物語っている。