ミニ・レビュー
フォークにパンクをドッキングさせ独自の音楽スタイルを築いてきたガガガSPの2年ぶりのアルバム。ボーナス・トラックの「にんげんっていいな」は日産のセレナのCMソングに起用されお茶の間にも登場。この開けっぴろげな音は他の追随を許さない。
ガイドコメント
約2年ぶりにして、自主レーベル、俺様レコード設立後初めてとなるフル・アルバム。真っ直ぐで熱いメッセージとシンプルながら力強いバンド・サウンドの中に、いまの彼らの姿がぎゅっと凝縮されている。
収録曲
01神戸駅 (アルバムバージョン)
自己レーベル“俺様レコード”第1弾シングルのアルバム・ヴァージョン。神戸駅前を舞台に、遠く離れて行った恋人への思いを歌う。断ち切れない思いがシャウトに転化し、疾走する怒濤のサウンドと溶け合って心に響く。
02淡い頃の話
辛い思いを吹き飛ばすようにはじけまくる、切ないパンク・チューン。淡い思い出を引きずる男の心情を歌う。コザックいわく「仲が良かったけど今は連絡を取ってない人って多い」……そんなことを考えつつ曲を作ったとか。
03幸福哲学第一人者
水木しげるのDVDにインスパイアされてできたという、疾走感あふれるメッセージ・ソング。生まれてから死ぬまでの人生を“素晴らしい色で彩るために日々はある”と表現、共感を呼ぶ。生きる楽しさを教えてくれる曲だ。
04センチメンタル僕
大好きな人への強い思いをロマンティックかつストレートに歌った、メロディアスなパンク・チューン。まるで日記のように、募る恋心について語り尽くす。音なしで始まり、唐突にドラムが乗っかるAメロがかっこいい。
05声に出すと赤っ恥
インディーズ復帰第1弾となったアルバムの表題曲。ガガガSPがこれまでを振り返り、今後への抱負を歌った意思表明ソングだ。シンプルなビートに乗せて叫ぶサビの“やり続ける僕らの音楽”がグッと胸に突き刺さる。
06ユーコ
元カノが忘れられない男の心理を歌った失恋パンク・ナンバー。彼女を“最悪”“軽薄”だったと毒づいてみながらも、大好きだったと言ってしまう情けなさがリアルだ。ノイズっぽい音がざわつく心を表現しているよう。
07フラレ男の哀しい歌
タイトルそのまま、フラれた失恋男をテーマにした疾走感あふれるパンク・チューン。彼女との思い出に浸りまくるさまがなんとも切ない。音的にはポジティヴで、哀しい自分を奮起させる応援歌にも聴こえる。
08野球少年の詩
“俺様レコード”第2弾シングルは、野球少年の姿を綴った青春ナンバー。夢を抱き、恋をしながら、汗と涙にまみれた高校野球生活を送るさまを歌う。前半はロッカ・バラードで、後半は一気にパンク・ロックへと転じる展開もイイ。
09ところがどっこい生きている
アッパー・ビートに乗せて贈る人生応援歌。人間って結構ず太くて、悩んだり傷ついたり、お金がなくなったとしても、生きている……。そんな当たり前だけど忘れがちなことを教えてくれる曲だ。へこんだときにこそ聴きたい!
10恋する音楽
人生を傾けているのになぜかもどかしい。音楽も恋もよく似たようなもの。そう考えるコザック前田の気持ちを歌ったメッセージ・ソングだ。スピーディなタテノリとミディアムのパート構成がシンプルで、耳あたりも良好だ。
11ヨイトマケの唄
美輪明宏の作詞曲による60年代のヒット曲を大胆にカヴァー。土木作業に励んで子供を育ててくれた亡き母を回顧するという詞世界はそのままだが、サウンドは100%のガガガ色。ずしりと重いギターとシャウトが胸を打つ。
12恋は果てなく
アップ・テンポのパンク・サウンドが展開する、怒濤のラヴ・ソング。元カノとの再会をきっかけに過ぎ去った恋を回顧し、明日を生きる決意を再確認する。元気いっぱいなサビのコーラス、静かな終わり方が好印象を残す。
13振り出し人生
疲れたハートに染み入る、しっとり聴かせるスロー・テンポのロッカ・バラード。行き詰まったとき、自分自身を見つめ直して人生をやり直そうと歌い上げる応援歌だ。ギター1本で始まり、次第に盛り上がる構成がいい。
14My First Kiss (アルバムバージョン)
日産「セレナ」CM曲として起用された、「はじめてのチュウ」英語版のアルバム・ヴァージョン。ガガガ初となる英詞ナンバーで、力の入った骨太ヴォーカルがさく裂。2番は日本語詞で途中よりテンポ・アップする。
15にんげんっていいな (セレナヴァージョン)
期間限定ユニット“ガガガDX”名義による日産「セレナ」CM曲。TBS系アニメ『まんが日本昔ばなし』のエンディング・テーマとして知られる曲を、8ビートでアレンジ。悪ガキが集まったようなにぎやかパンク・チューンだ。