ガイドコメント
THE BACK HORNの通算7枚目のオリジナル・アルバム。シングル曲「罠」や「覚醒」をはじめ、彼ららしい情熱的なサウンドと文学的な詞作が存分に楽しめる。高い完成度を誇る一枚だ。
収録曲
01世界を撃て
ギターの菅波栄純がラジオ番組に出演した際に、リスナーの悩みを聞き背中を押したいと思ったことがきっかけで制作された曲。力強いまっすぐな詞とアグレッシヴでエモーショナルなサウンド&歌声が闘志を掻き立てる。
02フロイデ
ベースの岡峰光舟による哲学的な雰囲気を漂わせる詞と焦燥感のあるメロディがマッチしたエモーショナルなナンバー。激しく荒れた重たいサウンドが“バクホン”独特のカオスな世界を作り出している。威圧感のあるサビの掛け声にも注目。
03覚醒
苦しみを乗り越え生きる姿が目に浮かぶ、エモーショナルでグルーヴィな17thシングル。辛さや悲しさのなかで未来が見えなくても、人は独りじゃないというメッセージ性の強い歌詞に励まされる。間奏のアグレッシヴなギターにも注目。
04さざめくハイウェイ
淡々としたリズムから、サビで解き放たれたような広がりを見せるナンバー。退廃、絶望、虚無……現代に生きる人間が感じる未来への喪失感を描き出し、さらなる未来へ希望を託すかのような歌詞に心揺さぶられる。中盤よりバックから聞こえる叫び声がカオティックス的。
05鏡
ノスタルジックではあるが温かさも感じられるゆったりとしたナンバー。いつもの熱く激しい歌い方とは異なり、しっとりとした雰囲気を醸し出す山田将司のヴォーカルが印象的だ。淋しさのなかにも未来への希望が見える優しい詞になっている。
06白夜
深いカオスを感じさせる詞が印象的な一曲。自分からさよならをつげたものの、やはり君を想い狂っていくさまが描かれる。アウトロで“白夜”というフレーズを繰り返すと同時に歪んでいくギターに絶望感が漂っている。
07蛍
ドラムの松田晋二の作詞による別れや不安、出発を描いたナンバー。ノスタルジックな歌詞ではあるが、躍動的なサビからは強さも感じられる。“雲が空を奪って 優しすぎる雨を降らす”という美しい表現に胸を打たれる。
08グラディエーター
空虚な心のなかをさまようような哀愁と、独りでも困難に立ち向かう生命力が入り混じる力強い一曲。リヴァーブのかかったメランコリックなギター・リフが、弱さと迷いを表わすと同時に静かな決意を象徴しているよう。彼らの熱いエモーションが伝わってくる。
09人間
最期の時に際しても、静かな闇のなかでもがくことしかできない救いようのない人間を描く。生きる意味や存在の価値を考えさせられる詞は、サウンドと歌い方ともにダークでカオスに満ちている。イントロの鐘の音が虚無感を感じさせる。
10罠
TBS系アニメ『機動戦士ガンダムOO』第1期エンディング・テーマとなった16thシングル。ツアー中に制作されたとは思えないほど完成度が高く、ずっしりと響くサウンドと戦う意味や生きる希望や信じるものを歌った詞は、ガンダムの世界観を表わすのにふさわしい内容だ。
11生まれゆく光
穏やかに始まる希望に満ちた優しいナンバー。痛みや悲しみを包み込む温かいサウンドと繊細な山田将司のヴォーカルが、未来に希望の光を与えるよう。生命の原点に返った“泣きながら僕ら産まれてきた”という詞が、心の緊張をほぐしてくれる。