ミニ・レビュー
4人組ロック・バンドの約2年3ヵ月ぶりとなる5枚目。センチメンタルなメロディのいい曲を書く一方、野田洋次郎の超早口ラップ風ヴォーカルや合唱隊風コーラス、エレクトロ・ビートの導入など突飛なアイディアが盛り込まれ、一筋縄ではいかぬ奇妙な魅力がある。
ガイドコメント
人気ロック・バンド、RADWIMPSの通算5枚目となるアルバム。ヴォーカル・野田洋次郎のリアルな詞世界を、さらなる成長を感じさせる重厚なバンド・サウンドが包み込んでいる。
収録曲
01タユタ
野田が哀しさであふれる声で優しく静かに歌い出すミディアム・スロー・ナンバー。弱さ、淋しさ、切なさを込めた詞と触れたら壊れそうなほど繊細なサウンドが耳に残る。はかなさと不安に満ちた雰囲気がどこか幻想的な曲だ。
02おしゃかしゃま
激しいノイズで始まる攻撃的なナンバー。歪んだ世界や感情を描く野田のリリックは、きれいごとなど一切含まない。神とは何か、自分が神ならどうするのか、作っては壊す世界など意味はあるのか。生きることにもがく人間の愚かさが表れているようだ。
03バグパイプ
英詞で書かれた別れの曲。自問自答しながらも別れを前向きに受け止めた心情を描写する野田のヴォーカルに、成長の跡が感じられる。“バグパイプ”を真似たようなイントロのギターが印象的で、明るさと爽やかさを持ったサウンドには希望が見える。
04謎謎
答えがすべて“君”になる“ナゾナゾ”を詞に込めたミディアム・ナンバー。出会った瞬間のきらめきや喜びを綴った詞は魅力的で優しく、“君”を励ましているようでもある。キラキラと輝くような、親しみやすいポップなサウンドだ。
05七ノ歌
タイトルは“なのか”と読む、ゴスペル風の合唱で始まるナンバー。野田の優しい口調でのマシンガン・ラップが心地よく、不器用ながらも飾らない言葉で愛を語る。曲が終わったかと思いきや、再び盛り上がる大サビにも注目。
06One man live
失敗を恐れず駆け抜けていくようなエモーショナルでメロディアスなアッパー・チューン。若者が抱く焦燥感や苦悩に対して勇気や希望を与えるような詞と現状から飛び出したい衝動が一気に放たれたサウンドに、熱くならずにはいられない。
07ソクラティックラブ
狂ったようなメロディで始まるアグレッシヴなアッパー・チューン。言葉遊びを駆使した詞と破壊力のあるサウンドは、不安や淋しさのなかで自分の存在を知ってほしいと叫んでいるよう。力強いベースやラップと同時に激しく奏でられるギターにも注目。
08メルヘンとグレーテル
彼らの楽曲「ふたりごと」で“いつかそんな歌作るよ”と宣言したフレーズ、“「君」と書いて「恋」と読み 「僕」と書いて「愛」と読もう”という詞を組み込んだ曲。野田のゆったりとした優しいヴォーカルが切ない。
09雨音子
読みは“あまおとこ”。君を想う優しさや温かさ、君がいなくて僕の地図にはもう目的地がないという淋しさや弱さ、僕のすべては君だったといえる感情を、全英詞で綴った切ない恋の曲。雨の日に光が差し込むような輝きのあるサビが心地よい。
10オーダーメイド
優しく美しいメロディで綴られる対話式の9thシングル。生まれる前の“僕”にいろいろなものを2つずつ与えようとする“誰かさん”に対し、本当に大切なものは一つでいいと願う“僕”。二人称の詞世界が多かった野田が、第三者へと目を向けた作品。
11魔法鏡 (マジックミラー)
爆発するような激しいサウンドで始まるナンバー。自分自身を不安に駆られる日常的な自分である“君”と内側にいるもう一人の自分である“僕”という客観的な視点から描いた独創的な詞で、孤独を感じる“君”には“僕”という味方がいると励ましている。
12叫べ
前向きな詞に彼らの成長がうかがえる一曲。“今日がこれからの人生の始まり”“昨日が今までの人生の一番最後の日”というポジティヴな言葉を示しながら、今後どう生きるかを考えさせるメッセージ・ソングとなっている。
1337458
数字で表わされたタイトルは“ミナシゴハッチ”と読む。人によって何とでもいえる、どうとでもとれる世界に対する嫌悪感を、正しさとは一体なにかを問いながら吐き出している。優しく穏やかなメロディで綴られたユニークなミディアム・スロー・ナンバー。