ミニ・レビュー
約2年ぶり13枚目のアルバム。一部を除きすべての楽器を斉藤和義自身が手がけており、ダイナミックなバンド・サウンドから打ち込みのエレクトロニカ風、ピアノ弾き語りまで、多彩なアプローチで聴かせる。特に忌野清志郎のことを歌ったという「Phoenix」が胸を打つ。
ガイドコメント
前作『I LOVE ME』以来約2年ぶりとなる2009年9月16日発表のアルバム。「アリナミン」CMソングとして話題となった「やぁ 無情」や、フジテレビ系『めざにゅ〜』テーマ・ソング「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」ほかを収録。
収録曲
01COME ON!
エモーショナルなサウンドに激しいシャウトを聴かせるロックンロール・ナンバー。エフェクティヴなギターがごきげんに鳴り響く爽快さが高揚感を生み出す。過去の楽曲に登場した恋人たちのその後がさりげなく描かれている。
02LOVE&PEACE
ディストーションの効いたエレキと鋭いカッティングのアコギがサウンドに重厚感をもたせるハード・ロック・ナンバー。“LOVE & PEACEなんて幻想”と熱い歌声を披露する攻撃的な斉藤の勢いに圧倒される。
03映画監督
哀愁漂う濃厚なピアノのメロディが印象的なワルツ調の一曲。自分の理想の物語に“アナタをヒロイン”として登場させるという、男のエゴを描いた詞が斉藤らしさを感じさせる。現実でもアナタを求めるような情のこもった歌唱が耳に残る。
04ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー
フジテレビ系情報番組『めざにゅ〜』テーマ・ソングになった35thシングル。陽気なサウンドに軽快なギター・リフが印象的なブギー・ナンバー。ポジティヴな歌詞と力の抜けたハートウォームな歌声が日々の疲れを癒してくれるようだ。
05後悔シャッフル
デジタル音とピアノで始まるイントロはポップなイメージを与え、熱く叙情的なギターが加わるとサウンドに厚みが増し輝きを放つ。曲とは対照的に歌詞ではキミに対して“あの時ああすれば”と後悔を綴るが、違和感なく楽曲全体になじんでいる。
06やぁ 無情
タケダ「アリナミン」CMソングの軽快なナンバー。日常についてまわる“無情”に“やぁ”と語りかけたり、さらには受け入れてさえいるユニークな内容で、ひょうひょうとしながらも温かみを持つ作風が沁みる一曲。気取らない斉藤の歌声に疲れた心が癒される。
07天国の月
アコギが心地よく鳴らされるミディアム・スロー・ナンバー。ノスタルジックで温かく響くメロディからは、夜空をふと見上げた時の淡い情景が思い浮かぶ。何気なく思った些細なことを歌う優しい声が、柔らかいサウンドに包まれている。
08Phoenix
2009年5月に逝去した忌野清志郎へ捧げられたナンバー。清志郎に対する斉藤の熱い想いを綴った詞からは、清志郎が空の上でも自由に音楽を奏でる様子が思い浮かぶ。悲しみを振り切る躍動に満ちたグルーヴと感情こもる歌唱が印象的。
09Bitch!
アコギとドラムのシンプルな構成ながら、激しいサウンドとスピードに圧倒される2分足らずの短い曲。エッジの効いた素早いカッティングに緊迫感を感じる。タイトルの“Bitch”以外にも“キライ”“うるせー”といった悪意ある表現が歌詞全体に見られる。
10Summer Days
軽快なアコギが清々しさを感じさせるナンバー。少年時代、青春時代のロックンロールに夢中になった夏の思い出を綴った詞が、エモーショナルなサウンドにより色鮮やかに描き出される。映画『フィッシュストーリー』エンディング・テーマ。
11ハローグッバイ
13thアルバムのタイトル『月が昇れば』という言葉が歌詞に登場する、月をテーマにしたラヴ・ソング。ゆっくりとしたメロウなサウンドが優しくノスタルジックなイメージを与える。柔らかく穏やかな歌声ではあるが、悩み混じりの詞によって儚く聴こえる。
12アンコール
斉藤の初となるピアノ弾き語り曲。素朴ではあるが素直に綴った大切な人への想いを、温もりのある優しい歌唱で歌う。心地よさを感じるゆったりとした柔らかいメロディにより、心を穏やかにさせてくれるバラードに仕上がっている。