ミニ・レビュー
メンバーによる選曲の初のベスト盤2枚組(全31曲)。メジャー・デビュー・シングル「SAKURA」から最新シングル「キミがいる」まで、数多のヒット曲を網羅。初CD化2曲と新曲1曲も嬉しい。2006年のメジャー・デビュー後、彼らの歩んだ軌跡、スターになっても変わらぬ真心、歌心、なにより自然体の感性に感嘆。
ガイドコメント
“泣き笑いせつなポップ3人組”、いきものがかりの、メンバー選曲による初のベスト・アルバム。大ヒット・シングルはもちろんのこと、ライヴの定番曲、ファンから人気の高いカップリング曲ほか、初CD化曲も収録している。
収録曲
[Disc 1]
01SAKURA
NTTのCMソングとしても話題となった1stシングル。“さくら ひらひら”の印象的なサビをはじめ、相模大橋など小田急線沿線の風景を挿入した、季節感あふれる叙情的な詞が魅力の切ない卒業ソングだ。ホームのメロディとして小田急線海老名駅で聴くことができる。
02うるわしきひと
「アクエリアス ビタミンガード」CMソングとなった5thシングル。ずっとそばにいたい大切な存在を“うるわしきひと”と表現した、初々しく甘酸っぱいポップ・チューン。ピュアな歌唱はもちろん、飛び込んでくる楽しげなハーモニカにも心躍らされる。
03青春ライン
TBS系アニメ『おおきく振りかぶって』オープニング・テーマに起用された6thシングル。美しくも儚い青春時代を投影した、胸がキュンとなる切ないメロディ・ラインが秀逸。夏のグラウンドを舞台にしたドラマティックな青春ポップスだ。
04茜色の約束
最後の瞬間までふたりで歩いていこうという件はウェディング・ソングにふさわしい。涙腺を緩ませる弦をバックに、“つないだこの手は すべての言葉に負けない約束”と吉岡が健気に歌う純朴なラヴ・バラードだ。au「LISMO!」CM曲となった7thシングル。
05KIRA★KIRA★TRAIN
夢を追いかけるため故郷を出て東京へ向かう列車へ乗る……という希望と悲しみが交差する光景は、今も昔も変わらない。“さよなら”と“きらきら”で表わした犠牲と憧れに葛藤しながら旅立つ想いを、清々しいサウンドで描いたナンバーだ。
06ノスタルジア
映画『時をかける少女』主題歌の17thシングル。インディ1stアルバム『誠に僭越ながらファーストアルバムを拵えました…』収録曲をアレンジ&一部変詞したもの。恋の終わりのやるせなさを、哀愁を漂わせながらも優しく包み込むように歌う。
07未来惑星
ほの温かいサウンドと“まわる、まわるの”“ゆれる、ゆれるの”という丸みを感じる言葉がソフトに響くミディアム・ポップ。優しい口調ながら、地球人として未来を生きるための不変的なテーマをサラリと歌う、意義深い曲だ。
08夏・コイ (2010 version)
1stアルバム『桜咲く街物語』収録曲のリアレンジ版。夏の恋のときめきを、楽しげに街を歩くように歌う。ホーンや日本武道館公演での観客の合いの手“フォー!!!”も加えた、軽やかなサマー・ポップだ。屋敷豪太がドラムで参加。
09タユムコトナキナガレノナカデ
落ち着きある鍵盤とストリングスともにゆっくりと歩き出すような曲調が印象的なミディアム・ポップ。君を想い、夢を歌い、日々を感じながら生きようと、自分自身に問いかけるような歌唱が胸を打つ。詩的な世界観も魅力だ。
10今走り出せば
未来への不安や悩みを抱える世代にこの場所を踏み出して本当の自分を確かめる旅へ出よう! と勇気を与えるアッパー・ポップ。活き活きと弾ける瑞々しいサウンドと明るい声が背中をポーンと押してくれるように気持ちいい。代々木ゼミナール2010年度CMソング。
11花は桜 君は美し
インディ1stアルバム収録曲を大幅に変更した8thシングル。季節感を装う文学的な詞世界で、二人の間で揺らぐ心境を綴る。しとやかな導入&ラストと軽快な本編、表向きは違えど、その旋律は麗しい。au KDDI ソニー・エリクソン「W61S」CMソング。
12ソプラノ
二人で奏でるはずの愛という名のソプラノは、頬に伝う涙を流す雨の音でかき消される……。悲しい結末を迎えた恋の終わりを感傷的に綴ったミディアム・スロー。いつか笑い合える思い出として、胸にそっとしまっておこうと歌う吉岡の歌唱が切ない。
13月とあたしと冷蔵庫
インディ期のアルバム『人生すごろくだべ。』収録曲をリアレンジ。めぐりくる日常の不安や葛藤を少しずつ和らげてくれる存在、優しく照らす真夜中の月と喧噪の火照りを静かに冷ます冷蔵庫へ、愛着を持った歌唱で語りかけている。ホッとさせるハーモニカの音色が印象的。
14ホットミルク
近づく現実への不安、なかなか見出せない未来。迷いを抱える時に自分らしさを取り戻させるのは胸の中に宿る想い……そう奮い立たせてくれる励ましのメッセージだ。ホットミルクのような手作りの温かさも感じる陽気で楽しいサウンド・アレンジは、亀田誠治によるもの。
15コイスルオトメ
インディ時代のアルバム『人生すごろくだべ。』収録曲をリアレンジした3rdシングル。純真無垢な“大好き”という気持ちを乙女目線で描いたミディアム・ナンバーだ。甘酸っぱい旋律にストリングスも加わっての演出は、ホロリとさせるのに充分。
[Disc 2]
01気まぐれロマンティック
“ダーリン ダーリン”のフレーズが耳に残るドラマティックなアップ。あふれる想いが乗り移ったかのように弾けるハイテンションなサウンドが楽しい。ピアノのグリッサンドや弦までも踊るようだ。フジテレビ系ドラマ『セレブと貧乏太郎』主題歌起用の12thシングル。
02ブルーバード
琴線に触れるはかなさを含んだドラマティックな旋律が秀逸の10thシングル。“蒼い 蒼い あの空”と空に手を伸ばすように懸命に叫ぶ、吉岡の刹那的な歌唱も魅力のいきもの流“青い鳥”だ。テレビ東京系アニメ『NARUTO 疾風伝』オープニング・テーマ。
03じょいふる
江崎グリコ「ポッキー」CM曲として(本人たちも出演して)話題となったハイテンションなパーティ・チューン。擬音風な言葉を巧み駆使して、リズミカルにラストまで一気に弾けて駆け抜ける。ドラムもホーンも吉岡の歌唱も踊る、いきもの随一のアッパー・ポップだ。
04心の花を咲かせよう
はかなげで優しいメロディが美しい、第87回全国高校サッカー選手権大会応援歌。“日常の日々こそ奇跡”と懸命な努力が未来への奇跡へとつながると語る。確固たる意志を持った歌唱が、説得力のあるメッセージ・ソングをさらに輝かせている。
05YELL
NHK全国学校音楽コンクール中学校の部課題曲をリアレンジした15thシングル。サヨナラは未来へ飛び立つためのエールだという、夢へ向かう若者へ送る切なくも力強いナンバーだ。けれん味と清々しさが同居した歌唱も魅力。鳥山雄司、松任谷正隆らが参加。
06キミがいる
日本テレビ系ドラマ『ホタルノヒカリ2』主題歌起用の19thシングル。吉岡が詞曲を手掛けたポジティヴな曲で、憧れていたキミを目の前にした女子の胸のトキメキをラヴリーに歌う。胸の鼓動を表わしたようなギターやタンバリンのリズムが、さらに興奮を高めている。
07ちこくしちゃうよ
インディ期のアルバム『人生すごろくだべ。』収録曲をリアレンジ。相模川に架かる“大橋”など厚木付近の描写から、吉岡の高校時代の通学風景をモチーフにしたと思われる。自転車に乗って恋する君を追いかけるという、甘酸っぱい青春ソングだ。
08Happy Smile Again
もう一度笑顔を取り戻そうよ……フラれた悲しみをグッとこらえながら、シアワセにたどり着くためにまた笑おうと頑張るポジティヴな気持ちが愛らしい。暖かいオルガンやギターの音色が安心と希望を与えてくれる。NHK『スタジオパークからこんにちは』テーマ曲。
09ありがとう
NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』主題歌起用の18thシングル。鍵盤や弦を軸としたドラマティックな演出をバックに、愛する相手への感謝と愛を歌う。繋がれた右手が優しく“ありがとう”の声を受け止めるという詞が微笑みと涙を生む、永遠のラヴ・ソングだ。
10雪やまぬ夜二人 (2010 version)
松任谷正隆制作によるウィンター・ラヴ・バラード。雪の降る夜にささやく愛の歌で、穏やかに時間が移ろうようなサウンドが季節感を漂わせる。美麗なストリングスや遠くで鳴る鐘の音が、澄み切った空気を細やかに演出。4thシングル「流星ミラクル」収録曲をリアレンジ。
11くちづけ
恋の終焉が近づく際に、“一度だけくちづけて”と懇願する別れ歌。GS歌謡曲調の影響もあってか、いつもは陽気で快活な吉岡の歌唱も、ここでは女の艶やかさを感じさせている。インディ期のアルバム『人生すごろくだべ。』収録曲をリアレンジ。
12スピリッツ
日本テレビ系『元気を日本に 日本プロ野球2010』イメージ・ソングということもあり、“輝ける星になれ”“熱いプライド”などの言葉が盛り込まれている。熱血青春ドラマにふさわしいような、情熱的なサウンドが特色の歌謡ロックだ。
13風と未来
軽やかにリズムを刻むタンバリンや口笛が風を導いてくれるような清々しいナンバー。“今描いた未来へ向かって〜”のコーラスが実に心地よく、ハーモニカも鼻歌のようにゴキゲンだ。まばゆさと若々しさがあふれる日産「新・日産セレナ」CMソング。
14残り風
イントロの扇動的なギター・リフが耳を奪う、いきものがかりの真骨頂ともいえる切なポップ・チューン。戻らない時間に後悔しながらも明日へ向けて強く生きるという決意を、情緒風情豊かな文学的な世界観で綴っている。
15なくもんか
16thシングルで、阿部サダヲ主演映画の同名主題歌。寂しさを背負い込んで強がる、素直になれない自分について語っている。ついホロっときそうなハートフルな優しいサウンドをバックにつぶやく、心をつなぎたいという本音が沁みるナンバーだ。
16帰りたくなったよ
いつになっても戻りたい大切な場所……君が待つ街への愛着を綴ったハートウォームなナンバー。心が温まるメロディと涙腺を緩ませるストリングスが好演した、これぞいきもの流という切なポップだ。映画『砂時計』主題歌&「アイフルホーム」CM曲起用の9thシングル。