ガイドコメント
前作『アルトコロニーの定理』に次ぐ、2011年3月9日リリースの6thアルバム。チャート初登場1位を記録した人気曲「DADA」や「狭心症」「携帯電話」といったシングルを含む、全14曲を収録。ラッドの進化したサウンドを体感できる超絶作だ。
収録曲
01DADA (dadadada Ver.)
12thシングルのアルバム版。現代の不安や焦燥を、激しく脳髄を刺激するエモ・サウンドと駄々っ子のようにこねくり回した“なぁなぁなぁなぁ……”以下のラップ調フックに示したラッド流ダダイズム・ロックだ。韻や言葉遊びによる終生観と虚無観も提示した詞が印象的。
02透明人間18号
初夏の清々しい青空を想起させるようなポジティヴ・ロック。葛藤に明け暮れる日々を白と黒の狭間の灰色と表現しながら、虹を混ぜると同じ色になると励まし、生きる喜びを教えてくれた存在との出会いを綴る。終盤の浮遊感ある歌唱は希望の光を見つけたように安らかだ。
03君と羊と青
2011年NHKサッカー放送テーマ曲に起用されたアッパー・ロック。希望を感じるクルクルと回るようなギター・リフがラストまで一気に駆け抜ける、爽快感に満ちたサウンドだ。不器用ながらも夢見ていた未来へ突っ走る衝動を、清々しく勇敢に歌い上げている。
04だいだらぼっち
タイトルは日本各地に残る巨人伝承から拝借。大きなダイダラボッチと小さく縮こまったような一人ぼっちの自分という対比が面白い。人は決して一人ぼっちじゃないよというメッセージを逆説的に綴った、ソフトな歌唱が印象的なアコースティック調ミディアム・ナンバーだ。
05学芸会
自身の存在価値を学芸会の舞台に見立てて問うメロディアスなロック・チューン。周囲は自分の気持ちなんてちっともわかっちゃいないという虚無感と反骨心を、少年Dという役になりきって息せき切るように吐露する。切迫感に満ちたナイーヴなサウンドが、はかなさを助長。
06狭心症
ズシリズシリと負荷がかかるような重厚なサウンドが全編を支配した13thシングル。ヘヴィなロック・サウンドとは対照的な、喚き散らすようにかなぐり捨てた甲高い歌唱が印象的。劣等と絶望にさいなまれた感情を剥き出しにしたナンバーだ。
07グラウンドゼロ
ドリーミーなイントロとは対照的な、風景が飛んで行くように疾走するスピーディなロック・チューン。どうあがいても迫ってくる未来に後ろ向きにならず、自分らしく進んでいけたら、という気持ちを綴る。前途に希望を感じるクライマックスが耳に強く残る。
08π
河野圭のピアノを組み込んだジャム・セッション風サウンドによるアッパー・ロック。世間にはいろいろな考えがあって、自分もその時々で違う気分だったり、本当の形は目に見える形と違ったり……人生さまざまだと叫ぶ。次々と飛び出す韻詞が楽しい。
09G行為
声色を変えながら、さまざまなタイプの男女の自惚れ=“自慰”を独白スタイルで語ったロック・チューン。全編を通じての不満や疑問を表現したようなギター・リフのループは、どのタイプも根底は似た者同士でしょという強烈なアイロニーかも。
10DOGOUT
行き場を失ってさまよい歯がゆい思いをして生きる流浪の人たちへ、周囲の価値観に左右されなければ生きる術はあると伝えるシリアスなナンバー。ヘヴィな高速ロック・サウンド上を狂い舞う金切り声のようなギターが耳に残る。
11ものもらい
失ってみてはじめて解かる大切さ……あるものがなくなった時の不自由さと自身のアイデンティティが解らない苦悩を、独特の詞世界で描写。バックコーラスととも上昇するような終盤と暖色の音質が印象的なミディアム・ロックだ。
12携帯電話 (Cat Ver.)
斎藤ネコのヴァイオリンを追加した、フォーク歌謡テイストの10thシングルのアルバム・ヴァージョン。ポケットに入れた携帯電話に自分の居場所を投影した詞がユニークだ。懐かしくもちょっぴり切ない陽性のサウンドは、ホッとした安心感を与えてくれる。
13億万笑者
この世の表と裏、光と陰はほんの紙一重だと清々しいほど快活に語るロック・ナンバー。経験した者だけが知る悲喜こもごも、辛く悲しい時があるからこその喜び。野田のヴォーカルには、人生はなんて愛しいんだ! という情感があふれている。
14救世主
僕を生かしてくれる君という救世主の存在にすがり感謝する歌だが、終盤の“ほら、ほら……”のリフレインは君=“もう一人の自分”を奮え立たせるようにも聴こえる。6分超の大作となった音響系ロッカ・バラード。ノイジーにカットアウトするアウトロが鮮烈だ。