ミニ・レビュー
橙色が目を惹く7枚目のアルバム。仲間、敵、恋人など対人のほか社会問題含め、人が経験・直面するさまざまな形の“出会い”をケツメ流に昇華。冒頭曲「出会いは成長の種」の文句がまさに全体の裏テーマか。サウンド面では最速アッパー曲「リディムドライバー」など斬新さもあり、冒険と王道を巧く調合させている。
ガイドコメント
約3年ぶりとなる2011年3月発表のアルバム。7枚目となる本作には、「お二人Summer」「戦え!サラリーマン」など話題曲のほか、ライヴで盛り上がること必至のアッパー・チューンからポロリと涙するバラードまでを収録。
収録曲
01出会いは成長の種
生きていくなかで訪れる多くの出会いを歌った爽やかなナンバー。地元の友達やバンドの仲間、頑固な恋人、優しい上司、恋人……今までの人生を振り返るように出会った人々のことを想い、次に会う人がまた自分を成長させるだろうと綴った歌詞が感動的だ。
02お二人Summer
ケツメイシお得意のサマー・チューンとなった19thシングル。70年代風のディスコ・サウンドにストリングスが彩りを添える爽やかなトラックとRyojiが歌う伸びやかなメロディ、そしてリズムを前へと押し出すラップが絶妙に心地よい。
03現実は戦場
アコースティック・ギターのカッティングが独特の凛とした空気を作り出すミディアム・アップ。人ごみを足早に歩きながら生きる人々を戦場の兵士にたとえ、折れたナイフでも決して離さず前を向け、と強く背中を押す応援ソングだ。
04君とつくる未来
テレビ朝日系ドラマ『ハガネの女 season2』挿入歌に起用された24thシングル。“大切な君”と出会えたことへの感謝、そして二人で未来を作っていけることへの嬉しさを真っ直ぐに綴ったラヴ・ソングだ。ゆったりとしたピアノのフレーズが印象的。
05流れ星
セツナ系のサウンドや“流れ星”を意識した効果音が胸に響くミディアム・アップ。希望を抱き出た社会にもまれ、うつむきながら過ごす毎日……昔見た輝く流れ星を思い出し“遅くはないさ これからだ”と自らを鼓舞し立ち上がる姿を描く。
06リディムドライバー
ディレイを効かせた空間系のギター・リフと4つ打ちのリズム、そしてヴォーカル・エフェクトが深夜のハイウェイのような光景を想起させるアップ・ナンバー。Ryoと大蔵によるスピード感マックスのラップが自然と体を突き動かしてくれる。
07叫び
異国情緒あふれるラテン調のトラックが新鮮なナンバー。声を上げ、拳を掲げ、もがきながら闘い続けろという直接的なメッセージ、そして“その思い込みを捨てろ その思い付きを拾え”という強烈なフックが力を与えてくれる。
08仲間
「出会いのかけら」から2年4ヵ月という長い時間をかけて制作された18thシングル。あたたかで力強いサウンドをバックに、傷をなめ合いなぐさめあうだけではない本当の“仲間”であることの大切さを歌う。テレビ朝日系『ハガネの女』主題歌。
09君と僕の季節
ピアノのシンプルなアルペジオを中心に大人なサウンドで展開するミディアム・ナンバー。大切な人に素直になれない自分の気持ちを“秋の夕日”や“夏の星”といった普遍的な季節の風景とともに綴り、共感を引き起こすリリックはさすが。
10ランジェリーパブ
タイトルからは想像もつかないメロウな曲調がユニークなミディアム・スロウ。上司の誘いを断りきれず“ランジェリー・パブ”に付き合い、そこで自分の彼女を発見……という恐ろしいシチュエーションを男女両方の目線で描く歌詞にクスっとさせられる。
11闘え!サラリーマン
分厚く力強いブラス・アレンジが暴れまわるお祭りソング。日本を支えるサラリーマンたちの苦悩と“軽めの一杯”の幸せを描く。レゲエのビートを基調にしつつ、倍になったり半分になったりと忙しく展開するテンポ感が楽しい。
12フューチャートラックス
テクノ風の推進力あるサウンドで展開するアップ。人と人との温もりが希薄になり機械に頼りがちな現代を憂う歌詞だが、あえてエレクトロなアレンジに仕上げているあたりに彼らの懐の深さと強烈な皮肉を感じさせる。
13バラード
「君とつくる未来」との両A面として発表された24thシングル。ストリングスを配した壮大なサウンドで綴るタイトルどおりの“バラード”で、愛しい人との別れを情感たっぷりに歌い上げる。ケツメイシの新境地といえるナンバーだ。
14「S.O.S」
“S.O.S S.O.S 応答願います”と悲痛な叫びにも似たスケールの大きな歌詞で地球の平和の願う。4つ打ちのビートにストリングス、そして切ないメロディ・ラインといった彼らの代表曲である「さくら」を思わせる美しいアレンジが秀逸。
15伝えたいこと
ピアノを中心とした美しいアンサンブルが見事なミディアム・ナンバー。“神様がくれた色”を守り平和な世界を、というシンプルかつ究極のメッセージを歌う。喜納昌吉「花〜すべての人の心に花を〜」を思わせる悠久のメロディが心を締め付ける。