ミニ・レビュー
98年に結成された、東京は八王子市出身の4人組が放った前作『ぶっ生き返す』から約6年ぶりとなる5枚目のフル・アルバム。独特のキャッチーさを持つヘヴィ・ロックは健在。ライヴの光景を瞬時に想起させる、勢いに満ちた仕上がりだ。漫画を含む楽曲解説付き特殊パッケージ仕様にも驚愕。
ガイドコメント
マキシマム ザ ホルモンの約6年ぶりとなる5thアルバム。激しくラウドなメタル/ロック・サウンド、ポップなメロディ、強力なシャウト……彼らの魅力が全開で弾けた快作となった。
収録曲
01予襲復讐
7枚目のアルバムのオープニング・ナンバーにしてタイトル・チューン。ナヲのイノセントなヴォーカルで幕を開けたかと思いきや、いきなりのデスヴォイス。ハードコアなサウンドとシンガロングが似合う大きなメロ、中学生的な熱い言葉が絡む壮大な一曲。
02鬱くしきOP〜月の爆撃機〜
「鬱くしき人々のうた」のオープニングとして収録されたTHE BLUE HEARTS「月の爆撃機」のカヴァー。ギター一本でがなるように歌われる“理屈も法律も通さない”のフレーズは、「鬱くしき人々のうた」にさらなる深みも持たせている。
03鬱くしき人々のうた
メロコアっぽいカラッとしたサウンドとヴォーカルで幕を開けるが、歌われている歌詞は“恨み・怨み・憾み どんくらいLOW?”など闇を暴いたかのような言葉。“空耳”的な言葉遊びのように聴こえる歌詞が持つ底知れない深みに驚かされる。
04便所サンダルダンス
ホルモン自身も出演した日本クラフトフーズ「ストライド」CMに起用されたナンバー。思いっきり歪ませたベースのリフを中心に、“滅多に見つけれん!”“ネットでも買えねぇ!”と便所サンダルへの熱い思いをぶちまける。
05中2 ザ ビーム
“弁当は日々チキチキボーン”や苦いカツアゲのエピソードなど、中2の男子にはズッシリと刺さるフレーズが満載のナンバー。イントロのギターの高速リフをはじめ、スラップ全開のベースといったさすがの演奏にも耳を奪われる。
06「F」
キメキメのリズムがクールなアッパーなチューン。楽曲全体を覆うダークなテイストのとおり民族虐殺をはじめとした重厚なテーマを歌っているが、『ドラゴンボール』のナメック星でのエピソードを中心にしており、必要以上には重くしないあたりが“らしい”。
07爪爪爪
「F」との両A面として発表されたシングル。激しく攻撃的なギターのリフを中心に、息をつく暇もないほどに各パートでリズムを変化させて翻弄。中盤にライヴ・テイクを挟むなど、アレンジ面でもさまざまな遊び心が加えられている。
08ロックお礼参り〜3コードでおまえフルボッコ〜
タイトルで宣言されているとおり、3コードで押し切るスタンダードな高速パンク・チューン。技巧派を崇める風潮にある音楽シーンに浴びせる強烈な歌詞が痛快。モッシュやダイブでめちゃくちゃに盛り上がるフロアが目に浮かぶようだ。
09アンビリーバボー!〜スヲミンツ ホケレイロ ミフエホ〜
ちょっぴりファンクっぽいオシャレなビートに意表を突かれる縦ノリ・チューン。タイトルにある意味不明な文字列はファミコン時代の人気ゲーム『コナミワイワイワールド』の有名なパスワードで、最強状態で復活する“アンビリーバ!”な思い出が蘇る。
10え・い・り・あ・ん
イントロの強烈なギターのリフから全力で攻めるハードコア・チューン。“利権に群がる偉そうなスーツ”“向え選挙!!”といった強い言葉で批判をするのは、まさかのWinny。一転して異様にポップなメロディで歌う“STOP WINNY”がどこか笑える。
11my girl
めちゃくちゃゲスい言葉の数々で紡がれるのは、清々しいほどの正直さを前面に押し出した“スケベロード”。80年代王道アメリカン・ロック的なアレンジ&コーラスを施したラストは爆笑もの。ある意味では、究極に純粋なラヴ・ソング。
12メス豚のケツにビンタ (キックも)
比較的シンプルなアレンジと、ドラムのビートを中心とした少なめの音数で突き進む高速チューン。大声で言うのははばかれるほど、“メス豚”への憎悪と怒りをぶちまける。ポップなメロディと語感のいい言葉のチョイスが合わさったラストのサビが耳に残る。
13ビューティー殺シアム
フジテレビ系で放送されていたドキュメンタル・バラエティを彷彿とさせるタイトルが印象的なナンバー。なにかと否定的にとられがちな整形手術を肯定的にとらえた、ホルモン流の女子応援ソング……なのだが、もちろんガーリーな要素は皆無。
14maximum the hormone
セルフ・タイトルを冠したヘヴィロック・チューン。エキゾチックなサウンドを構築し、その上にまるでお経を読んでるかのようなヴォーカルの乗せる前半のアプローチがユニーク。“ロッキンポ”“ぶっ生き返す”など、過去曲を思わせるフレーズも散見。
15恋のスペルマ
突き抜けてポップなメロディでファンにも人気の高いおなじみ“恋の”シリーズ。思わず口ずさんでしまうほどに心地よいメロディにこそ、口に出すには勇気がいる歌詞をガッツリとはめていくあたりがさすがホルモン。ナヲのスペーシーなヴォーカルもキュート。