[Disc 1]〈月の波形〜Coupling&Unreleased works〜〉
01ホーリーダンス
派手さはないが、人なつこいギター・リフと時折跳ねるエレクトロなアクセントが耳を引くミッド。中盤にエレクトロなノイズを導入するも、全体的には何かが起こりそうな闇夜のうごめきといったムードで展開。“ホーリーダンス、放り出して”という修辞も彼ららしい。
02Ame (A)
二つある「Ame」のうち“A”の方。心は雨と同じで気まぐれなんだと言い訳しながらも、これから起こるだろうことへ向かう心づもりをしようとする微妙な機微をユニークな描写で綴る。重すぎない哀愁を背負ったような物憂げなメロディラインがじんわりと胸に響く。
03multiple exposure
壮大なシンセ・サウンドが広がる前半から“生きづらい”と連呼するフックへの展開がユニーク。人生に迷いながらも、悪いことだけでもなさそうと思い始める心の移ろいを綴る。心象風景を巧みに描く山口一郎の詩的センスを味わえる。
04years
僕たちは薄い布だと語り始める文学的な詞世界を、アンビエント色も含んだポスト・ロック/エレクトロニカ作風で描くミディアム・チューン。儚くも美しいファルセットに少しばかりの希望を感じる、閉塞した日常を生きるためメッセージ・ソングか。
05映画 (コンテ 2012/11/16 17:24)
8thシングル「ミュージック」に収録。走り去るバイクや鍵、踏切を通過する鉄道など、日常で鳴る音から流れ込む、文字通り映画のシーンを切り取ったような作風。気弱さを見せるローファイなヴォーカルも、どこか晴れ晴れとしない気持ちとリンクするよう。
06スローモーション
切々と語るヴァースから一転、心の底に溜まった思いを吐露するフックとの抑揚のギャップが魅力。雪がゆっくりと漂い降り積もる速度を自身の心情になぞらえ、行くに行けないもどかしさを歌う。胸の棘を描くような激しいギターやクワイア風のコーラスを加え、演出も多彩。
07もどかしい日々
5分強の楽曲だが、歌が紡がれるのは半分程度。タイトルよろしくどこか突き抜けない薄曇りのようなムードの冒頭部から、日常を生きる悲喜こもごもを凝縮したような文学的な詞世界を展開。後半は歪みを携えたエレクトロなトラックでもどかしさを表現。
08スプーンと汗
エレジーにも似たフォーキーなブルース歌謡色を持ったミディアム・チューン。自らに覆い被さっていた悲しみや嘆きをタバコの煙や汗にたとえた詞も、どこかフォーク/ブルース的な風情が。倦怠と憂鬱をナイーヴな音と歌で描く。
09ネプトゥーヌス
タイトルはローマ神話における海神ネプチューンのこと。暗い部屋を海に、潜り込んだ布団を深海の砂底にたとえ、海神のごとく海を泳ぐ力を得たいともがく。海中から水上を仰ぐ神秘で深い青に包まれた光景を思い浮かべる、ゆっったりとした時の流れを感じる音が印象的だ。
10montage
4thシングル「ルーキー」収録の6分強のインスト。モンタージュの顔合成のような、さまざまな音のアクセントを付け足しながら、グルーヴの渦が巨大化するシンセ・エレクトロな展開で突き進む。モンタージュの完成に驚きを隠せない警告音のようなアウトロで幕。
11ナイトフィッシングイズグッド (Iw Remix)
2008年の2ndアルバム『NIGHT FISHING』のリード曲のメンバーによるリミックス。リリックを大幅にカットし、冷温なディープハウス風サウンドへと変貌させている。より“ナイトフィッシング”を突き詰めたような仕上がりだ。
12ミュージック (Ej Remix)
2013年の8thシングルのメンバーによるリミックス・ヴァージョン。瑞々しさを表現するのに適度なエレクトロな色彩感を敷き詰めたハウス・トラックが、フックの“消えた”のリフレインの余韻を耳に残す。静かなる躍動といった仕上がりだ。
13アイデンティティ (Ks Remix)
2010年リリースの3rdシングルをメンバーがリミックス。オリジナルではサビのシンガロングが印象的だが、このうねるファットなボトムを敷いたヴァージョンではシンガロングを背後に控えさせ、ビートを活かした作風に。ところどころ顔を出す歌が、高揚をジラす。
14GO TO THE FUTURE (2006 ver.)
デビュー・アルバムのタイトル・チューンだが、これは正式リリース前に山口一郎と岩寺基晴による弾き語りデモで、ライヴハウスでの録音。アルバム収録曲とは異なり、クラップも鳴るアコースティック・ギターが映える曲となっている。
[Disc 2]〈月の変容〜Remix works〜〉
01グッドバイ (NEXT WORLD REMIX)
NHK『NHKスペシャル「NEXT WORLD 私たちの未来」』のために制作されたリミックス。エレクトロニカへの変容度を高めたトランシーなシンセの広がりを軸にしたクールな作風は、悲しみを振り切って夜の街を駆け抜けるようなムードも醸し出す。
02Ame (B) (SAKANATRIBExATM version)
2014年の全国ツアーで披露された「Ame(B)-SAKANATRIBE MIX-」のリミックス版。青木孝允とのプロデュースで、メロディでメランコリーを演出した“A”とは異なり、雨の中を走り出しそうな能動性を感じるデジタルな作風へと変質させている。
03ルーキー (Takkyu Ishino Remix)
石野卓球による4thシングル「ルーキー」のリミックス。無機質風のデジタルなアクセントのループをバックに、情熱的なヴォーカルと冷温なトラックが絶妙な距離で並行する。歌詞部の引用は多くはないが、言葉の余韻をもたらす手腕は見事。
04三日月サンセット (FPM EVERLUST MIX)
田中知之と冨田譲のプロダクションを活用したファンタスティック・プラスチック・マシーンによるリミックス。カラフルでファッショナブルなアクセントや“繰り返す”のループによる煽りなど、FPMらしい仕掛けをふんだんに取り込んでいる。
05ラストダンス (YSST Remix 2015:Yoshinori Sunahara)
リミックスを担当したのは石原良徳。かすかにアジアン/チャイニーズな雰囲気を漂わせるメロディラインを、歪んだギターと8ビット風の電子音を重ねたサイケデリックな音色で演出。都会に潜む享楽と闇を遠目から眺めるようなイメージがつきまとう不思議なトラックだ。
06映画 (AOKI takamasa Remix)
ローファイなエフェクトによるヴォーカルとモノローグのような世界観の楽曲をよりアーティスティックな作風へと変化させた、青木孝允によるリミックス・ヴァージョン。切なさが満ちる展開を邪魔しない、過不足ないアレンジワークが秀逸。
07サンプル (cosmic version)
ファンタスティック・プラスチック・マシーンがアレンジに参加した“cosmic version”のリミックス。陰影を強く意識させるようなメランコリックでウェットな展開で、脳内をトリップさせていく。宇宙というより壮大な曼陀羅といった雰囲気もうかがえる。
08さよならはエモーション (Qrion Remix)
東進のCMソングとして話題になった10thシングルのQrionによるリミックス・ヴァージョン。デジタルな装飾を施しながらも、過去を振り返りながらも前を見つめるという叙情的な詞世界の“もどかしさ”を抽出した曲風に。センチメンタルが止めどなく流れる。
09YES NO (AOKI takamasa Remix)
2010年の3rdシングル「アイデンティティ」に収録された青木孝允によるリミックス。煙がゆっくりとゆらぐような、ノスタルジーと何ともいえない無情感とがジワジワと空間に満ちていくポスト・エレクトロやミニマルな作風が魅力だ。
10夜の踊り子 (agraph Remix)
モード学園CMソングとなった2012年の7thシングルをagraphこと牛尾憲輔がリミックス。富士山麓で和装の踊り子が踊るヴィデオのごとく、細やかで彩り鮮やかな色彩感が華やぐ和の美を、エレクトロな音色で壮大に構築している。
11ミュージック (Cornelius Remix)
2013年の8枚目のシングルのリミックス・ヴァージョン。アコースティック・ギターが爪弾かれる音色をベースにオーガニックな空気を持ち込んだのは、コーネリアスこと小山田圭吾。“消えた”のリフレインもどこか美しき情景に溶け込むようだ。
12ネイティブダンサー (rei harakami へっぽこ re-arrange)
2009年の3rdアルバム『シンシロ』のリード曲のリミックス。謙遜して“へっぽこre-arrange”と冠したレイ・ハラカミによる、エレクトロニカR&B風の繊細な音響がこだまするトラックが美味。一日をゆっくりと終わらせてくれそうな音色だ。
[Disc 3]〈DVD〉〈月の景色〜Documentary of “GO TO THE FUTURE(2006 ver.)”〉
01Documentary of “GO TO THE FUTURE (2006 ver.)”
02“GO TO THE FUTURE (2006 ver.)”binaural recording
03years
04スローモーション
05ホーリーダンス
06ユリイカ (minimal demo)