ミニ・レビュー
15年ぶりにソニーへ復帰した歌姫のベスト盤。「ヴィジョン・オブ・ラヴ」や「エモーションズ」、完全復活を印象づけた「ウィ・ビロング・トゥゲザー」など、全米1位を獲得した17曲に新曲「インフィニティ」と日本盤ボーナスで「恋人たちのクリスマス」を収録。レーベルの枠を超えて編まれた内容だ。
ガイドコメント
レーベルの垣根を越えたマライア・キャリーのベスト・アルバム。彼女がこれまでの獲得した18曲の全米No.1ヒットから17曲を収録。書き下ろしの新曲「インフィニティ」のほか、日本盤ボーナス・トラックとして「恋人たちのクリスマス」も収録。
収録曲
01VISION OF LOVE
レット・ローレンスとナラダ・マイケル・ウォルデンがブレイクに貢献した、ホイットニー・ヒューストン路線を狙ったデビュー曲。厳かなムードからゴスペル調マナーで展開するトラックに“7オクターブ”と謳った超ハイトーンが響くミディアムで、その声が一躍話題をさらった。
02LOVE TAKES TIME
すべてを失ってしまった女性の一人でいたくないという嘆きを綴ったポップ・バラード。マライア自身も制作したデモテープからの一曲がウォルター・アファナシエフによって端麗なラヴ・ソングへと昇華。全米3週連続1位を記録した2ndシングル。
03SOMEDAY
自分を手放した男へ向けて“いつか報いがくるわ”と言い放つ恨み節で、終盤のホイッスルヴォイスが強烈。オリジナル・アルバム版に不満があってか、本曲は『MTVアンプラグド』ヴァージョン。全米2週連続1位となった3rdシングル。
04I DON'T WANNA CRY
これ以上一緒に過ごすのはつらすぎると別れを切り出す悲恋ソング。ナラダ・マイケル・ウォルデンと初めて共作したミディアム・バラードで、うなるような情感のこもったヴォーカルワークが印象的。全米2週連続1位となった4thシングル。
05EMOTIONS
「ベスト・オブ・マイ・ライフ」を彷彿とさせるディスコ・ポップにマライアの超絶ハイトーンが加わり、ゴージャスなダンス・チューンとして人気に。C+C ミュージック・ファクトリーのコール&クリヴィリスがリミックスで尽力し、マライアの幅を広げた。全米3週連続1位。
06I'LL BE THERE
『MTVアンプラグド』からシングル・カットされたジャクソン5のカヴァー。MTV側の要望にバック・ヴォーカルのトレイ・ロレンツとともに応えた形で披露されたが、全米2週連続1位の結果に。ロレンツとの信頼によってやわらかな歌唱を披露している。
07DREAMLOVER
メアリー・J.ブライジを手掛けたデイヴ・ホールを迎えたこともあり、ヒップホップ・ソウル的な要素もちらつくダンス・ポップに。エモーションズ「ブラインド・アレー」を拝借&ゴスペルのグルーヴも加えて、マライアの歌声同様に胸が高鳴る演出へと導いている。
08HERO
自身がファンのマライア像に近い曲だと思うと語る聡明なミディアム・バラード。元来はダスティ・ホフマン主演映画主題歌を歌うグロリア・エステファンのために共作したものだが、マライアのスタンダードに。希望や癒しを与えてくれる曲だ。全米4週連続1位。
09FANTASY (BAD BOY FANTASY)
ウータン・クランのO.D.B.を迎えた、全米8週連続1位を記録した95年のシングルのリミックス。トム・トム・クラブ「悪魔のラヴ・ソング」を借りて、ポップとラップの共鳴を企図した野心あふれるナンバーに仕立てている。
10ONE SWEET DAY
絶頂期のボーイズ・II・メンとの邂逅が予想以上の反響を生み、史上最高の全米16週連続1位をなし得たメガヒット。天国へと旅だった愛する人へ永遠の愛を誓うラヴ・ソングで、自身にとってもスペシャルな曲となった。多くの人に歌われるスウィートなバラードだ。
11ALWAYS BE MY BABY
ジャーメイン・デュプリを初めて迎えたミディアム・ポップで、5thアルバム『デイドリーム』からの4thシングル。別れ際に“絶対あなたは戻ってくる”と告げる意地がマライアの強気なヴォーカルにも表われている。全米2週連続1位を記録。
12HONEY
映画『007/ドクター・ノオ』初代ボンド・ガール名を冠したように、PVも同作をモチーフにして話題に。ショーン・パフィ・コムズらを制作に迎え、ヒップホップ的手法も採り入れた甘くセクシーな薫りで包むR&B調だ。6thアルバム『バタフライ』からの1枚目。
13MY ALL
今夜はあなたとの愛と引き替えにすべてを捨てると歌う情熱的なラヴ・ソング。プエルトリコで感化されて書き上げたゆえ、ラテン・モードのメランコリックな悲しきバラードとなっている。ウォルター・アファナシエフとの共作で、全米1位を獲得。
14HEARTBREAKER
7thアルバム『レインボー』からの1stシングルで、「ファンタジー」路線を継承したような曲風が印象的。ステイシー・ラティソウ「ラップでアタック」を借用して、ジェイ・Zが参加。DJトラックとの相性の良さを証明した自身14曲目のナンバーワン・ソングだ。
15WE BELONG TOGETHER
「ワン・スウィート・デイ」に次ぐ史上2位となる全米14週連続1位を記録した紛うことなき名バラードで、ジャーメイン・デュプリ、LAリードらアイランド期の精鋭が低迷していたマライアを再びトップへのしあげた。失恋の痛手を綴る詞には、リアルな面影も。
16DON'T FORGET ABOUT US
ジャーメイン・デュプリ、ブライアン・マイケル・コックスら錚々たる面子と制作し、L.A.リードが参画した10thアルバム『MIMI』からのシングル第5弾。ビートの効いたR&Bに表情豊かな歌唱が乗るミディアム・バラードだ。
17TOUCH MY BODY
ハミングのように弾むチャーミングな歌唱に、レコーディングの楽しさが表われているよう。キュートなR&Bだが、歌詞は私に触れて悦しまない? という際どくセクシーなもの。ザ・ドリームとトリッキー・スチュワートが手を貸し、プレスリーのシングル1位数を抜いた曲。
18ALL I WANT FOR CHRISTMAS IS YOU
クリスマス・シーズンには欠かせない曲としておなじみ。94年のドラマ『29歳のクリスマス』主題歌として話題となったこともあり、空前の大ヒットに。オールディーズ・ポップスの要素を活かした、来日時には必ず歌われる名スタンダードだ。
19INFINITY
『 1 インフィニティ』に加えられた2015年作。エリック・ハドソンとともに、開放感たっぷりの清々しいまでのスケールの大きなR&Bを構築。終盤にはロングトーンやホイッスルヴォイスも披露し、女王凱旋といった風だ。ただ内容は決別を描いた苦々しいもの。