ミニ・レビュー
名曲「愛の讃歌」に松岡が詞を付けた「青空の破片」をはじめ、5、7、9曲目といったシングルを含む11枚目のオリジナル・アルバム。ロック・バンドとしてはベテランといってもいい彼らだが、問題提起と葛藤を孕んだ繊細な楽曲群を聴いていると、今もなお進化し続けていることを感じさせる。
ガイドコメント
前作『We』より1年7ヵ月ぶりとなるアルバム。「stain」「君と月の光」「星」などのシングル曲に加え、それぞれのメンバーが作曲を手がけたナンバーも多数収録。ヴァラエティ豊かな作品に仕上がっている。
収録曲
01燃え尽きる太陽
黒柳(b)の手による強靱なメロディ、いきなりサビから始まる松岡の迫力のあるヴォーカルが衝撃を与える。疾走感にあふれたタイトな演奏とリリックは、不安にまみれたリアルな現実を浮き彫りにする。存在感のあるロック・チューンだ。
02モラトリアム人間
ユーモラスでシニカルな松岡のリリックは、SOPHIAの武器のひとつ。ノリのいいギターリフや都(key)のポップなメロディで紛れてはいるが、ここでもちょっとした毒をスパイスしつつ、社会に対しての想いやいらだちをぶつけている。
03bell
誰の心にも始まりの“bell”は鳴る。恋を失くし、また新たな明日に向かうために……。鍵盤の音が柔らかなフレーズを刻む静かなAメロから一転、サビでは熱く想いを炸裂させる。切なさと前向きさがクロスしたロック・チューン。
04easy street story
クラップとゴキゲンにリズムを刻むギター、そして勢いのあるグリッサンドが、楽曲の世界に引っ張り込んでくれる。青春のセンチメンタリズムをちりばめ、心地よい青臭さを残したポジティヴ・ロック・チューンだ。作曲は豊田(g)によるもの。
05君と月の光
なんのギミックもないまっすぐなヴォーカルが心を打つ。6分を超えるスケール感のあるバラードに凝縮された松岡の人生観。独りじゃ生きていけない……それはSOPHIAの音楽に向き合う姿勢にもつながり、大きな説得力を持っている。
06青空の破片
34thシングルは、エディット・ピアフ「愛の賛歌」のメロディに松岡充がオリジナルの歌詞をつけたバラード。愛と生を感じさせる歌詞が印象的で、TBS系ドラマ『ひまわり〜夏目雅子 27年の生涯と母の愛〜』挿入歌の起用も納得。
07stain
2006年3月リリースのアルバム『We』からのシングル・カット曲。ピアノとドラムスで叩き出すスローなロック・サウンドのなかで、生まれ育った町への思いを歌い上げている。松岡充の低めのシャウトが、ドーンと胸に響いてくるナンバーだ。
08in the future
イントロのピアノが未来に差し込む光のように穏やかに響く。見えない明日に向かう不安も期待もすべてをひっくるめた、そんなメッセージがそっと背中を押してくれる。ポップだが胸に何かがこみ上げてくる、キラメキのあるアッパー・チューン。
09星
ファンキーなヴァースとストレートな8ビートのサビが特色の、めまぐるしいリズムの変化がカラフルなポップ・チューン。意外にもブラック・ミュージックを意識したかのような、松岡充のファンキーでソウルフルな歌い方がはまっている。
10-Sen-
歌詞の内容からもわかるように、タイトルの「-Sen-」は“戦”の意味。SOPHIAではめずらしくアコギをフィーチャーした、彼らならではの平和への想いや反戦メッセージが込められた、穏やかだが芯の強さを持ったナンバーだ。