ミニ・レビュー
無愛想で、気まぐれなアルバムだなあと。気ままに寝て起きて、歌いたくなったら歌ってる感じ。中身は君のことや、世の中のことや、自分のことや……。で、けっこうトンガッテたりして。それをだらだらとぶっきらぼうに歌ってしまうとこが、彼らしくて好感。
収録曲
01674
ソロ・デビュー作『29』のオープニング曲。ダメな自分とその“ムナシさ”をテーマにしたアコギ主体の弾き語り風ナンバー。ウッドブロックらしきチープな打楽器音とコード変化のほとんどないサビ・メロディが特徴的。
02ルート2
ファンキーなロック・ナンバー。土曜の夜に“オンボロ”の愛車を乗り回すという奥田民生らしいカー・ソング。山崎まさよしがフェイヴァリットに挙げる1曲で、2人のユニット“奥田山崎”においてもライヴなどで披露している。
03ハネムーン
ミディアム・スローのヘヴィ・ロック・ナンバー。“あなたをこの手で殺したい”ほどの愛情をテーマにしたラブ・ソング。スティーヴ・ジョーダン(ドラム)らが醸し出す“タメ”のグルーヴと泣きのギター・ソロが印象的だ。
04息子 (アルバム・ヴァージョン)
05これは歌だ
ジャム・セッションのようなラフなイントロで始まる重めのロック。“イエ〜イ”や“ばーばばぶーばびーばーべぶー”など、デタラメ色の濃い歌詞が魅力。ワウを駆使したソロや逆回転フレーズを披露するギターも聴きどころだ。
06女になりたい
シャッフル基調のチャーミングな1曲。歌い方も声質もまるで別人を思わせるヴォーカルで、随所で聴かれる力の抜けた歌いまわしが実にユーモラスだ。女性に生まれ変わった“みつお”へ語りかける歌詞もユニーク。
07愛する人よ
シングル「愛のために」のカップリング曲。きわめてキャッチーなサビとタイトにグルーヴする8ビート・リズムが魅力のポップ・ロック・ナンバー。奥田民生がギター、ベース、シンセを一手に演奏している点にも注目。
0830才
機械音のSEで始まるコンテンポラリー・ナンバー。左右のチャンネルを往来するエレピ音や右側に偏ったミックス・バランス、オクターヴ・ユニゾンのヴォーカル、ポエトリー・リーディングなど、アイディア満載の1曲。
09ビーフ
2ndシングル「息子」にカップリングとして収録の軽快なロックンロール・ナンバー。神戸牛を若い女性に見立てた(またはその逆の)ユーモラスな歌詞と、ブラス・セクションを採り入れたにぎやかなサウンドが特徴的。
10愛のために
記念すべきソロ・デビュー・シングルでありミリオン・ヒットにもなった民生の代表曲。ソロになり珍しくポップでとても親しみやすくなっているが、全体的に民生の世界観が独特のひねりを通して感じ取れるだろう。
11人間
人間の記憶についての素朴な思いをストレートに綴ったスロー・バラード。微妙に陰のある物憂げな歌い方が魅力で、奥田民生のヴォーカリストとしての懐の深さが感じられる。楽曲に華を添えるブラス・サウンドが実に温かい。
12奥田民生愛のテーマ
ソロ・デビュー作『29』を締めくくるシャッフル基調のハードなギター・ロック。破壊的な音色のドラムを中心に据え、ギターとヴォーカルを左右に振り分けた昔風のミックスが特徴的。全楽器を奥田民生が演奏している。