ミニ・レビュー
これは骨の髄までロックである。ジャケット問題で発売が遅れたがルーズで太いだけでなく、ラフな心根がどんよりしたり唸ったりするところが素晴らしいのだ。隠しトラックもえらいシブ好みのマニアックなアレンジ。レニ・クラより奥田のがグッとくる。
収録曲
01人間2
1stアルバム『29』に収録されている「人間」の続編。バラード調の前作から一転して、ヘヴィなギターやドラムを前面に出したロック・ナンバーに仕上がっている。力強いシャウトなど、奥田民生のロック・ヴォーカルを堪能できる。
02103
軽快な8ビート・ロック。記号を用いた歌詞や意図的に歪ませたドラムなどの節度ある遊び心と、奥田民生らしい適度にラフなヴォーカルが魅力的。タイトルの“103”は曲中に“ペ”を言った回数のようだ。
03トリコになりました
バンジョーを用いた2ビートのサビが印象的なアップ・テンポ・ナンバー。聴き手の気を引くコード進行から微妙にエロティックな歌詞、お茶目なバック・コーラス、曲終わりのベースの1音まで、とことん楽しませる1曲。
04コーヒー
3rdシングル曲。元ジェリーフィッシュのアンディ・スターマーとの共作ナンバーで、ポップな中に絶妙な陰りを感じさせる洋楽的コード・ワークが特徴的。松浦善博(元ツイスト)の印象的なスライド・ギターにも注目だ。
05たばこのみ
奥田民生らしい力の抜けたミディアム・ロック。リバーブの強めにかかったヴォーカルとポール・マッカートニーのような存在感のあるベース・ラインが特徴的。“たばこのうた”として、のちに「E」の歌詞に登場する。
06ヘイ!マウンテン
オールド・ジャズ〜ジャグ風のチャーミングなポップ・ナンバー。ファルセットによる“ウフフ”や“やっちゃったのね〜”などのバック・コーラス、中川英二郎の色気たっぷりのトロンボーンなど、ユーモアあふれる1曲。
07つくば山
動物の鳴き声などのSEで始まる長閑な1曲。ビールを飲みながらのんびりする歌で、“やー”や“ばばばばー”などの気の抜けたような歌い方や、リズム・チェンジするギター・ソロなど、奥田民生らしい遊び心に満ちている。
08人の息子
1stアルバム『29』に収録されている「息子」の続編的ハード・ロック・ナンバー。若者への応援ソングではあるが、その他力本願な内容が実にユニーク。声量のある奥田民生の力強いヴォーカルが聴きどころ。
09MADONNA de R.
マイナー基調の軽快なGS風ロック・ナンバー。“我々の憧れ”でありながらも“男運が悪いマドンナ”をテーマにしたひねくれた歌。エコーをやや強調したヴォーカルやバック・コーラスの絶叫など、適度な遊び心が魅力。
10悩んで学んで
4枚目のシングルとしてリリースされた分厚いロック・ナンバー。シンプルかつ印象的なギターで始まり、グルーヴィなAメロを経てヘヴィなサビに至る緩急のある曲構成が見事。元ジェリーフィッシュのアンディ・スターマーとのコラボ作。
11厳しいので有る
6/8拍子基調のマイナー曲。ダラリとした印象の強い奥田民生のイメージを覆すような圧倒的な歌唱力が魅力。時間に追われて気弱になっている自分を鼓舞する歌詞からは、彼のアーティスティックな一面が垣間見られる。