ミニ・レビュー
エレキとバンド・サウンドを融合させた「真夏のダンスホール」、ロカビリー調の「3人のブギーマン」など新しいエッセンスを注入しつつ、重厚でエッジの利いた7188流ロックという基盤も今まで以上に確立させている6枚目のアルバム。平衡感覚を麻痺させるヴォーカルに身を委ねると、妙な心地良さが体を包む。
ガイドコメント
BMG JAPAN移籍第1弾アルバムとなる、通算6作目。2度にわたるアメリカ・ツアーを通してより大きくなった彼女たちの、タイトでエネルギッシュなロックが展開されている。バンドの好調ぶりが伝わる快作だ。
収録曲
01あしのけ
“突然デートに誘われたけど、足のムダ毛が気になる〜”と真剣に悩む女心を歌ったファンキー・チューン。切迫感を漂わせる高速テンポに乗せ、ノマアキコの友達の実体験を綴っている。“あしのけ”を恨む詞は、一度聴くと忘れられない。
02脳内トラベラー
初挑戦した米国ツアーの影響を受けたという激烈パンク・チューン。失恋を忘れたい女の子が、世界旅行を妄想。ジャマイカ、セーヌ川、マチュピチュと、次々と世界の風景を切り取っていく愛嬌のある詞も楽しい。
03真夏のダンスホール
移籍第1弾シングルとなった、どことなく昭和歌謡の香りを漂わせたサーフ・ロック。真夏のダンスホールで繰り広げられる出会いを妄想するという、悲しき仕事人間のためのサマー・チューンだ。エレキとコーラス・ワークが魅力。
043人のブギーマン
會田茂一が編曲を担当した、シュールで艶っぽいポップ・ナンバー。パンクやロカビリー、歌謡曲とさまざまな音の要素を取り入れ、変拍子と転調でクルクルと表情を変える演奏が巧み。妖しく濃密な夜のムードを作る歌唱もセクシーに響く。
05世界の車窓から
ギターの分厚く歪んだ音と力強いドラミングが快活に響くミディアム・ロック。列車に乗り見知らぬ街へ旅立つ主人公の心を、不協和音や緩急を取り入れたメロディで巧みに描いている。初のアメリカ・ツアーの思い出を綴った曲。
06眠りの浅瀬
シンプルでストレートなのに、線が太いサウンドが印象的なミディアム・ギター・ロック。毛布にくるまって軽い眠気に包まれながら、ぼんやりとこれからの2人のことを考える詞が素朴で温かい。會田茂一が編曲に参加している。
07ロックスターになったなら
演歌の要素とロックンロールのリズムを融合した、演歌調ロックンロール。キュートなのにひねくれたノマアキコの歌声がコブシを効かせ、“ロックスターになったなら、家族と愛人を連れてワールドツアー”とでかい夢を元気に叫んでいる。
08チェーン
低くうなりをあげるギター、ドラム、ベースで聴かせる五拍子、六拍子のナンバー。民謡のように小節を効かせたノマアキコの気だるい歌声が、曲全体に謎めいた雰囲気をもたらしている。リズムが刻々と変わる凝った演奏は、彼女たちならでは。
09アイムラッキーガール
ズチャッズチャという独特なビートが打ち鳴らされる中で、個性的なヴォーカルで展開していく歌謡ロック・チューン。おバカなふりして生きている女の子のしたたかさや野望が、ユウとアッコの絡み合う声で表現されていく。
10マンホール
彼女たちには珍しい、ツイン・ヴォーカルの疾走調マシンガン・ガーリー・ロック。超高音域まで一気に駆け上る、キュートで凄みすら帯びたヴォーカルをたっぷりと聴かせてくれる。構成力に富んだ図抜けた演奏を披露している一曲。
11小さな爪跡
パンク、ロカビリー、テクノ、生音、デジタル音をジャンルレスに取り入れた、勢いたっぷりのドラムン・ロック。“どうせ死ぬなら、世界のどこかに爪跡を残したい”という感情を直情的な詞で綴っている。キレのある演奏もかっこいい。
12青い夜
家族を簡単に殺してしまう現代人に抱く違和感を、ストレートな言葉で綴ったミディアム・ギター・ロック。濃密で力強いギターとドラムの音が、心中に渦巻く嫌悪感を描いている。激しい感情を抑えたような歌唱に引き込まれる。
13えそらごと
“まわりくどい、らちあかない……”と愚痴のような詞がユニークなギター・ロック。気だるそうに不満を並べた後“でも信じるものがあるから眩い世界”と歌う明るいヴォーカルとともに、うねりながらヒート・アップするベース音が面白い。