ミニ・レビュー
国民的アイドルという座を手にしても、この5人組は“安定”とは程遠い位置に立つ。1年9ヵ月ぶりのセカンド・アルバムは、驚くほどアグレッシブでアバンギャルド、重厚。いわゆるアイドル・ソングの域を超えたとも、その幅を広げたともいえる。2013年春現在、最先端の音のひとつと呼びたい。
ガイドコメント
前作『バトル アンド ロマンス』に続く、2013年4月10日リリースの2ndアルバム。タイトルは“5次元”という意味で、昨年末『紅白』にも出場し、さらなる勢いでネクストステージへ加速し続けるももクロの進化がうかがえる勝負作だ。
収録曲
01Neo STARGATE
ももいろクローバーZの2013年4月発表の2ndアルバム『5TH DIMENSION』冒頭を飾る、混声合唱団、東響コーラスの厳かなオープニングが迫力のロック・チューン。疾走感あふれるヴォーカルとオーケストラ調のサウンドが織りなすスペクタクルは感動的だ。
02仮想ディストピア
激しいダンスを繰り広げるパフォーマンスが持ち味のももクロならではの説得力がある、何かを一生懸命にやっている人々へ向けたパワフルなロック・チューン。9人の少女によるひまわりキッズの無垢なコーラスが花を添えている。
03猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」
「Neo STARGATE」同様、混声合唱団、東響コーラスの厳かなコーラスが入った壮大なロック・ナンバー。マーティ・フリードマンのエモーショナルなギターと疾走感あふれるヴォーカルに興奮必至! 前山田健一が作詞作曲、編曲を担当している。
045 The POWER
いとうせいこうが作詞を、MUROとSUIが作編曲を手がけた、ヒップホップの要素をふんだんに取り入れたポップ・チューン。有安杏果の男気あふれる頼もしいラップ、玉井詩織の淡々としたキュートなラップなど、それぞれのラップに特徴があっておもしろい。
05労働讃歌
作詞を大槻ケンヂが、作曲をザ・ゴー!チームのイアン・パートンが手がけたパワフルなロック・チューン。6thシングルとして発表後、たびたびテレビ番組などのSEで使われる機会の多いサウンドは、インパクト大。“働こう”というメッセージはとても強い。
06ゲッダーン!
オーケー・ゴーのダミアン・クーラッシュが作編曲した、音数の少ない4つ打ちのダンス・チューン。5人のコーラスを効果的に生かしたポップなメロディとどこかファニーなベース・ラインが、かっこよさと愛くるしさを生み出している。
07Z女戦争
ティカ・αことやくしまるえつこが作詞作曲を、近藤研二(栗コーダーカルテットほか)が編曲を担当した、ドラマティックな展開のポップ・チューン。80年代の特撮やアイドル・ソングのフレイヴァ漂うメロディをちりばめている。
08月と銀紙飛行船
作曲と編曲、メロトロンとコーラスで永井ルイが参加した、大らかでシンフォニックなポップ・ソング。間奏時のメンバーそれぞれの台詞も含め、“信じる気持ち”をテーマにした、ポジティヴなメッセージが詰まった感動のナンバーに仕上がっている。
09BIRTHφBIRTH- BIRTH リ BIRTH -
エレクトロ&サイバーなサウンドとヴォコーダーを使ったヴォーカルの、緊張感あふれるダンス・チューン。転調してからの“扉が開いた”感が爽快! NARASAKI(coaltar of the deepers、特撮)が作編曲を手がけている。
10上球物語-Carpe diem-
山下智久の「抱いてセニョリータ」の作詞で知られるzoppによる、“太陽人”“脱太陽”などユーモラスな歌詞をちりばめたロック・チューン。ラップのように言葉を連ねる部分が多い、目まぐるしい展開の楽曲だ。随所に入るホーンの音色がゴージャス。
11宙飛ぶ!お座敷列車
ビッグバンド風のにぎやかなホーンの音色が楽しい、ストーリー仕立てのパワフルなコミック・ソング。元気いっぱいの5人のヴォーカルで綴られる、奇想天外で楽しいファンタジーの歌詞世界に引き込まれること間違いなし。
12サラバ、愛しき悲しみたちよ
畳み掛けるような緊張感に満ちたヴォーカルではじまる、ファンキーでデジタルなロック・チューン。作編曲を手がけた布袋寅泰のエネルギッシュなギターの音色と5人のたくましい歌声が、絶妙にマッチ。否応なしにテンションが上がる一曲。
13灰とダイヤモンド
アヴァンギャルドな展開の楽曲を多く持つももクロには珍しい、前山田健一が作曲を手がけた、王道のバラード(ラストでオペラ調になるところ以外は)。美しいストリングスの音色と少し背伸びしたような伸びやかな歌声がイイ味を出している。