ミニ・レビュー
MOOMINのアルバムはニューミュージック&洋楽カヴァ-。洋邦の名曲を力むことなく、軽やかに自分のものにしている。GAOの(8)をはじめ、優れた解釈力が光る。ラストの「山賊の唄」はキャンプファイアーなどで歌われるあの曲だが、こんなに深い歌だったとは。
ガイドコメント
スウィートなヴォーカルを聴かせてくれるジャパニーズ・レゲエ・シンガーの第一人者、MOOMINのデビュー10周年を記念したカヴァー・アルバム。収録曲は本人がカラオケで歌っていたという楽曲ばかりをセレクト。
収録曲
01春夏秋冬
泉谷しげるのアーティスト・キャリアを代表する傑作フォーク・チューンを、大胆な解釈で蘇らせた真夏のレゲエ・チューン。原曲では殺伐としていた日本の風景が、トロピカルなサウンドに大変身だ。
02ビューティフル・ネーム
70年代後半に大人気を博したグループ、ゴダイゴの大ヒット曲をカヴァー。原曲にもレゲエ調のリズムを採り入れていたため、このレゲエ・ヴァージョンも違和感なく聴くことができる。MOOMINらしい涼しげな仕上がりが効果的なナンバー。
03リバーサイド ホテル
80年代の井上陽水を代表する大ヒット・ソングを、レゲエ・アレンジでカヴァー。元来原曲のゆるやかなメロディ・ラインやリズムにはレゲエと相性の良い要素が見受けられたので、妙にハマッたヴァージョンとして昇華した。ナイス・カヴァーだ。
04悲しみにさよなら (feat.RYO the SKYWALKER)
玉置浩二率いる安全地帯の85年の大ヒット曲のカヴァー。RYO the SKYWALKERによる男臭いラップをフィーチャーし、MOOMINのスウィートなヴォーカルとの対比が絶妙な仕上がりとなっている。
05ALISON
エルヴィス・コステロの記念すべきデビュー・アルバム『マイ・エイム・イズ・トゥルー』(1977年)に収録されていた傑作バラードを、MOOMIN流にスウィートなレゲエ・アレンジでカヴァー。ロックやレゲエなどジャンルに関係なく、際立つメロディが素晴らしい……やはり名曲だ。
06MODERN GIRL (with YOYO-C)
コートニー・メロディの代表的ナンバーをカヴァー。YOYO-Cによるラップをフィーチャーし、独自の日本語解釈でオリジナリティあふれる仕上がりとなっている。主役のMOOMINを喰ってしまうかのような存在感で迫る。
07WAITING IN VAIN
“キング・オブ・レゲエ”ボブ・マーリィの1977年の名盤『エクソダス』に収録の傑作ナンバーのカヴァー。レゲエ界の偉大な巨人に対するリスペクトにあふれた仕上がりに、MOOMINらしいスパイスをしっかりと効かせている。
08サヨナラ
個性派女性シンガー・ソングライター、GAOの代表曲をレゲエ調でカヴァー。ガラリと雰囲気が変わったが、曲本来の持つ耳あたりの良さを殺すことなく、スウィートで哀愁味あふれるヴァージョンに仕上げている。
09WHY DID YOU LEAVE (feat.CHUCK FENDER)
CHUCK FENDERによるゴキゲンなラップをフィーチャーし、ヘプトーンズなどで知られるレゲエ・クラシックをMOOMIN流にカヴァー。主役以上の存在感で暴れまくるCHUCK FENDERのハッスルぶりが最高の聴きどころだ。
10夏をあきらめて
研ナオコのヒット曲としても知られるサザンオールスターズの82年のナンバー。サンバ調のアレンジでのカヴァーで、夏らしいムードは原曲をしのぐほどだ。灼熱の太陽が照りつけるビーチで聴きたい。
11サボテンの花
財津和夫率いるバンド、チューリップが70年代に発表し、90年代にドラマ主題歌としてリヴァイヴァル・ヒットしたことでも知られるナンバー。レゲエにアレンジしても、メロディの良さや、全体が醸し出す曲のムードは全然変わらない。こういうのを名曲というのだろう。
12山賊の唄
60年代に生まれ、長年にわたり歌い継がれてきたこの有名な伝承歌を、まさかMOOMINがカヴァーするとは! 彼の意外なルーツが確認できるとともに、こうした日本の伝承歌もレゲエも、民族音楽という意味ではなんら変わらないことを再認識させる土着的な仕上がりだ。