ミニ・レビュー
バークリー音楽院で学んだ女性シンガー・ソングライターが米国で録音した作品。ジャズ風味のポップスにオーガニック・ソウル的なプロダクションを施し、女性MCによる英語のラップもフィーチャー。歌唱力は世界的に見てもトップ・レベルで、すでに貫禄が漂う。
ガイドコメント
平原綾香の姉であり、サックス・プレイヤーの父のもと、音楽のあふれる環境で育ったaikaのデビュー・アルバム。ジャズ、フォーク、R&Bなどをベースに、等身大の“愛”を綴っている。
収録曲
01愛の庭
あたたかい音色に伸びやかでほんのり影のあるaikaのヴォーカルが映える、ジャジィなピアノも印象的なミディアム・ナンバー。マイナー・コードだがキャッチーなサビの繰り返しが、曲を聴き終えても頭の中をリフレインする。
02愛を (feat.EJ LABB)
静かなブレイクビーツの打ち込みトラックに、aikaの日本語詞とEJ LABBによる英語ラップが交互にのったユニークな構成。「あなたへの愛」という共通のテーマを、それぞれ異なる観点から描いていて興味深いナンバー。
03オレンジ・ムーン
ナチュラルで耳あたりはライトだが、どこか芯の通ったヴォーカルが、オーガニックな音色に絶妙にマッチ。サビに近づくにつれてだんだんと展開していくアレンジがドラマティックな、やさしさあふれるミディアム・ナンバー。
04ウィル・タイム・ヒール・マイ・ソロウ
ブルージィなピアノのバッキングに、凛とした強さのあるaikaのヴォーカルが映える、シンプルだがドラマティックな印象を持ったバラード。ところどころに見え隠れする日本的なメロディが、斬新で耳に残る曲だ。
05ユーア・ゴーン
アコースティック・ギターの音色がやさしいトラックに低音ヴォーカルが響く、フォーキーなナンバー。サビ・パートの「ユーア・ゴーン」の繰り返しが伸びやかで心地よく、aikaの確かな歌唱力が感じられる。
06ライク・ウィ・ユース・トゥ
ジャジィかつブルージィで、オーガニックなバッキングにのる表情豊かなaikaのヴォーカルは、恋人たちの幸せな様子を歌う愛にあふれた詞と同様、幸せな気持ちにさせてくれる。まったりとした味わいの深いミディアム・ナンバー。
07イマジン
ジョン・レノンの名曲のカヴァー。ブルージィなピアノの音色が印象的な、シンプルでてらいのないバッキング。そこへ透明感とドラマ性をもったヴォーカルが存在感を示し、新たな「イマジン」像を作り上げている。
08メモリーズ
キャッチーなサビが耳に残る、アップ・テンポのナンバー。さわやかなアコースティック・ギターに琴線に触れるせつないメロディが乗り、「想い出」をテーマに描かれた日本語と英語の入り混じった詞が心に響く。
09クワイエット
「あなたがいなくなってしまったあとの静けさ」を歌った、せつない詞が胸を打つミディアム・ナンバー。メロディも美しく、シンプルで抑え目のバッキングに、憂いをおびたヴォーカルが映えて、せつなさをいっそう高めている。
10スロー・バーン
穏やかにはじまる、きれいなメロディのバラード。「スロー・バーン」というタイトルのとおり、後半になるに連れてバッキングもヴォリュームを増していくなかで、伸びやかなヴォーカルが楽曲を盛り上げていく。
11ファウンド・ザ・ラヴ・オブ・ライフ
ナチュラルなトラックに乗る、耳あたりのやさしいメロディと存在感あるヴォーカルが印象的。「あなたを決して失いたくない」という内容を軸に、メタファーを多用した日本語詞と直接的な表現の英語詞によって、交互に歌う構成がおもしろい。
12Yakitori
ピアノのみのシンプルなトラックをバックに、どこまでも伸びていきそうなドラマティックなヴォーカルをたっぷり聴かせる、ジャジィなナンバー。やさしい歌声に包まれながら、美しい日本語を使った詞世界に引き込まれる1曲。
13タイムズ・ア・ヒーラー
情感たっぷりのソウルフルなヴォーカルが、ピアノ、ギター、ベース、ドラムというシンプルな構成のバック・トラックに映える、ブルージィなナンバー。「時はすべてを癒す」と歌う声があたたかく心に染みて、癒される。
14ビリーフ
アメリカでのドラッグの蔓延にインスパイアされてできた曲。生音ギターとゆるいブレイクビーツの打ち込みが絡み合う、浮遊感あるトラックに乗る強い意志を持ったヴォーカルが、人間の脆さや信念の大切さを伝えている。