ミニ・レビュー
ヒップホップでもR&BでもJ-ROCKでもない、独自の道を爆走する奇才集団のサード・アルバムは、80'sシンセ・ポップから激しいハード・ロックまで、これまで以上にゴツイ音楽的冒険が詰まった意欲作。音楽は娯楽だがアートでもあれと願う人は必ず聴くべきだ。
ガイドコメント
Diggy-MO'の高速弾丸ラップと抜群のメロディ・フロウ、Bro.Hiの驚異的ヒューマンビートボックス、Shinnosukeのダンサブルなトラックと、次世代超実力派アップカマー3人による渾身の3rdアルバム。
収録曲
01Deep Space (Intro)
3rdアルバム『ALIVE』のオープニングを飾るインストゥルメンタル・トラック。冒険という名の海を船が進水していくような潔さを持った佇まいで、ストリングスとホーンをかいくぐって鳴らされるギターが勇ましい。
02ALIVE
とにかく“ピョッピョッピョッピョッピョーリティ”という、Diggy-Mo'のオノマトペ風なフックが耳について離れないディスコ・チューン。ダンス・クラシックスの匂いを感じるフレーズが随所に配色され、即時にハイな気分に。
03TOKYO通信〜Urbs Communication〜
日本テレビ系『スポーツうるぐす』のオープニング曲に使用された、近未来的なイメージのクロスオーヴァー/ラップ・ミュージック。クールなサウンドと2MCによるラップが、新しいシーンの到来を予感させる。
04Pop n' Top
ラジオ放送風のイントロから、ファンキーなロックの要素をともなったタイトなビートが走る。全編英詞でラジオDJの語り風に滑るDiggy-MO'のラップ、効果的に組み込まれるBro.Hiのヒューマン・ビートボックスなど、構成力に長けたナンバー。
05Dressing Room (Interlude)
3rdアルバム『ALIVE』に収録の、Shinnosukeによる約30秒のインタールード・トラック。喧騒がかすかに聞こえるサウンド・エフェクトは、次曲「Catwalk」へのジョイントと考えると、華やかな舞台へ向かう前の楽屋を描き出した風だ。
06Catwalk
Lori Fineが演じるスターと恋に落ちる経緯を、コミカルなフレーズを盛り込み描く。カメラのシャッター音はデュラン・デュラン「Girls on Film」を、Bro.Hiのヴァースにはハード・ロックを想起させるアイテムが盛り込まれた、クールながら浮き沈みあるナンバー。
07DD弾 (改)
進軍ラッパで幕開け、ゲームオーバー音(ショパン「葬送行進曲」のモチーフ)で終了。Shinnosukeのセンスが充分に詰まったダンス・クラブ・チューン。攻勢的なbro.HiとDiggy-MO'の掛け合いをDJ Massのエッジの効いたカットでより前ノリに。
08バナナスプリット
大仰なシンセとトランス風サウンドが核をなす、7分に及ぶクルージング・ハウス・チューン。空間を漂うような派手やかなヴァースから一気にシフト・チェンジし、重心を低くして滑るかのごとく闇夜を駆け抜けるような高速フックがクール!
09SHUFFLE DAYZ
クールに爪弾かれるビートやスクラッチ、抑えを利かせあくまでも低温のムードを崩さないヴァース。そこから照りあるホーン・セクションを加えてジャイヴに展開する、シャッフル・リズムが映えるアダルトなディスコ・チューン。
10A Spacious Floor
アンダーグラウンドなビートに導かれた、アシッドな感覚をもたらすヒップホップ・ハウス・チューン。Bro.Hiのライミングを軸とした作風で、ソウルやブラックのテイストを覗かせたサウンドをシンセの電子音で現代風にまとめあげている。
11Sick
雨音のSEが被さり金子隆博のファンキーなサックスが男臭く鳴り響く。ポエトリー・リーディング風のライミングが展開するヴァースに、奔放なピアノが走るフック。両者が鏡が割れるような効果音で結びつけられた、組曲風ナンバー。
12FIRE RHYMER
風を切り裂き景色を飛ばしていくような高速ナンバー。鋭利でデジタルなビートが最速のBPMを叩き出し、理屈なしに身体を揺るがしトランスさせていく硬派なロック。リズム・セクションとスクラッチの重なりがさらに昂揚感をもたらす。
13イルカ
瑞々しさが広がるスタイリッシュなサマー・チューン。“Quick, Quick, Quick, Quick Turn”がイルカの鳴き声に聴こえてしまうフックなど、魅力を存分に組み込み、爽やかさにこだわったラブ・ソング。
14Morning (Outro)
アルバム『ALIVE』のラストを飾る、インストゥルメンタル・アウトロ。水面へ伝う朝露のように清らかなピアノ、緩やかに頬を撫でる風のように爽やかなアコギの爪弾き。リラクゼーション気分バッチリなナンバーだ。