ミニ・レビュー
これまでのキャリアを総括した2枚組ベスト。タイトルどおりシングル曲を網羅したもので、初回盤にはDVDも付いている。特に特徴のない青春応援歌といった印象は変わらないが、多くの人の胸を打ってきたキモはこの爽やかさなんだろうと思う。
ガイドコメント
2006年9月発表のベスト盤。デビュー当初の“路上で歌ってます”系の楽曲から、しだいに良質なポップスへと進化していった2人の軌跡を辿る充実の2枚組。圧倒的な歌唱力と質の高い楽曲群には改めて感心させられる。
収録曲
[Disc 1]
01君という名の翼
テレビ朝日系ドラマ『レガッタ』主題歌となった13thシングル。アップ・テンポな曲でも、コブクロらしいハーモニーが心地良く響き、サビへ向かって盛り上がるアレンジも感動的。こちらが照れるほどの素直なポジティヴ・ソングだ。
02あなたへと続く道
別れの哀しみや会えない切なさを歌った、美しいバラード。ファンタジー『椿山課長の七日間』の世界観と重なっていることから、この映画の主題歌となった。「涙の海一人漕ぎ渡る」のフレーズは、感涙モノ!
03ここにしか咲かない花
二人の織りなすハーモニーは絶妙で、このように落ち着いた雰囲気のバラード曲でこそ、その真価を発揮する。若者に似合わない落ち着きと深みを歌に封じ込め、同時に熱い感情も表わすことができるのは、ひたむきさゆえか。
04毎朝、ボクの横にいて。 (Sweet drip mix)
アコギ1本で鳴らされるイントロが、まるで自分の隣で歌ってくれているような臨場感を醸し出す。「君は毎朝、ボクの横にいて」と、照れてしまいそうなほどストレートなメッセージに、胸がキュンとなる。しっとりとしていながらも爽やかなサウンドが心地よく響くナンバーだ。
05Million Films
たわいのない日々の生活にこそ幸せがある。だからこそフィルムに焼き付けるかのように、ひとつひとつのシーンをしっかりと心に焼きつけたい。そんな当たり前すぎて気づきにくいことを綴った詞が印象的だ。ピアノやギターの優しいサウンドも心地よい。
06永遠 (とわ)にともに
柔らかいピアノの音色が心地良いイントロ。中盤から絡みはじめる重厚なストリングスは、まるで誓いを結び合った人たちの気持ちをそのまま音に詰め込んだように響く。コブクロが贈る、美しいウエディング・ソング。
07blue blue
笹路正徳によるプロデュースによる8thシングル。ハーモニカの音と二人のファルセットの美しさが秀逸な、淡い恋の思い出の歌。誰にでも経験のある、恋の思い出がよみがえるよう。
08宝島
少年時代の友情の一場面を切りとった、聴く人の共感をよぶ一曲。二人の力強いヴォーカルと、メッセージ性をもつ勢いのある楽曲が、ストリート・ライヴにいるような感覚にさせてくれる。
09雪の降らない街
寒い冬をさらに切なくさせる、二人の声が心に響く。コブクロ節全開の美しさが際だつメロディ・ラインを持つこの曲は、コブクロのスタンダードともいえる一曲。
10願いの詩
少年の頃を思い、現実に悩みながらも前に踏み出そうとする姿を、ジャケットや歌詞に出てくる向日葵が象徴している。全編を通じて鳴り響くストリングスが、切なさと勇気という両面を感じさせる5thシングル。
[Disc 2]
01風
終わった恋をまだ忘れられずにもがく切なさを歌う。恋して自分の強さや弱さを知り、またひとつ成長する。そんなことも思わせてくれる一曲だ。懐かしさが垣間見られるメロディ・ラインが、哀愁ある黒田のヴォーカルにハマっている。
02YOU
大切な人には飾り気のない素直な気持ちを伝えたいけれど、照れや不器用さが邪魔をしてうまく伝えられない……。そんな思いを歌に託した、愛情たっぷりのラブ・ソング。優しくも力強いふたりのハーモニーが見事だ。
03miss you
ずっと一緒にいると信じていたのに、突然訪れた別れ。受け入れなければいけないけれど、心の整理がつかない。そんな苦い恋を描いたナンバー。哀しみを包み込んでくれるような優しいストリングスが映える、美しいサウンドに仕上がっている。
04YELL〜エール〜
デビュー・シングルとなったこの曲は、タイトルどおり人々にエールを贈る応援歌。ストリート・ライヴでつけた実力を存分に発揮した力強さのある声に、パワーがもらえる一曲。
05Bell
サウンドはギターが軽やかに奏でられる爽やかなポップ・ナンバー。明日には新たな町での生活が始まる彼が、忘れられない彼女への想いを手紙へ託して、駅で待つ。彼の気持ちを知ってか知らずか、ベルが鳴り、最後の電車は発車してしまう。そんな切ない恋の曲だ。
06轍-Street stroke-
車の通った後にできる道筋=「轍」を、自分の選んだ未来への道にたとえたアップ・テンポなナンバー。カントリー調にアレンジされた楽曲が、明るい未来を予感させる仕上がりに。
07DOOR〜The knock again〜
アコースティック・ギターとドラムが奏でるメロディは、力強さと柔らかさを兼ね備えた深い味わい。けれど、曲の音域を幅広くしているのはビブラートの効いた澄みわたったハモリだろう。人生の壁にぶち当たっている人への応援ソング。
08太陽
幼い頃の甘酸っぱい初恋をモチーフに描いたキュートな楽曲。好きな女の子にはイジワルしたくなる…そんな純真な「好き」の気持ちを思い出させてくれる。マリンバ&ビブラフォン、オルガンの音色が温かさを演出している。
09桜
10未来への帰り道
ベスト盤『ALL SINGLES BEST』のために新たに収録したボーナス・トラック。アコースティックなサウンドは爽やかだが、前に進むために過去を振り返れば、心が温かくもなりなにかに気づく時もある、という詞がどこか切ないミディアム・ナンバー。ファンへの感謝の念が込められた曲だ。