ミニ・レビュー
新たなメンバーを迎え2007年で結成10周年となる彼らのアルバム。ヘヴィ・ロックから人力ドリルンベースまで聴かせる演奏力は、20代とは思えないスキルがほとばしっている。自己の内面と世界情勢を行き来する、メッセージ性の強いリリックも印象的だ。
ガイドコメント
結成10周年となる2007年2月発表のアルバム。hide with Spread Beaverの代表曲「ピンク スパイダー」のカヴァーやライヴで人気のナンバー「神」「HEIWA」などを収録。ストリート色の濃いラウド・ロックが堪能できる。
収録曲
01神
ヘヴィなギターのループをJESSEのシャウトが引き裂く。ハイハットの裏打ちが跳ねるようなリズムを刻み、ディレイのかかったヴォーカルは伸びやかに響く。天空まで突き抜けていきそうな、ストレートなロック・チューン。
02American Hero
ほぼ全編英詞で歌われる、疾走感の結晶のようなロック・ナンバー。スパイス的に用いられる日本語は「中指立てたアンチな奴らにも誇り持てた」など、彼ららしいパンキッシュな内容。爽快なサビのメロディがシンガロングを誘発する。
03Road 2 雷音
ヘヴィ・メタリックな縦ノリのリフが全編を支配する轟音チューン。イントロで鳴らされるファンキーなベース・ラインにはディストーションがかけられ、JESSEのいきり立つようなヴォーカルがリスナーの野性を沸き立たせる。
04ピンク スパイダー
hideが放った大ヒット曲を、彼とともに楽曲を制作したINAをプロデューサーに迎えてカヴァー。この曲の初期衝動とその陰に潜む絶望感にまでしっかりと肉迫した、ヴォーカルと演奏を堪能することができるナンバーだ。
05heiwa
センチメンタルなギターのフレーズで幕を開けるメッセージ・ソング。アルバム『オルターナ』中で最も韻を意識したJESSEのヴォーカルが、“ラップ”よりもむしろ“歌”として機能しているのが面白い。ヒップホップ的な硬質さでボトム・キープするドラミングも印象的だ。
06Feeling
日常的なジレンマを落とし込んだリリックが実にRIZEらしく、歪んだギターのダウン・ピッキングがハードコアな曲調を決定付けている。テンションを抑えたAメロとサビで、ラストの疾走感が際立つ仕上がりに。
07天と地の狭間に生きる少年
走る8ビートとパワフルなコード感で鳴らされるギターとベース。サビでは彼らの真骨頂といえる、パンク・ロック的な疾走感をまとったポップなメロディを堪能できる。病んだ現代社会に生きる、健康な不良少年たちの音楽。
08Ghost
ベンチャーズのヒット曲を思い起こすような、ウォーキング・テンポという懐かしめのビートを活かしたヒップホップ・ナンバー。弾むように語り綴っていくJESSEは気持ちよさそうで、うねりをともないながらキレのあるMCを炸裂させている。
0928
アルバム『オルターナ』中で最もメタリックなリフや不穏なギターのフレーズが、重く暗く鳴らされる。ディストーションが施されたJESSEのシャウトはより切実に響いて、暴力的とさえいえる怒りに満ちた音塊が、耳に叩き込まれてくる。
10124℃
隠しトラック的な要素を持った、アルバム『オルターナ』のラスト・チューン。メンバーの雑談なども聴き取れる導入部分から、突如鳴らされるギターとドラムの高速セッション。スタジオでの彼らの様子が伝わってくるという意味で、貴重かつユニークなトラックだ。