ガイドコメント
前作『キッドA』で全世界を揺るがせたばかりの英国レディオヘッドが早くもニュー・アルバムをリリース。ビートルズに匹敵するチャート記録を持つ彼らからは今後も目が離せないだろう。
収録曲
01PACKT LIKE SARDINES IN A CRUSHD TIN BOX
5th『アムニージアック』のオープニング・ナンバー。「つぶれた缶の箱の中にイワシのように詰め込まれている」という題名、トム・ヨーク自身とも思える楽曲中の主人公が「もう放っといてくれ」と開き直る部分など、鮮烈な印象を与えるダンス・ナンバー。
02PYRAMID SONG
ピアノのマイナー・コードが、エキゾティックな雰囲気を醸し出すナンバー。現実を真正面から誠実に描写し続けてきたレディオヘッドが、「恐れるものも、疑うものも何もなかった」という超越的な世界にたどり着いた傑作。
03PULK|PULL REVOLVING DOORS
乾いたビートの間を縫うように、エレクトリカルにデフォルメされたトム・ヨークの声が、世界中に存在する「ドア」について囁く。回転ドア、ひとりでに開くドア……。最後の「そこからは戻ってこられない」という言葉がさまざまな想像力をかき立てる。
04YOU AND WHOSE ARMY
冒頭のギター&ヴォーカル部分の、トム・ヨークの息遣いが聞こえてきそうなほど静粛なムードから、高揚感あふれる後半への展開へと流れ込むナンバー。「キッドA」以降のレディオヘッド・サウンドにしては実験的とも受け取ることができる。
05I MIGHT BE WRONG
エキゾティックかつ、ブルージィなギター・リフのリピートに乗せて信念を持つことの苦悩や葛藤が歌われている。後半のギター・ソロに乗るトム・ヨークの儚げで苦悩に満ちたハイトーン・ヴォイスが泣かせる。
06KNIVES OUT
日本の歌謡曲を連想させるイントロや、初期のギター・バンド然としたアレンジを披露する一方で、アルバム『キッドA』以降のヒーリング感も加味したバランス感が絶妙。レディオヘッドの進化を感じさせる名曲。
07MORNING BELL|AMNESIAC
4thアルバム『キッドA』に収録されている「モーニング・ベル」の別ヴァージョン。変拍子のリズムが全面にフィーチャーされていた『キッドA』ヴァージョンとは異なり、こちらはゆったりとしたリズムとアコギのストロークで聴かせるナンバーに仕上げている。
08DOLLARS AND CENTS
「社会の中で役立つ人間」を世界各国の通貨とリンクさせるユニークな詞が面白い。アイディアにあふれ、かつスキのないリズムの上をヴォーカルと弦楽器が浮遊する。トム・ヨークの感情がピークに達する中盤から後半にかけての展開は圧倒的。
09HUNTING BEARS
歪んだギターがゆったりと流れるインストゥルメンタル・ナンバー。収録アルバム『アムニージアック』全体がそうであるように、ヴォーカル不在のこの曲でも、人間の「温度」を感じることができる。
10LIKE SPINNING PLATES
サビのトム・ヨークのファルセット唱法が感動的。従来、聴く者に「答え」は聴く者に委ねる感のあったトム・ヨークが、現代社会の不条理を「皿回しのように感じられる」と大胆に言い放った名曲。
11LIFE IN A GLASSHOUSE
アルバム『アムニージアック』のクロージング・ナンバーは、ジャズの大御所ハンフリー・ルトルトンが参加。現実を冷静に突き詰める時を終え、未来も関係なく本当の理想を歌いたいという想いが、トム・ヨークをジャズとのコラボに向かわせたとも思える自由な作風。